【接客業の教え方】「できるスタッフ」を育てる指導の3ステップ
「新人のスタッフに、どうやって接客を教えればいいのだろう?」
「マニュアル通りに教えても、なかなかお客様の心をつかめるようにならない…」
後輩や部下を指導する立場にある方にとって、スタッフ教育は最も重要で、そして最も難しい課題の一つです。
本当の意味で「できるスタッフ」とは、ただマニュアル通りの動きができるスタッフではありません。自ら考え、お客様一人ひとりに合わせた最適な対応ができる、プロフェッショナルなスタッフです。
今回は、そんな自律したスタッフを育てるための、指導の基本的な考え方と、具体的な3つのステップについて解説します。
教える前に、指導者が持つべき「心構え」
効果的な指導は、まず教える側の「心構え」から始まります。それは、「答えを教えるのではなく、成長するのを手伝う」という意識です。
相手は、自分とは違う個性や考え方を持った一人の人間です。自分の成功体験を押し付けるのではなく、相手の良いところを伸ばし、自ら気づき、成長するためのサポート役である、という姿勢が、信頼関係の土台となります。
新人スタッフをプロに育てるための3ステップ
具体的な指導は、以下の3つのステップで進めるのが効果的です。これは、山本五十六の名言にも通じる、人材育成の普遍的な原則です。
- ステップ1:「やってみせる」(背中を見せる)
まず、指導者自身が、最高のお手本となります。言葉で説明する前に、実際にお客様に対応する姿を「やってみせて」、プロの仕事とは何かを、その背中で示します。挨拶の仕方、言葉遣い、立ち居振る舞い。あなたの全てが、生きた教材となります。
- ステップ2:「なぜ」を教える(考えさせる)
次に、行動の「理由」を教えます。「こうしなさい」という指示(What)だけでなく、「なぜなら、お客様がこうお感じになるからだ」という理由(Why)を丁寧に説明します。理由を理解することで、スタッフは応用力を身につけ、マニュアルにない状況でも、自分で考えて行動できるようになります。
- ステップ3:任せて、見守る(失敗させる勇気)
基本と理由を教えたら、次は実際に「やらせてみせます」。最初は失敗するかもしれません。しかし、その小さな失敗から学ぶ経験こそが、スタッフを最も成長させます。指導者は、すぐには口を出さずに辛抱強く見守り、終わった後に、良かった点を「褒め」、改善点を一緒に考える、という姿勢が大切です。
【私たちの仕事から】理容室における技術の伝承
私たち理容師の世界も、まさにこのステップで技術が伝承されていきます。
師匠がお客様をカットする姿を見て学び(やってみせる)、ハサミの角度一つ一つの意味を教わり(「なぜ」を教える)、そして、ウィッグやモデルさんで、何度も練習を重ねていく(任せて、見守る)。この繰り返しが、一人前の職人を育て上げるのです。
【最重要】最初に教えるべきは、プロとしての「身だしなみ」
そして、これらの技術や心得を教える、その大前提として、私たちが新人に最初に、そして最も厳しく教えることがあります。それが、プロフェッショナルとしての「身だしなみ」です。
- 清潔に整えられた髪型
- シワひとつない、真っ白な仕事着
- 常に短く、清潔に保たれた爪
お客様の大切な髪や肌に触れる者として、清潔感は、技術以前の絶対条件です。この基本ができない者に、お客様の前に立つ資格はない。身だしなみとは、それほどまでに重要な、プロとしての意識の表れなのです。
最高の店とは、最高の「教育」がある場所
お店のサービスの質は、そこで働くスタッフ一人ひとりの質によって決まります。そして、スタッフの質は、そのお店の「教育」の質によって決まると言っても過言ではありません。
お客様に最高のサービスを提供したいと願うなら、まず、自らのスタッフを最高の人材に育てることから始める必要があります。
私たち理容師は、技術者であると同時に、後進を育てる教育者でもあります。その誇りを胸に、日々お客様をお迎えしております。最高の教育が生み出す、最高の技術とサービスを、ぜひ一度ご体験ください。