丸顔と絶壁、二つの印象を整えるメンズ髪型の考え方
正面から見たときの輪郭が柔らかな印象を与える「丸顔」と、横から見たときに後頭部が平坦に見える「絶壁」。この、顔の正面と横顔、それぞれのシルエットに、同時にお悩みを抱えていらっしゃる方も少なくないかと存じます。丸顔の印象を和らげるためには縦のラインを強調し、絶壁を補正するためには後頭部に丸みを持たせる。この二つの目的を、一つの髪型の中でいかにして両立させるか、髪型選びが非常に難しいと感じられているお気持ちを、私たちは深く理解いたします。しかし、頭全体を立体的に捉える専門的な視点があれば、その二つのお悩みを美しく「調和」させることが可能です。
目指すのは、シャープな正面と、丸みのある横顔
二つの異なる骨格のお悩みを同時に解消するための基本的な設計は、それぞれの悩みに的確な解決策を施し、それらを滑らかに繋ぎ合わせることにあります。まず、丸顔の印象に対しては、全体のシルエットが縦に長く見えるように、頭頂部に「高さ」を創り出します。同時に、横への広がりを抑えるために、側頭部はすっきりと「引き締め」ます。そして、絶壁の印象に対しては、後頭部に自然な「丸み」を与え、奥行きのある美しい横顔を創り出します。この三つの要素を、一つの髪型の中で矛盾なく両立させることが、お悩みを根本から解消する鍵となります。
二つの個性を調和させる、三次元的なカット設計
理想的なシルエットを創り出すためには、三次元的な視点に基づいた、極めて緻密なカット設計が求められます。まず、丸顔の印象を和らげるために、頭頂部の髪に、自然な高さが出るように、計算された段差(レイヤー)を入れます。そして、側頭部(ハチ周り)のボリュームは、膨らんで見えないように的確に抑制し、シャープな印象を創ります。ツー ブロックなどのスタイルも、この部分をすっきりと見せる上で非常に有効です。その上で、平坦に見えがちな後頭部は、襟足の部分をタイトに引き締めることで、その上にある部分に視覚的な奥行きと丸みを持たせます。この、高さのある頭頂部から、丸みを帯びた後頭部、そして引き締まった襟足へと至る滑らかな繋がりが、二つのお悩みを同時に解消し、洗練された印象を生み出すのです。
お客様の骨格と、誠実に向き合うということ
丸顔の度合いや、後頭部の形は、一人ひとり全く異なります。そのため、画一的な髪型をご提案するのではなく、私たち理容師が、お客様の骨格をあらゆる角度から正確に診断し、その方のためだけに、ミリ単位でつり合いを調整した「オーダーメイド」の髪型を創り上げることが、何よりも大切になります。お客様が持つ骨格は、私たちにとっては、最高の髪型を設計するための、かけがえのない大切な個性なのです。
最高の髪型は、お客様との対話から生まれます
私たちは、施術に入る前に、お客様のお悩みを深くお伺いし、お客様の骨格と髪質をプロの目で正確に診断する時間を、最も重要であると考えております。そして、どのようなカット設計によって、お悩みがどのように解消されるのかを、鏡の前で丁寧にご説明いたします。お客様が心からご納得し、信頼してくださること。その誠実な対話のプロセスこそが、最高の髪型を創り出すための、最も重要な土台となるのです。
最後に
これまで、ご自身の骨格を、変えることのできない弱点として捉えてこられたかもしれません。しかし、適切な知識と技術を持つ専門家と出会うことで、その二つの個性は、あなただけの特別な魅力を創り出すための、素晴らしい要素となり得ます。ご自身の正面の姿にも、そして横顔にも、心から自信が持てるようになる。その感動的な体験の第一歩を、ぜひ私たちにお手伝いさせていただけましたら幸いです。