【理容師が教える】洗髪後のドライヤー、正しく使えていますか?髪の未来を変える乾かし方
洗髪後、濡れた髪を乾かすドライヤーの時間。「面倒だから、つい自然乾燥させてしまう」「とにかく早く乾けば良いと、熱風を力任せに当てている」——多くの方が、そのような経験をお持ちかもしれません。
しかし、洗髪後に行うドライヤーでの乾燥は、日々のヘアケアにおける「最後の仕上げ」であり、その使い方一つで、あなたの髪の健康状態と、翌朝のスタイリングのしやすさが大きく左右される、極めて重要な工程なのです。
今回は、お客様の髪の健康を第一に考える私たち理容師の視点から、なぜドライヤーが不可欠なのかという根本的な理由と、髪と頭皮を守りながら美しく仕上げるための、プロフェッショナルな使い方を詳しく解説してまいります。
なぜ「自然乾燥」ではなく「ドライヤー」が必要なのか
まず、ドライヤーを使うことの必要性についてご説明いたします。濡れた髪を乾かさずに放置する「自然乾燥」は、実は多くのリスクをはらんでいます。
水分で湿ったままの頭皮は、雑菌が最も繁殖しやすい「高温多湿」の環境です。これを放置することは、不快な臭いやかゆみ、フケといった頭皮トラブルの原因を自ら作り出していることに他なりません。
また、濡れている時の髪は、表面を覆うキューティクルが開ききった、非常に無防備な状態です。そのままで寝てしまうと、枕との摩擦でキューティクルが簡単に傷つき、剥がれてしまいます。これが、髪のパサつきやツヤが失われる大きな原因となるのです。ドライヤーを正しく使うことは、これらの深刻なリスクを回避し、頭皮と髪を速やかに健やかな状態へと戻すために、必要不可欠なケアなのです。
ダメージを最小限に抑える、正しいドライヤーの基本
ドライヤーの熱は髪を傷める、というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、それは使い方次第です。正しい基本を守れば、ダメージを最小限に抑えることができます。
まず、ドライヤーをかける前には、吸水性の良いタオルで髪と頭皮の水分を優しく、しかし徹底的に吸い取っておくことが大前提です。これにより、ドライヤーを当てる時間が大幅に短縮され、熱によるダメージを軽減できます。
ドライヤーを使う際は、髪から最低でも15cm〜20cmは離し、常に本体を小刻みに振りながら、熱が一箇所に集中しないように注意してください。風を当てる角度は、髪の根元から毛先に向かって、つまりキューティクルの流れに沿って当てることが、ツヤのある美しい仕上がりを生むための基本です。
プロが実践する「乾かす順番」
スタイリングの仕上がりを格段に向上させるためには、「乾かす順番」が非常に重要になります。私たちが常に実践しているのは、「根元から乾かす」という鉄則です。
毛先は非常に乾きやすいため、後回しにします。まず、髪の根元と、最も乾きにくい頭皮を完全に乾かすことを目指してください。髪の根元がしっかりと乾いていないと、スタイルに自然なボリュームが出ず、時間が経つとすぐにぺたんと潰れてしまいます。襟足や耳周りといった、髪が密集している部分から先に乾かしていくのも、効率的な方法です。全体の8割程度が乾いてきたら、手ぐしやブラシを使いながら、ご自身が作りたいヘアスタイルの毛流れを意識して乾かしていくと、翌朝のスタイリングが驚くほど楽になります。
最後の仕上げ「冷風」の魔法
温風で髪を完全に乾かし、ヘアスタイルがある程度形作られたら、最後にぜひ実践していただきたいのが「冷風」を当てるという、プロの仕上げ技術です。
温風によって開いた状態にあったキューティクルは、最後に冷風を当てることでキュッと引き締まります。これにより、髪の表面が滑らかになり、美しいツヤが生まれるだけでなく、セットしたヘアスタイルが熱で崩れるのを防ぎ、長時間キープさせるという、非常に重要な効果があるのです。この一手間が、プロとアマチュアの仕上がりの差を生む、大きなポイントの一つです。
ドライヤーを味方につけて、理想のスタイルへ
ドライヤーは、単に髪を乾かすための道具ではありません。正しく使いこなせば、髪と頭皮をダメージから守り、ご自身の理想のヘアスタイルを創り出すための、強力な「味方」となるのです。今回ご紹介した方法を実践していただくことで、日々のドライヤー時間が、面倒な作業から、ご自身の髪を育むためのクリエイティブな時間へと変わるはずです。
私たち理容師は、お客様一人ひとりの髪質や骨格、そしてご希望のヘアスタイルに合わせ、最適な乾かし方を熟知しています。もしご自身のドライヤーの使い方にご不安があったり、プロによる完璧なブロー技術を体験してみたくなったりした際には、ぜひお気軽にご相談ください。カットだけでなく、その後のスタイリングまで、誠実にサポートさせていただきます。