シャンプーのシリコンとは?その役割とノンシリコンとの上手な付き合い方
いつからか、シャンプーを選ぶ際の基準の一つとして「ノンシリコン」という言葉がすっかり定着しました。その一方で、「では、そもそもシリコンとは一体何なのでしょうか?」という問いに、正確に答えられる方は意外と少ないかもしれません。「なんとなく髪に良くないもの」という漠然としたイメージが先行しがちですが、その役割や特性を正しく理解することが、ご自身にとって本当に良いシャンプーを見つけるための大切な第一歩となります。ここでは、しばしば誤解されがちなシリコンについて、その本質に迫ります。
シャンプーにおける「シリコン」の役割
シリコン(正式にはシリコーン)とは、髪の表面を薄い皮膜でコーティングする役割を持つ成分の総称です。このコーティング作用によって、私たちの髪に様々なメリットをもたらしてくれます。
指通りをなめらかにする
シリコンが髪一本一本を滑らかにコーティングすることで、洗髪中の指通りが良くなり、髪同士の摩擦を軽減します。特に、ダメージによってキューティクルが乱れ、きしみやすい髪にとっては、切れ毛や枝毛を防ぐ上で非常に有効な働きをします。
髪にツヤを与え、手触りを良くする
乱れたキューティクルを整然と覆うことで、髪の表面に当たった光が均一に反射し、美しいツヤが生まれます。また、手触りもなめらかになり、まとまりやすい、扱いやすい髪へと導きます。
ドライヤーの熱などから髪を保護する
髪を覆う皮膜は、ドライヤーやヘアアイロンの熱、あるいは紫外線といった外部からの刺激から髪を守るバリアのような役割も果たします。日々のダメージ要因を軽減し、髪の健康を維持する手助けとなります。
「シリコンは髪に悪い」という説の真偽
一方で、シリコンに対してネガティブなイメージをお持ちの方もいらっしゃいます。その代表的なものについて、専門的な視点から解説いたします。
「毛穴に詰まる」という誤解について
「シリコンが毛穴に詰まって、抜け毛や頭皮トラブルの原因になる」という話を耳にすることがありますが、これは現在ではほとんど誤解であると言えます。かつては粗悪なシリコンが存在した時代もあったかもしれませんが、現代の化粧品に使用されているシリコンは安全性が非常に高く、分子の大きさなども考慮されています。毎日のシャンプーで適切に洗い流されるため、毛穴に詰まって深刻な問題を引き起こすという科学的根拠は乏しいのが実情です。
シリコンが合わないと感じるケース
シリコンは、そのコーティング力の高さゆえに、髪質によっては仕上がりが重く感じられたり、根元がふんわりと立ち上がりにくくなったりする場合があります。特に、髪が細いやわらかい方にとっては、ボリュームダウンの原因と感じられることもあるでしょう。これはシリコンが「悪い」のではなく、その方の髪質や求める仕上がりに対して「不向き」であるということです。
「ノンシリコンシャンプー」が選ばれる理由
では、ノンシリコンシャンプーにはどのようなメリットがあるのでしょうか。それは、シリコンによるコーティングがないことによる、軽やかでふんわりとした洗い上がりです。髪一本一本が本来の軽さを取り戻し、根元から自然に立ち上がるような、ボリューム感のある仕上がりを求める方に適しています。また、髪がコーティングされていない「素」の状態になるため、その後に使用するトリートメントの補修成分などが、より髪の内部に浸透しやすいという側面もあります。
最適な選択は、プロの視点から
結局のところ、シリコン配合とノンシリコン、どちらが良い・悪いと一概に断じることはできません。大切なのは、シリコンの有無という二元論で判断するのではなく、「ご自身の現在の髪質と、どのような仕上がりを理想とするか」という視点です。しかし、この判断をご自身だけで正確に行うのは、非常に難しいことかもしれません。私達、髪の専門家である美容師は、お客様の髪の状態を的確に診断し、ライフスタイルや理想のヘアスタイルまでを考慮した上で、シリコンの有無を含めた最適なシャンプーをご提案することができます。イメージや情報に惑わされることなく、あなたの髪にとっての真実を見つけるために、ぜひ一度ご相談ください。