ワックスでセットした髪と帽子|崩れないための対策と直し方
ファッションアイテムとして、あるいは日差しや寒さを防ぐための実用的なアイテムとして、日常的に「帽子」を愛用されている方も多いかと存じます。しかし、ヘアワックスでしっかりとスタイリングをしている日に、帽子をかぶることを、ためらってしまった経験はございませんでしょうか。「せっかくセットした髪が、帽子で潰れてしまう」。この、お洒落な男性が抱える共通のジレンマを、プロの技術で解決する方法について詳しく解説いたします。
なぜ、帽子をかぶると髪型は崩れてしまうのか
帽子が髪型を崩す主な原因は、「圧力」と「湿気」という二つの要素にあります。まず、帽子そのものが、髪を物理的に「圧力」で押さえつけることで、せっかく立ち上げた根元のボリュームが潰れてしまいます。また、帽子をかぶっている間、頭部は熱がこもりやすく、汗によって内部の湿度が上昇します。この「湿気」が、ワックスのセット力を著しく低下させ、スタイルを崩壊させる大きな原因となるのです。
帽子を「かぶる前」にできる、崩れを最小限にする予防策
まず、帽子をかぶる前の、朝のスタイリングの段階で、できる限りの対策を講じることが重要です。
1.ドライヤーで「強固な土台」を創る
スタイルの持続性は、ドライヤーによるベース作りで決まります。髪の根元をしっかりと立ち上げ、毛流れを整えるなど、ドライヤーで髪型の土台を完璧に創り上げておくことで、圧力に対する耐性が格段に向上します。また、髪は完全に乾かしきってください。少しでも水分が残っていると、帽子の中の湿気で、さらに崩れやすくなります。
2.「再整髪しやすい」ワックスを選ぶ
帽子をかぶる場合、ガチガチに固まるタイプのワックスやジェルは、一度崩れると修正が難しいため、実はあまり適していません。おすすめは、セット力は高いながらも、手ぐしで手直しがしやすい、柔軟性のあるワックスです。ファイバータイプや、ドライな質感のクレイワックスなどが、手直しをしやすいため、帽子をよくかぶる方には適しています。
帽子を「脱いだ後」の、完璧な手直し術
どんなに予防をしても、ある程度の崩れは避けられません。しかし、正しい手順を踏めば、まるでセットしたてのような状態にまで、スタイルを復活させることが可能です。
ステップ1:まず、髪を「ほぐして」空気を入れる
帽子を脱いだら、まず、潰れてしまった髪の根元に指を入れ、優しく頭皮を擦るようにして、髪全体をふんわりと「ほぐし」ます。これにより、髪の間に空気が入り、スタイルの土台がリセットされ、手直しがしやすい状態になります。
ステップ2:「水」を使って、ワックスを再活性化させる
次に、ワックスを新たに手に取る前に、少量の「水」を手のひらに取ります。そして、その湿った手のひらで、潰れた部分の髪を優しく揉み込むようにして、髪に水分を補給します。髪に付着していたワックスは、この水分によって、つけたてのような柔らかく、再び動かせる状態へと「再活性化」します。
ステップ3:手ぐしで形を整え、自然乾燥させる
ワックスが再活性化し、髪が再び動かせるようになったら、指先で全体のシルエットや毛束感を整え直します。その後は、そのまま自然乾燥させれば、スタイルはかなりのレベルまで復活します。この時、どうしても必要な場合のみ、米粒一粒大ほどのごく少量のワックスを指先に伸ばし、毛束をつまんで仕上げると、さらに完成度が高まります。
最高のスタイルは、最高の「道具」と「設計」から
これまで、帽子と共存するためのスタイリング術をご紹介してまいりました。そして、この「手直しのしやすさ(再整髪性)」こそが、実は、スタイリング剤の品質を測る上で、非常に重要な性能の一つです。
私達サロンで取り扱うプロフェッショナル仕様のスタイリング剤、いわゆる「サロン専売品」は、高いキープ力を持ちながらも、柔軟性に優れ、後からでも手直しがしやすいように、処方が緻密に計算されています。
また、そもそも帽子をかぶっても崩れにくく、かつ手直しがしやすいように緻密に計算されたベースカットを施すことも、私達プロの重要な役割です。お客様のライフスタイルに合わせた、最高のヘアデザインと、最高の道具を、私達が責任を持ってお選びいたします。ぜひ一度、お気軽にご相談ください。