そのタオルドライ、髪を傷めていませんか?理容師が教える本当に正しい髪の乾かし方
洗髪後に行う「タオルドライ」。皆様はこの工程を、ドライヤーの前の単なる準備運動のように、手早く済ませてしまってはいないでしょうか。しかし、私たちプロフェッショナルの間では、このタオルドライこそが、お客様の髪の美しさと健康を長期的に左右する、極めて重要なケア工程であると認識されています。
なぜなら、間違った方法で行えば髪に深刻なダメージを与えてしまう一方、正しい方法で行えばその後のドライヤーの効果を最大限に高め、熱や摩擦から髪を守る強力な「盾」となるからです。お客様の髪を誰よりも大切に考える理容師の視点から、タオルドライの本当の意味と、今日からすぐに実践できる正しい手順を詳しく解説いたします。
タオルドライが「守りのケア」である理由
まずご理解いただきたいのは、濡れている時の髪がいかにデリケートであるか、ということです。髪の表面はキューティクルという、うろこ状の組織で覆われていますが、水分を含むとこのキューティクルは開き、外部からの刺激に対して非常に弱い「無防備な状態」になります。正しいタオルドライの最も重要な目的は、このデリケートな状態の髪をいたわりながら、後の工程であるドライヤーの熱風を当てる時間を可能な限り短縮することにあります。まさに、髪にとって最も重要な「守りのケア」なのです。
やってはいけないタオルドライの代表例
良かれと思って、あるいは無意識のうちに行っているタオルドライが、実は髪を傷める原因になっているかもしれません。特に注意していただきたいのは、以下のような行為です。
ゴシゴシと力強く擦る
濡れた髪をタオルで力任せに擦る行為は、開いたキューティクルを無理やり剥がし、ささくれ立たせることに他なりません。これは、髪のツヤを失わせ、パサつきや切れ毛を引き起こす最大の原因となりますので、絶対に避けてください。
頭皮を強く擦る
髪だけでなく、水分を含んだ頭皮もまたデリケートな状態にあります。タオルで頭皮を強く擦ると、微細な傷がつき、そこから炎症やかゆみを引き起こす可能性があります。
これが基本!正しいタオルドライの3ステップ
では、具体的にどのように行うのが正しいのでしょうか。決して難しいことではございません。以下の3つのステップを、ぜひ今日から実践してみてください。
ステップ1:頭皮を優しく押さえる(根本の水分ケア)
まず、吸水性の良い清潔なタオルを頭全体にふわりとかぶせます。そして、タオルの上から指の腹を使い、頭皮全体を優しくリズミカルに押さえるようにして、マッサージしながら水分を吸収させていきます。髪の水分は根元に溜まりやすいため、最初にこの部分の水分をしっかりと取ることが重要です。
ステップ2:毛束を挟んで叩く(中間〜毛先の水分ケア)
次に、髪の中間から毛先にかけての水分を取っていきます。毛束をタオルで優しく挟み込み、「パン、パン」と軽く叩くようにして、髪の水分をタオルに移していくイメージです。ここでも重要なのは、決して「擦らない」ということです。「拭く」のではなく、「水分を吸わせる」という意識をお持ちください。
ステップ3:生え際や襟足も丁寧に
見落としがちな顔周りの生え際や、水分が残りやすい襟足部分も、タオルの角などを使って丁寧に押さえるように拭き取りましょう。細部までケアすることが、ドライヤー時間の短縮につながります。
なぜサロンのタオルドライは丁寧なのか
私たち理容師がお客様の髪をタオルドライする際、なぜあれほど優しく、時間をかけて行うのか。それは、お客様の髪へのダメージを最小限に抑えることはもちろんですが、その後のカットやブローといった施術の仕上がりを大きく左右する、非常に重要な下準備だからです。髪の水分量が均一に整っていることで、カットの正確性が増し、スタイリングも思い通りに決まりやすくなるのです。
毎日のタオルドライが美髪の分かれ道です
タオルドライという、わずか数分の習慣が、長期的に見てご自身の髪の状態を左右する、まさに「美髪の分かれ道」となります。乱暴なタオルドライを続けていては、どんなに高価なシャンプーやトリートメントを使っても、その効果は半減してしまいます。
私たちは、サロンでの施術はもちろんのこと、お客様がご自宅に帰られてからの日々のケアまで、誠実にサポートさせていただきたいと考えております。ヘアケアに関するどんな些細な疑問でも、どうぞお気軽にご相談ください。