散髪屋の技術はドライヤーにあり。髪型が決まる、プロの乾かし方講座
散髪屋(理容室)で髪を切り終え、シャンプーを済ませた後、ドライヤーで仕上げてもらう時間。鏡の中で、自分のヘアスタイルがみるみるうちに完璧に形作られていく様子に、心地よさを感じたご経験はございませんか。しかし、翌朝ご自身で髪を乾かすと、なぜかサロンでの仕上がりとは程遠いものになってしまう。多くの男性が抱えるこのお悩みの裏には、私たちが何気なく行っているように見える「ドライヤーの使い方」に、決定的な秘密が隠されているのです。
なぜ、ドライヤーがそれほど重要なのか
ヘアスタイルの完成度を左右する上で、実はカットと同じくらい、あるいはそれ以上に重要とも言えるのが、ドライヤーで髪を乾かす工程です。髪の毛は、濡れている状態から乾くその瞬間に、形が固定されるという性質を持っています。つまり、ドライヤーをかけている時間こそが、その日のヘアスタイルの土台を創り上げる、最も重要なスタイリングの時間なのです。多くの方が、ワックスなどのスタイリング剤だけで形を創ろうと試みますが、この土台作りが疎かになっていると、理想のシルエットは決して生まれず、時間と共にスタイルも崩れやすくなってしまいます。
これだけで変わる。メンズヘア・ドライヤーの基本テクニック
プロの技術と聞くと難しく感じられるかもしれませんが、ご家庭でも実践できる基本的なポイントを押さえるだけで、あなたのスタイリングは劇的に変わります。まず、シャンプー後はゴシゴシと擦らず、タオルで頭皮をマッサージするように、そして髪を優しく叩き込むようにして、余分な水分をしっかりと取り除きましょう。次にドライヤーの風を当てる際は、毛先ではなく「根元」を乾かすことを意識してください。髪が生えている方向とは逆から風を送ることで、髪の根元が自然に立ち上がり、ふんわりとしたボリュームが生まれます。そして、温風である程度全体の形を創り終えたら、最後に「冷風」を全体に当てるのがプロの裏技です。これにより、創ったスタイルが瞬時に固定され、一日中崩れにくい髪型が完成します。
【お悩み別】ドライヤー応用テクニック
基本のテクニックをマスターしたら、次はお悩み別の応用編です。トップにボリュームを出したい場合は、ボリュームが欲しい部分の髪の毛を指で軽く持ち上げ、その根元に下からドライヤーの温風を送り込みます。逆に、膨らみやすいサイドを抑えたい場合は、ドライヤーを上から構え、髪の流れに沿って風を当てながら、もう片方の手のひらで髪を優しく押さえるようにして乾かすと、タイトなシルエットを創ることができます。
プロが使うドライヤーは、何が違うのか
私たちが使用する業務用のドライヤーは、ご家庭用のものに比べて、非常に「風量」が強いのが特徴です。強い風で一気に髪を乾かすことで、髪が熱にさらされる時間を最小限に抑え、オーバードライによるダメージを防ぎます。しかし、最も大切なのはドライヤーの性能そのものよりも、ここまでご紹介してきたような「使い方」の知識と技術です。ご家庭にあるドライヤーでも、ポイントを意識していただくだけで、仕上がりは驚くほど変わるはずです。
最高のヘアスタイルは、私たち理容師によるカット技術と、お客様ご自身のスタイリング技術、その両輪が噛み合った時に初めて完成します。誠実な理容師は、サロンでの仕上がりだけでなく、お客様がご自宅でそのスタイルをご自身の手で再現できるまで、ドライヤーの使い方一つから丁寧にレクチャーすることを、何よりも大切にしています。スタイリングのことで少しでもお悩みでしたら、どうぞお気軽に私たちプロにご相談ください。