ワックスが硬くて「伸びない」時の正しい使い方と選び方
新しく購入したヘアワックスを使おうとした際に、そのテクスチャーが想像以上に硬く、「手のひらで全く伸びない」と、スタイリングに苦労された経験はございませんでしょうか。特に、セット力の高いマットワックスやクレイワックスに、こうした硬い性質のものが多く見られます。しかし、この「伸びない」という特性は、必ずしも製品の欠点ではなく、むしろ高いスタイリング性能の証でもあるのです。この記事では、硬くて伸びないワックスが存在する理由と、その性能を最大限に引き出すための、プロが実践する正しい使い方について詳しく解説いたします。
なぜ「伸びない」ワックスが存在するのか
まず、なぜワックスの中には、意図的に硬く、伸びにくいように作られている製品があるのでしょうか。その理由は、ヘアスタイルを一日中強力にキープするための「セット力」と、テカりを抑えた「マットな質感」を追求した結果にあります。
一般的に、ワックスのセット力は、主成分であるロウ成分などの固形成分によって生まれます。また、製品の伸びの良さやツヤ感は、オイルなどの油分によってもたらされます。つまり、セット力を極限まで高め、かつ、テカりの原因となる油分を極力少なくしようとすると、製品のテクスチャーは必然的に硬く、そして伸びにくいものになるのです。この「伸びない」という特性は、高いホールド力と、ドライで軽い質感を実現するための、緻密な計算の上に成り立っています。
プロが実践する、硬くて「伸びない」ワックスを操る技術
それでは、この高性能な硬いワックスを、どのように扱えば良いのでしょうか。その答えは、ワックスを髪につける前の、手のひらで伸ばす工程、すなわち「乳化」のプロセスに隠されています。
鍵を握るのは「摩擦熱」
硬いロウ成分を、髪に馴染みやすい滑らかなテクスチャーに変化させるために必要なもの。それは「熱」です。そして、その熱を生み出すのが、両方の手のひらを擦り合わせる際に生まれる「摩擦熱」と、ご自身の「体温」なのです。
完璧な「乳化」のための正しい伸ばし方
まず、適量(小豆一粒大が目安)のワックスを、爪の裏側などを使って、清潔に手に取ります。それを手のひらの中心に乗せ、両方の手のひらを使い、いつもよりも少し力を込めて、力強く、そしてスピーディーに擦り合わせてください。最初は抵抗を感じるかもしれませんが、数秒間擦り合わせ続けることで、摩擦熱によってワックスが徐々に溶け、その抵抗がなくなっていくのを感じられるはずです。
そして、手のひらがある程度温まったら、今度は指を組み、指と指の間、そして一本一本の指の腹や側面まで、ワックスを完璧に行き渡らせます。ワックスの白い塊が完全に見えなくなり、手のひら全体が、まるで透明なオイルを塗ったかのように、均一なツヤを帯びている状態。これが、硬いワックスが、その性能を最大限に発揮できる状態になったサインです。
最高の「伸び」と「性能」を両立する、サロンの品質
これまで、硬いワックスの扱い方について解説してまいりましたが、プロが使用する製品の中には、その常識を覆すものも存在します。
私達サロンで取り扱うプロフェッショナル仕様のスタイリング剤、いわゆる「サロン専売品」は、基材となる成分の質が非常に高く、処方が徹底的に研究されています。そのため、非常に硬いテクスチャーで、極めて高いセット力を持ちながらも、体温でスッと溶けて、驚くほど滑らかに伸びる、という理想的な使用感を実現している製品が数多くございます。
スタイリングの性能を一切妥協することなく、日々の使いやすさまでも追求する。それこそが、プロの道具です。お客様の髪質とスタイルに最適な一品と、それを最大限に活かすためのプロの技術。その両方をご提供させていただくことこそ、私達の役割です。ぜひ一度、その違いをご体感ください。