「サービス」の一歩先へ。接客業における「おもてなし」の本質とは
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世界中から日本の「サービスの質」は高く評価されています。しかし、私たちの文化に深く根付く、もう一つの美しい概念があります。それが「おもてなし」です。
接客業に携わる私たちにとって、「サービス」と「おもてなし」。この二つの言葉は、似ているようで、その根底にある思想は大きく異なります。
今回は、お客様に本当の満足と感動を提供するための、「おもてなし」の本質とは何か、そして、それを日々の業務の中でどのように体現していくべきかについて、考えていきたいと思います。
「サービス」と「おもてなし」の決定的な違い
まず、この二つの言葉の違いを明確に理解することが、おもてなしへの第一歩となります。
- サービス(Service)
関係性:提供する側(主人)と、受ける側(客人)という、対価を前提とした主従関係が基本です。
期待値:お客様が求めるであろう、標準的な期待に応えることです。
マニュアル:品質を均一に保つために、マニュアルや手順が存在します。
- おもてなし(Omotenashi)
関係性:お迎えする側と、お越しいただいたお客様という、立場が対等な関係が基本です。
期待値:お客様の予測や期待を、良い意味で裏切り、超えていくことです。
マニュアル:存在しません。その場、その瞬間のお客様の状態を察し、最善を尽くす、一期一会の精神です。
サービスが「誰にでも同じ品質」を目指すのに対し、おもてなしは「あなた様だけに」という、パーソナルな心遣いが本質と言えるでしょう。
「おもてなし」を構成する3つの心
では、マニュアルのない「おもてなし」は、何を基準に行動すれば良いのでしょうか。そこには、3つの大切な「心」が存在します。
- 1.相手を深く思いやる心
お客様が言葉にする前の、些細な表情や仕草から、「もしかしたら、こうして欲しいのかもしれない」と、相手の気持ちを先回りして察し、行動する心です。
- 2.見返りを求めない心
「これをすれば、チップがもらえるかもしれない」「商品をもう一つ買ってくれるかもしれない」といった、見返りを一切期待しない、純粋な奉仕の心です。ただ、相手に喜んでいただきたい。その一心で行う行動がおもてなしです。
- 3.その場に合わせた、最善を尽くす心
状況やお客様に合わせて、常に自分ができる最善の行動は何かを考え、実行する心です。マニュアルに書かれていなくても、お客様のために必要だと感じたなら、臨機応変に行動する創造性が求められます。
【私たちの仕事から】理容室という空間でのおもてなし
私たち理容師の仕事も、この「おもてなし」の心で満ちています。
- カット前のカウンセリング
単に「どう切るか」を聞くのではなく、お客様のライフスタイルや髪の悩み、そして未来の予定までを伺い、その方に本当に必要なスタイルを一緒に考えます。
- 暖かい蒸しタオルでのシェービング
カットというサービスだけでなく、日々の疲れを癒していただくための、心地よいリラクゼーションの時間を提供します。
- 心地よい会話、あるいは静寂
お客様の雰囲気を察し、楽しい会話を提供することも、あるいは、そっと目を閉じ、静かに休んでいただくための空間を作ることも、大切なおもてなしです。
- 次回の来店までを考えた仕上げ
「今日の仕上がり」だけでなく、一ヶ月後に髪が伸びてきた時にも、スタイルが崩れにくいように、計算してカットを施します。
最高の「おもてなし」は、最高の「あなた」から
おもてなしとは、テクニック以前に、それを行う「人」そのものが問われます。
自分自身に心の余裕がなく、疲れた表情をしていては、相手を深く思いやることはできません。プロフェッショナルとして、常に自分を最高の状態に保っておくこと。それこそが、最高のおもてなしを生み出す、全ての土台となります。
そして、その土台の最も分かりやすい表現が、清潔感にあふれ、自信に満ちた「身だしなみ」です。
私たち理容師は、同じ接客業に携わる皆様が、日々、最高のコンディションでお客様と向き合えるよう、身だしなみの面からサポートさせていただきたいと考えています。最高の自分になるための場所として、ぜひ当サロンをご利用ください。
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