ワックス前の「濡らす」一手間が、仕上がりを左右する理由
ご自宅でのヘアスタイリング、特に忙しい朝など、「乾いた髪の上から、直接ワックスをつけても良いのだろうか?」あるいは「スタイリングの前に、髪は濡らすべきなのだろうか?」と、その手順について疑問に思われたことはございませんでしょうか。実は、スタイリングにおける「髪を濡らす」という行為は、そのタイミングと目的を正しく理解することで、仕上がりのクオリティを劇的に向上させる、極めて重要なプロセスなのです。この記事では、ワックスを使ったスタイリングにおける、髪を濡らすことの本当の意味と、その正しい手順について詳しく解説いたします。
スタイリングの「前」に髪を濡らす、その絶対的な理由
まず、結論から申し上げますと、ヘアワックスで理想のスタイリングを創り上げるためには、ワックスをつける前の段階で、一度髪を根元からしっかりと濡らすことが、プロの世界では絶対的な基本ルールとされています。
多くの方が、この工程を「寝癖を直すため」だけだと考えていますが、その本当の目的は、それだけではありません。髪の毛は、内部の水素結合によって形が記憶されています。一度髪を根元から完全に濡らすことで、この水素結合がリセットされ、寝癖や生え癖といった、あらゆる不要なクセが解消された「ゼロの状態」になります。このまっさらなキャンバスの状態から始めることで、髪は驚くほど素直に言うことを聞き、スタイリストが意図した通りの形に、自由自在に動かすことが可能になるのです。
ワックスをつける「時」に髪を濡らしてはいけない理由
スタイリングの前に髪を濡らすことが重要である一方、注意しなければならないのは、ワックスをつける瞬間には、髪が濡れていてはいけないということです。
「濡らす」という工程は、あくまでスタイリングの準備段階です。髪を濡らした後には、必ずドライヤーを使って、髪を完全に乾かしながら、ヘアスタイルの土台を創り上げていく必要があります。もし、髪に水分が残ったままの状態でワックスをつけてしまうと、ワックスの油分と水分が混ざり合い、セット力が大幅に低下してしまいます。また、均一に馴染まず、ムラやベタつきの原因ともなり、スタイリングを失敗に導く最大の原因となります。
スタイリングの「後」に髪を濡らす、手直しのテクニック
一度ワックスでセットしたスタイルが、日中に少し崩れてしまった際に、髪を軽く濡らして手直しをする、というテクニックも存在します。少量の水を手に取り、崩れた部分に馴染ませることで、髪についたワックスが再活性化し、ある程度の手直しが可能になります。しかし、これはあくまで応急処置的なテクニックです。この方法で完璧に元の状態に戻すことは難しく、場合によってはスタイルの崩れを助長してしまう可能性もあるため、基本は、朝の完璧なスタイリングを一日中キープできるような、質の高いスタイリングを心掛けることが重要です。
最高のスタイリングは、最高の「準備」と「道具」から
これまでにご紹介した通り、最高のヘアスタイルを創り上げるためには、ワックスをつける前の「髪を濡らし、ドライヤーで完璧な土台を創る」という準備が不可欠です。そして、その完璧な土台の上に、最高のパフォーマンスを発揮するスタイリング剤を使うこと。それが理想への最短ルートです。
私達サロンで取り扱うプロフェッショナル仕様のスタイリング剤、いわゆる「サロン専売品」は、ドライヤーで創った繊細なシルエットや空気感を損なうことなく、狙った質感だけを的確に表現できるように、処方が徹底的に研究されています。
お客様の髪質とスタイルに最適な一品と、その場で実践しながらお伝えするプロのスタイリング手順。その両方をご提供させていただくことこそ、私達の役割です。ぜひ一度、その違いをご体感ください。