【理容師が警告】洗髪で爪を立てる、その習慣。頭皮を傷つける危険な行為です
髪を洗う際、頭皮のかゆみが気になったり、あるいは、より一層のすっきり感を求めたりするあまり、無意識のうちに「爪を立てて」ゴシゴシと力強く洗ってしまってはいませんか。その瞬間は、頭皮を掻きむしるような強い刺激が爽快に感じられるかもしれません。しかし、その行為は、ご自身の未来の髪と頭皮の健康を、自らの手で著しく損なう、極めて危険な習慣であることをご存知でしょうか。
今回は、お客様の頭皮の健康を日々見守る私たち専門家の立場から、なぜ洗髪時に爪を立てることが絶対にあってはならないのか、その明確な理由と、頭皮に及ぼす深刻な影響について、詳しくご説明させていただきます。
爪は頭皮にとって「刃物」と同じです
まず、ご理解いただきたいのは、皆様が想像されている以上に、頭皮はデリケートな皮膚組織であるという事実です。特にお湯で濡れてふやけた状態の頭皮は、普段よりもさらに傷つきやすくなっています。その無防備な頭皮に、硬いケラチン質でできている爪を立てて擦りつけるという行為は、例えるならば「無数の細かい刃物で皮膚の表面を絶えず引っ掻き続けている」ことと何ら変わりありません。たとえ出血するようなことがなくても、その行為は、皆様の目には見えないミクロレベルの無数の傷を、確実に頭皮へと刻みつけているのです。
頭皮の傷が引き起こす様々なトラブル
爪によってつけられた微細な傷は、様々な頭皮トラブルを連鎖的に引き起こす入り口となります。まず、傷ついた部分からシャンプーの洗浄成分などの外部刺激が侵入しやすくなり、皮膚が炎症を起こします。その結果、かゆみがさらに増し、また無意識に爪で掻いてしまうという、最悪の悪循環に陥ってしまうのです。
また、傷によって頭皮の正常なバリア機能が破壊されると、皮膚の生まれ変わりであるターンオーバーの周期が乱れ、乾燥性のフケや、炎症を伴う脂っぽいフケが発生しやすくなります。さらに、傷口は頭皮の常在菌が異常繁殖するための格好の温床となり、なかなか取れない頭皮の嫌な臭いの原因にも繋がります。
抜け毛や薄毛のリスクにも繋がります
頭皮へのダメージは、それだけでは終わりません。爪を立てて洗う習慣が長期化すると、そのダメージは皮膚の表面だけでなく、さらに深い部分、すなわち髪の毛を生み出す「毛母細胞」や、それを支える「毛包」といった重要な組織にまで及ぶ可能性があります。髪が健やかに成長するための土壌である頭皮環境そのものが悪化してしまうことは、長期的には抜け毛の増加や髪のハリ・コシの低下、ひいては薄毛の一因となり得る、非常に深刻な問題なのです。
正解はただ一つ「指の腹」で優しく洗うこと
では、どうすれば良いのでしょうか。その答えは、驚くほどシンプルです。洗髪は、必ず柔らかい「指の腹」の部分だけを使って行ってください。爪は完全に指の向こう側に隠し、頭皮には決して触れさせないという強い意識が必要です。そして、ゴシゴシと擦るのではなく、指の腹を頭皮にそっと密着させ、頭皮そのものを動かすように、下から上へと優しくマッサージする。本当の爽快感とは、頭皮を掻きむしる刺激ではなく、このマッサージによって血行が促進されることで得られるべきものなのです。
その習慣、今日限りで終わりにしませんか
爪を立てて洗うという習慣が、いかに多くのリスクをはらんだ危険な行為であるか、お分かりいただけたことと存じます。もし、この記事を読んで少しでも心当たりがあるという方は、ご自身の5年後、10年後の髪と頭皮のために、今日この瞬間からその習慣をきっぱりと断ち切っていただくことを強くお勧めいたします。
私たち理容師は、サロンでの施術を通じて、指の腹だけで洗うことがいかに心地よく、そして効果的であるかをご体感いただくことができます。ご自身の洗い方が正しいかご不安な方、長年の頭皮トラブルにお悩みの方は、どうぞ私たち専門家にご相談ください。お客様の頭皮を守るため、誠実なアドバイスと技術でサポートさせていただきます。