【接客業の基本】会話が弾む「さしすせそ」とは?お客様との距離を縮める魔法の相槌
お客様との会話の中で、「何か気の利いたことを言わなければ」と、自分が話すことばかりに意識が向いてしまうことはありませんか。
しかし、お客様に「この人との会話は、なんだか心地よいな」と感じていただくために最も重要なのは、実は「話す」ことよりも「聴く」姿勢、そして、その聴く姿勢を相手に伝える「相槌(あいづち)」です。
今回は、お客様との会話をより豊かにし、心の距離をぐっと縮めることができる、接客業の基本テクニック「さしすせそ」について、その具体的な使い方と共にご紹介します。
なぜ「さしすせそ」が接客で有効なのでしょうか
「さしすせそ」とは、お客様の話を肯定的に受け止め、敬意と関心を示すための、5つの相槌の頭文字をまとめたものです。
これらの言葉を効果的に使うことで、お客様は「自分の話を、きちんと興味を持って聴いてくれている」と感じ、安心して、より多くのことを話してくださるようになります。
つまり、「さしすせそ」は、お客様から信頼を得て、本質的なニーズを引き出すための、潤滑油のような役割を果たすのです。
接客の「さしすせそ」、それぞれの意味と使い方
それでは、一つ一つの言葉が持つ意味と、具体的な使い方を見ていきましょう。
- 「さ」:さすがですね
相手の知識やセンス、経験などを褒め、敬意を示す言葉です。お客様の自尊心をくすぐり、会話を盛り上げる効果があります。
(例:「その組み合わせをお選びになるとは、さすがですね」「〇〇について、本当にお詳しいのですね。さすがです」)
- 「し」:知りませんでした
相手の話から、自分が新しい知識や情報を得られた、ということを伝える言葉です。「あなたから学ばせていただいた」という謙虚な姿勢を示すことで、お客様は気持ちよく話してくださいます。
(例:「〇〇という方法があるのですね、知りませんでした。勉強になります」)
- 「す」:すごいですね!/素晴らしいですね!
相手の言動や経験に対して、心からの称賛や感動を伝える、最もストレートな言葉です。驚きや感嘆の表情と共に伝えることで、より気持ちが伝わります。
(例:「〇〇を達成されたなんて、すごいですね!」)
- 「せ」:センスがいいですね
相手の持ち物や、選択眼を具体的に褒める言葉です。「さすがですね」よりも、ピンポイントで具体的に褒めることで、より説得力が増します。
(例:「その時計、とても素敵ですね。センスがいいですね」)
- 「そ」:そうなんですね
最も汎用性が高く、相手の話を優しく受け止める、共感の相槌です。相手の話を否定せず、「まずは、そうなんですね」と一旦受け止めることで、お客様は安心して話を続けることができます。
(例:「(お客様の話に対して)そうなんですね。それで、どうなられたのですか?」)
【注意点】「さしすせそ」を自然に使うためのコツ
これらの言葉は非常に強力ですが、使い方を間違えると、不自然で、わざとらしい印象を与えてしまうこともあります。
- 心を込めて、表情豊かに
ただ言葉を繰り返すのではなく、本当に「すごい!」と思っている気持ちを、声のトーンや、目を見開くなどの表情に乗せて伝えましょう。
- 連発しない
一つの会話の中で、何度も使いすぎると、かえって白々しく聞こえてしまいます。ここぞ、という場面で効果的に使いましょう。
- 相手と状況に合わせて使い分ける
全ての人に、全ての言葉が響くわけではありません。相手の性格や、会話の流れを読んで、最も適切な言葉を選びましょう。
【私たちの仕事から】カウンセリングで活きる「さしすせそ」
私たち理容師の仕事は、お客様の髪の悩みや、なりたいイメージを正確に引き出す、カウンセリングから始まります。まさに、この「さしすせそ」が、その真価を発揮する場面です。
お客様が持参された写真を見ては「さすがですね、お洒落なスタイルをご存じで」。髪の悩みを伺っては「そうなんですね、それは毎朝大変でいらっしゃいますね」。お客様から新しい情報を教えていただけば「知りませんでした!」。
この会話のキャッチボールを通じて、お客様との信頼関係を築き、最高のヘアスタイルを共に創り上げていくのです。
最高の会話は、最高の「聴く姿勢」から
「さしすせそ」は、単なるテクニックではありません。それは、「私は、あなた様のお話に、心からの関心と敬意を持っています」という、「聴く姿勢」そのものの表れです。
この姿勢があってこそ、お客様は心を開き、私たちはプロとして最高の提案ができるのです。
当サロンでは、お客様一人ひとりとの対話の時間を、何よりも大切にしています。ぜひ一度、あなたの想いを、私たちに聴かせにいらしてください。