メンズショートスタイルのヘアセット術|初心者でも簡単!髪型の基本テクニック
理容室で髪を切った日、鏡に映る完璧にセットされた自分を見て、いつもより少し自信が湧いてくる。そんな高揚感を、多くの男性が経験したことがあるでしょう。しかし、その感動も束の間、翌朝いざ自分でヘアセットをしようとすると、「なぜかサロンのようには格好良く決まらない…」と、鏡の前でため息をついてしまう。これは、決してあなただけが抱える悩みではありません。実は、メンズのヘアセットは、いくつかの基本的なポイントを押さえるだけで、誰でも驚くほど上手になるのです。この記事では、ヘアセットが苦手な初心者の方でも明日からすぐに実践できる、ショートスタイルの基本的なセット方法を、最も重要な土台作りから丁寧に解説していきます。
ヘアセットの8割は「ドライヤー」で決まる!シルエットの作り方
多くの方が、ワックスなどのスタイリング剤をつける作業こそがヘアセットだと考えがちですが、実は仕上がりのクオリティの8割は、その前の「ドライヤーでの乾かし方」で決まります。この土台作りをマスターすることが、上達への一番の近道です。
1. 根元をしっかり起こして乾かす
全ての基本は、髪の根元を立ち上げることです。
- ボリュームの源泉
お風呂上がりは、タオルで髪をゴシゴシと強くこするのではなく、頭皮を優しくマッサージするように叩きながら、水分をしっかりと取り除きましょう。その後、ドライヤーを使い、髪の根元に指を入れて頭皮をこするようにしながら、全体をラフに乾かしていきます。こうすることで、髪の根元がふんわりと立ち上がり、ボリュームを出しやすい健康的な状態になります。
2. トップは「持ち上げ」、サイドは「抑える」
理想の「ひし形シルエット」を、ドライヤーで作ってしまいましょう。
- 理想のひし形シルエット
ボリュームが欲しいトップ(頭頂部)は、髪を軽く握るように持ち上げながら、その根元に温風を当てます。逆に、膨らみやすいサイド(ハチ周り)は、ドライヤーの風を上から下に当てながら、手のひらで軽く押さえつけるようにして乾かします。この一手間で、ヘアスタイルにメリハリが生まれ、頭の形が非常にきれいに見えます。
3. 毛流れの「クセづけ」
この下準備が、後のスタイリングを驚くほど楽にします。
- スタイリングの下準備
前髪を上げたいなら下から上へ、七三分けのように横に流したいなら分け目から流したい方向へ、ドライヤーの風を当てながら手ぐしで優しく流れを作っておきます。この段階で大まかな毛流れを髪に記憶させておくことで、スタイリング剤がスムーズに馴染み、理想の形を作りやすくなります。
スタイリング剤の基本|ワックスの正しい使い方ステップ
土台ができたら、いよいよスタイling剤の出番です。ここでは、最も基本的な「ワックス」を例に、初心者でも失敗しない使い方を4つのステップでご紹介します。
ステップ1:適量を取る
つけすぎは、ベタつきや重さの原因となり、失敗のもとです。
- 目安は小豆一粒大
まずは「小豆一粒大」ほどのごく少量を取ることから始めましょう。ワックスは、足りなければ後から足すことができますが、一度つけすぎてしまうと、洗い流す以外にリカバリーする方法はありません。
ステップ2:手のひらで完璧に伸ばす
ワックスがダマにならないための、最も重要な工程です。
- 透明になるまで
取ったワックスを、手のひら、そして指と指の間にまで、完全に透明になってツヤが出るまで、しっかりと時間をかけて伸ばし広げます。この作業を怠ると、ワックスが白い塊のまま髪についてしまい、清潔感を損なう原因になります。
ステップ3:後ろから全体に揉み込む
いきなり前髪からつけるのはNGです。
- 表面ではなく内側から
まずは、万が一つけすぎても目立ちにくい、襟足や後頭部といった後ろの部分から付け始めましょう。髪の表面を撫でるのではなく、髪の内側に手を入れて、根元から毛先に向かって空気を含ませるように、髪全体にワックスを揉み込んでいきます。
ステップ4:指先でシルエットを整える
最後に、全体の形を微調整してデザインします。
- 最後の仕上げ
ワックスが髪全体に均一に馴染んだら、最後に指先に残ったワックスを使い、トップや前髪の毛束を少しずつつまんで、動きや束感を出していきます。全体のシルエットを鏡で確認しながら、ボリュームを出す部分と抑える部分を最終調整すれば完成です。
なぜプロが切った髪は「ヘアセット」が楽なのか?
ここまでセットの方法を解説してきましたが、そもそも「セットが楽な髪型」と「そうでない髪型」が存在することにお気づきでしょうか。その決定的な違いは、土台となる「カット」そのものに隠されています。
「再現性」を計算したカット
プロの理容師は、あなたがサロンから帰った後のことまでを考えて髪を切っています。
- プロの設計
経験豊富な理容師は、お客様一人ひとりの髪質や生えグセ、頭の形を全て見極めた上で、ハサミを入れています。そのため、ドライヤーで乾かすだけで、髪が自然とあるべき位置に収まり、美しいシルエットが生まれるように、緻密に計算されてカットされているのです。これが、プロに切ってもらった髪が「セットが楽」だと感じる最大の理由です。
「動き」を仕込むカット技術
あなたがワックスで簡単に作っている束感や動きは、実はカットの時点で仕込まれています。
- 毛量調整の秘密
ただ短くするだけでなく、髪の表面からは見えない内側の毛量を、専門的な「すき」の技術で繊細に調整しています。これにより、ワックスをつけた時に、誰でも簡単にきれいな束感が生まれ、立体的な動きが出るように、あらかじめデザインされているのです。
セットしやすい髪型をオーダーするコツ
サロンでは、あなたのライフスタイルを正直に伝えることが大切です。
- プロへの伝え方
「普段、あまりセットに時間をかけられないので、乾かすだけでまとまるようにしてほしいです」
「休日に、ワックスで簡単に動きが出せるように、少し軽くしてください」
このように、ご自身のライフスタイルや、普段のセットにかける時間、スキルなどを正直に伝えることで、プロはあなたにとって最も扱いやすい、最高の髪型を提案してくれます。
まとめ
メンズショートスタイルのヘアセットは、スタイリング剤をつける前の「ドライヤーでの土台作り」が成功の8割を占めています。そして、正しいワックスの使い方をマスターすれば、初心者の方でも、サロン帰りのようなおしゃれで洗練された髪型を自分で再現することができます。しかし、忘れてはならないのは、その「セットのしやすさ」そのものが、あなたの髪質や骨格を深く理解したプロの理容師による、計算され尽くした「カット技術」によって支えられているという事実です。毎朝のヘアセットを、面倒な作業から楽しい自己表現の時間に変えるために。ぜひ一度、セットのことまで考え抜かれたプロのカットを体験してみてはいかがでしょうか。