センターパートの一つ結び。ただ結ぶだけで終わらない、お洒落な見せ方
夏の強い日差しや、じっとりとした湿気。髪が長くなるにつれて、その不快指数は上がり、衝動的に髪をまとめたくなる瞬間は誰にでもあるでしょう。そんな時、最も手軽で実用的な解決策が、全ての髪を後ろで一つに束ねる「一つ結び」です。
しかし、このシンプルなアレンジは、一歩間違えると、ただの「ひっつめ髪」になり、野暮ったく見えたり、顔の大きさを強調してしまったりする危険性も孕んでいます。
この記事では、センターパートをベースとした一つ結びを、単なる暑さ対策から、洗練された自己表現へと昇華させるための、具体的な方法と考え方について詳しく解説します。
なぜ「ただ結ぶだけ」では格好良く見えないのか
同じ一つ結びでも、お洒落に見える人と、そうでない人がいます。その差は、ほんの僅かなディテールの違いにあります。多くの人がやりがちな失敗例を見てみましょう。
・顔の輪郭が全開になってしまう
顔周りの髪をすべてきっちりと後ろに集めてしまうと、フェイスラインが完全に露わになり、普段よりも顔が大きく見えてしまうことがあります。
・トップが潰れて、頭の形が悪く見える
髪のボリュームを全く出さずに結ぶと、頭頂部がぺたんと平らになり、頭の形、特にハチ張りが強調されて、全体のバランスが悪く見えます。
・きつく結びすぎて、古風な印象になる
あまりに強く、タイトに結びすぎると、真面目すぎる、あるいは少し古風な「武士」のような印象を与えてしまい、ファッションから浮いてしまうことがあります。
・全体の質感がパサパサで、生活感が出てしまう
特にケアをしていない乾燥した髪をそのまま結ぶと、まとめた毛束がパサつき、清潔感がなく、疲れた印象を与えてしまいます。
これらを踏まえ、計算された「抜け感」と「立体感」をいかに演出するかが、お洒落な一つ結びの鍵となります。
こなれ感を演出する、一つ結びの基本手順
それでは、具体的な手順を見ていきましょう。難しい技術は必要ありません。いくつかのポイントを意識するだけで、仕上がりは劇的に変わります。
・手順1:スタイリング剤で、髪に潤いとまとまりを与える
アレンジを始める前に、まずヘアオイルやヘアバームなどを少量、髪全体に薄くなじませます。これにより、髪に適度なツヤとまとまりが生まれ、後れ毛などをコントロールしやすくなります。
・手順2:手ぐしで、髪をラフに後方へ集める
コーム(櫛)は使わず、手ぐしでざっくりと髪を集めるのがポイントです。生え際からきっちりとまとめるのではなく、少しラフさが残るくらいが、こなれた雰囲気を生み出します。
・手順3:結ぶ「高さ」を意識する
結ぶ位置は、与えたい印象によって変えます。襟足に近い「低めの位置」で結ぶと、落ち着いた、大人っぽい印象に。後頭部の中心あたりで結ぶと、スタンダードでバランスの良い印象になります。
・手順4:結び目をしっかり持ち、トップとサイドの髪を引き出す
きつく結んだ後、これが最も重要な工程です。結び目を片手でしっかりと押さえながら、もう片方の指の爪先で、トップやサイドの髪を数ミリずつ、何か所かつまみ出すようにして引き上げます。これにより、頭の形を補正する「高さ」と「丸み」が生まれます。
・手順5:顔周りの「おくれ毛」を調整する
最後に、こめかみやもみあげ部分の毛束を少しだけ引き出し、顔周りに自然な「おくれ毛」を作ります。この数本の毛束が、フェイスラインを自然にカバーし、スタイルに色気と抜け感をプラスしてくれます。
結んでもお洒落。その秘密はベースカットにあり
セルフアレンジのクオリティを最終的に決定づけるのは、実は、その土台となっている「ヘアカット」そのものです。どんなに上手にアレンジをしても、ベースのカットが整っていなければ、その魅力は半減してしまいます。
例えば、手順5で解説した「おくれ毛」。これは、ただ結び残した髪ではなく、プロの理容師が「おくれ毛として機能するように」と、あらかじめ長さや量を計算してカットした毛束なのです。だからこそ、顔に沿って自然に流れ、美しいニュアンスを生み出します。
また、結んだ毛束(ポニーテール部分)の質感も同様です。ただ長く伸ばしただけの重たい髪では、結んだ時に野暮ったい束になってしまいます。毛先まで丁寧に毛量調整や質感調整が施されている髪は、結んだ時でさえ、軽やかで動きのある、洗練された毛束となります。
つまり、プロのカットとは、髪を下ろしている時だけでなく、お客様が髪を結んだり、帽子を被ったり、様々なアレンジをした時のことまでを想定して、デザインされているのです。
まとめ
センターパートの一つ結びは、夏の暑さを乗り切るための実用的な手段であると同時に、あなたの新たな一面を見せるためのスタイリッシュな表現方法でもあります。きっちりと結びすぎず、トップに高さを出し、顔周りに少しの遊びを残す。この三つの原則を守るだけで、あなたの結び姿は格段に洗練されるでしょう。
そして、もしあなたがこれから髪を伸ばし、様々なアレンジを楽しみたいと考えているのであれば、ぜひ一度、サロンでご相談ください。アレンジすることがもっと楽しくなるような、機能的で美しいベースカットをご提案させていただきます。