【接客業】「平常心」を保つための感情コントロール術|心の疲れをリセットする方法
お客様からの厳しいご意見、予期せぬトラブル、そして、どんな時でも笑顔を求められるというプレッシャー。
高いプロ意識をもって接客業に臨む人ほど、時に、自分自身の感情をコントロールすることの難しさに直面することがあります。
感情の波に飲まれることなく、常に穏やかな「平常心」を保ち、プロとして最高のパフォーマンスを発揮すること。それは、接客業における最も高度で、そして最も重要なスキルの一つです。
今回は、日々の業務の中で、ご自身の心を健やかに保つための、感情コントロールの具体的な方法について解説します。
なぜ感情のコントロールが難しいのか
接客業は、自分自身の本当の感情とは異なる感情(例えば、内心では焦っていても、表情は穏やかに)を表現することが求められる「感情労働」の側面を持っています。この、心と表情の不一致は、私たちが思う以上に、少しずつ心のエネルギーを消耗させていくのです。
この事実をまず理解し、「感情のコントロールが難しいと感じるのは、プロとして真剣に仕事に取り組んでいる証拠だ」と、ご自身を認めてあげることが、第一歩となります。
【実践編】イラッとした瞬間に使える3つのテクニック
お客様の対応中に、心が乱れそうになったその瞬間に、すぐに使えるテクニックがあります。
- テクニック1:「6秒」ルール(アンガーマネジメント)
怒りの感情のピークは、長くても6秒間と言われています。カッとなったら、心の中でゆっくりと「1、2、3、4、5、6」と数えながら、深く、静かに呼吸をしてみてください。この数秒の間が、感情的な反応を、理性的な対応へと変えるための、重要なクッションとなります。
- テクニック2:「役割」を演じる意識
自分自身が直接対応している、と考えるのではなく、「プロの接客係」という「役割」を演じている俳優なのだ、と意識を切り替えてみる方法です。これにより、お客様の言葉を個人的に受け止めすぎず、客観的な立場で、冷静に対応することができます。
- テクニック3:思考の「実況中継」
「お客様が、少し大きな声でお話しされている。私は今、少し心拍数が上がっているな。よし、一度、深く息を吸ってみよう」というように、自分の心の状態や、目の前の状況を、頭の中で冷静に実況中継します。これにより、感情に飲み込まれるのではなく、感情を客観的に観察している、もう一人の自分を作り出すことができます。
業務後に、心をリセットするためのセルフケア
心の健康を保つためには、ストレスを溜め込まず、その日のうちにリセットすることが大切です。
- 仕事の感情は、職場に置いて帰る
制服を着替える、お店のドアを出る、といった行動をスイッチとして、「ここからはプライベートな自分だ」と、意識的に気持ちを切り替える癖をつけましょう。
- 信頼できる人に話を聞いてもらう
一人で抱え込まず、同僚や友人、家族など、信頼できる人に話を聞いてもらうだけで、心は驚くほど軽くなります。
- 趣味や運動に没頭する
仕事とは全く関係のない、自分の好きなことに没頭する時間は、最高のストレス解消法です。
- 意識的に「何もしない」時間を作る
常に気を張っている接客業だからこそ、スマートフォンなども手放し、頭を空っぽにして、意識的に「何もしない」時間を作ることも、心の休息には非常に効果的です。
【私たちの仕事から】平常心を保つための「空間」
私たち理容師の仕事は、お客様の肌に直接カミソリを当てるなど、常に高い集中力と、揺るがない平常心が求められます。そのため、私たちの仕事場である理容室は、お客様にリラックスしていただくと同時に、私たち自身が心を整えるための、静かで、落ち着いた空間であることが非常に重要です。
最高のサービスは、穏やかな心から。
お客様に最高のサービスを提供するためには、まず、サービスを提供する私たち自身が、心身ともに健やかで、穏やかな状態でいる必要があります。自分自身の心を大切にすること。それもまた、プロフェッショナルの仕事の一部です。
当サロンは、お客様の髪を整える場所であると同時に、日々の喧騒から離れ、心をリセットできる「止まり木」のような場所でありたいと考えています。
同じ接客業のプロとして、日々の疲れを癒し、明日への活力を取り戻すために。ぜひ一度、静かな時間をお過ごしください。