ジェルとワックスの「使い分け」。シーンとスタイルで選ぶプロの選択基準
メンズのスタイリング剤として、ヘアジェルとヘアワックスの両方をお持ちという方も少なくないかと存じます。しかし、その日の気分や服装に合わせて、二つの特性を理解した上で意識的に「使い分け」ができている方は、意外と少ないのではないでしょうか。
スタイリングの上級者とは、多くの製品を知っている人ではなく、それぞれの道具が持つ役割を理解し、場面や目的に応じて最適なものを選択できる人のことです。ジェルとワックスの巧みな使い分けをマスターすることは、あなたのヘアスタイリングの可能性を大きく広げ、日々の印象をより豊かに演出する手助けとなります。
この記事では、プロフェッショナルがどのような思考でジェルとワックスを使い分けているのか、その選択基準について詳しく解説いたします。
「ジェル」を選ぶべき、明確なシーンと目的
まず、あなたがスタイリング剤の選択肢の中から「ジェル」を手に取るべきなのは、どのような時でしょうか。それは、ヘアスタイルに対して「清潔感」と「固定力」を最も強く求める場面です。
例えば、大切な商談やプレゼンテーションを控えたビジネスシーン、あるいは結婚式といったフォーマルな式典など、一切の乱れが許されず、誠実でクリーンな印象を相手に与えたい状況がそれに当たります。ウェットなツヤ感を持つジェルは、髪のパサつきを抑え、きっちりと整えられた印象を演出します。また、その強力なセット力は、湿気が多い日でも、朝に作ったスタイルを夜まで完璧に維持してくれるという絶大な安心感をもたらします。七三分けやオールバック、タイトなショートスタイルなど、シャープで端正な髪型を目指す日は、ジェルの出番です。
「ワックス」を選ぶべき、柔軟なシーンと目的
一方で、「ワックス」を選ぶべきなのは、ジェルとは対照的に、ヘアスタイルに「自然な動き」と「再現性」を求める場面です。
例えば、休日のリラックスした服装に合わせる、作り込みすぎていないカジュアルなスタイルや、友人との会食、デートといった場面がそれに当たります。ワックスは髪を固めすぎないため、まるでスタイリングしていないかのような、空気感のある無造作なスタイルを創り出すことを得意とします。また、一度セットした後でも手ぐしで手直しができる「再整髪能力」の高さも、ワックスの大きな魅力です。帽子やヘルメットをかぶる日や、一日の中で髪型を微調整したいと考える日には、ワックスが最適です。パーマ風の柔らかな動きや、自然な束感を楽しみたい日は、ワックスを選ぶと良いでしょう。
天候や髪の長さで考える使い分け
その日の天候も、どちらを選ぶかの重要な指針となります。雨の日や湿度の高い季節など、髪が広がったり、うねったりしやすい環境では、髪を強力にコーティングして湿気から守ってくれるジェルのほうが、スタイルを維持しやすいと言えます。逆に、乾燥した季節や風の強い日に、髪の自然な動きを楽しみたい場合は、ワックスのほうが適しています。
また、髪の長さも考慮に入れるべきです。ショートヘアの場合は、目指すスタイルに応じてどちらもが選択肢となりますが、ミディアムからロングの長さになってくると、髪の自然な動きや流れを活かすことが重要になるため、基本的にはワックスのほうが汎用性が高く、扱いやすいでしょう。
上級テクニックとしての「組み合わせ」
基本的な使い分けをマスターした先には、二つを「組み合わせる」という上級テクニックも存在します。例えば、ワックスで全体の無造作な動きを作った後、指先にほんの少しだけジェルを取り、前髪や襟足の先端だけをつまんで、部分的にシャープな質感を加えるといった使い方です。これにより、スタイルの表現力はさらに豊かになります。
ジェルとワックス、それぞれの個性を理解し、その日の目的や気分に応じて自在に使い分ける。それこそが、日々のスタイリングを一段上のレベルへと引き上げる秘訣です。ご自身の髪質やライフスタイルに合わせた、よりパーソナルな使い分けについてお知りになりたい場合は、ぜひお気軽にサロンのスタイリストにご相談ください。