ワックスの正しい取り方|スタイリングの成否を分ける最初のステップ
ヘアスタイリングを行う際、皆様はヘアワックスをどのように容器から手に取っていらっしゃいますでしょうか。「指で適当にすくっている」という方が、ほとんどかもしれません。しかし、実はこの、スタイリングの起点となるワックスの「取り方」こそが、その日の仕上がりを大きく左右する、極めて重要なプロセスなのです。この記事では、プロが実践する、ワックスの正しい取り方と、そこから繋がる一連のスタイリングの基本について、詳しく解説いたします。
なぜワックスの「取り方」が重要なのか
ワックスの取り方が重要な理由は、それが直接「つける量」と「馴染ませやすさ」に関係してくるからです。一度に多くの量を取りすぎてしまえば、つけすぎによる失敗の原因となりますし、取り方が非衛生的であれば、容器の中で雑菌が繁殖し、製品の劣化を早めてしまう可能性もあります。正しい取り方をマスターすることは、スタイリングの質を高め、製品を良い状態で長く使うための第一歩なのです。
プロが実践する、衛生的で正確なワックスの取り方
私達プロのスタイリストが、特に硬いテクスチャーのワックスを容器から取る際に実践している、衛生的で正確な方法をご紹介します。
「指の腹」ではなく「爪の裏側」を使う
指の腹ですくい取ると、爪の間にワックスが入ってしまったり、一度に多くの量を取りすぎてしまったりしがちです。そこでおすすめしたいのが、人差し指などの「爪の裏側」を使って、表面を削り取るようにワックスをすくい取る方法です。この方法であれば、爪の間にワックスが入り込むことなく、非常に少量を、的確な量だけを手に取ることができます。
基本の量は、常に「小豆一粒大」から
そして、その際に手に取る量の基本は、どんな髪の長さであっても、常に「小豆一粒大」です。この量を基準とし、足りなければ、もう一度同じようにごく少量をすくい取る、というプロセスを徹底してください。
取った後が本番、髪につけるまでの「育て方」
ワックスを正しく手に取ったら、次に行うのが、髪につける前の最も重要な工程です。私達はこれを、ワックスを最高の状態に「育てる」と表現することもあります。
「透明になるまで」完璧に伸ばす
手に取ったワックスを、そのまま髪につけてはいけません。手のひら、そして実際に髪に触れる指の間まで、完全に透明になるまで、両手を擦り合わせて完璧に伸ばします。この「乳化」という工程を、摩擦熱でワックスを温めながら丁寧に行うことで、ワックスは非常に伸びが良く、髪に均一に馴染む最高のコンディションになります。
髪への正しい「乗せ方」と「馴染ませ方」
最高の状態に育ったワックスを、いよいよ髪に馴染ませていきます。これも、表面からただつけるのではありません。髪の内側に下から手を入れ、後頭部やサイドといった部分から、根元近くにワックスを馴染ませていきます。髪全体に空気を含ませるように、一度ワシャワシャと大胆に散らしながらワックスを均一に行き渡らせ、その後、全体のシルエットと毛束感を整えていくのが、プロの基本的な付け方です。
最高の「取り方」は、最高の「道具」から
これまでにご紹介した正しい取り方を実践する上で、使用するワックス自体の品質も大きく影響してきます。
私達サロンで取り扱うプロフェッショナル仕様のスタイリング剤、いわゆる「サロン専売品」は、テクスチャーが硬いものであっても、体温でスッと溶けて驚くほど伸びが良いように、処方が徹底的に研究されています。そのため、初心者の方でも、プロが実践するような理想的な取り方から付け方までを、非常に簡単に再現することが可能です。
お客様の髪質とスタイルに最適な一品と、その場で実践しながらお伝えするプロの取り方。その両方をご提供させていただくことこそ、私達の役割です。ぜひ一度、その違いをご体感ください。