センターパートは「クリップ」で変わる。プロが実践する、根元の立ち上げ術
サロンでセットしてもらった日の、あのセンターパートのふんわりとした分け目と、自然な立ち上がり。翌朝、自分で再現しようとしても、なぜかうまくいかない。その最大の秘密は、プロのスタイリストが何気なく使っている、あの「クリップ」に隠されています。
一見、女性のメイク道具のように思えるかもしれませんが、実はこのヘアクリップこそ、あなたの毎日のスタイリングをプロレベルに引き上げる、最強の魔法のアイテムなのです。この記事では、その正しい使い方を徹底的に解説します。
なぜプロは「クリップ」を使うのか?その絶大な効果
多くの人が見落としている、ヘアクリップがもたらす絶大な効果とメリットを見ていきましょう。
- 根元の立ち上がりを「強制的に」形状記憶させる
分け目の根元をクリップで物理的に持ち上げた状態で、ドライヤーの熱を当てる。これにより、髪が立ち上がった状態を、最も効果的に、そして強力に形状記憶させることができます。
- 両手が自由になり、スタイリングが格段に楽になる
これまで片手で髪を押さえ、もう片方の手でドライヤーを当てていた、あの煩わしさから解放されます。両手が自由になることで、ドライヤーを最適な角度から当てることができ、より効率的で正確なスタイリングが可能になります。
- 分け目を「くっきり」させすぎず、自然に見せる
コームで引いたような直線的すぎる分け目は、時に不自然に見えてしまいます。クリップを使えば、分け目をラフに、そしてふんわりと作ることができ、より自然な仕上がりになります。
- 無駄な熱ダメージを軽減できる
手で直接、ドライヤーの熱い風を受け続ける必要がなくなります。また、髪にも立ち上げたい根元部分にだけ、ピンポイントで熱を当てられるため、無駄な熱ダメージを減らすことにも繋がります。
メンズスタイリングに適したクリップの選び方
これからクリップを試してみる方は、以下のポイントを参考に選んでみてください。
- 種類:ダッカールクリップがおすすめ
プロが最もよく使うのは「ダッカールクリップ」と呼ばれる、ワニの口のような形状のクリップです。髪を面で、しっかりと、かつ優しく挟むことができるため、跡がつきにくいのが特徴です。
- 大きさ:標準サイズが扱いやすい
メンズの前髪を留めるなら、長さが9cmから12cm程度の、最も一般的なサイズのものが、扱いやすくおすすめです。
- 素材:最初はプラスチック製でもOK
アルミ製のものは軽くて熱伝導が良いというメリットがありますが、熱くなるため扱いに注意が必要です。まずは手軽なプラスチック製から試してみるのが良いでしょう。
これがプロの技!クリップを使ったセンターパートの作り方
難しそうに見えるかもしれませんが、手順は非常にシンプルです。鍵は「温めて、完全に冷ます」という、髪の性質を利用することです。
- STEP1:髪を8割から9割程度乾かす
まず、髪全体を濡らして癖をリセットします。その後、分け目を決めずに、いろんな方向からドライヤーで根元を乾かし、少しだけ湿り気が残っているくらいまで乾かします。
- STEP2:分け目を決め、根元をクリップで挟む(最重要工程)
分け目を指でラフに作ります。そして、立ち上げたい分け目の両サイドの髪を、根元からすくい上げるようにして、クリップで挟んで留めます。この時、髪の流れに対して垂直に、そして頭皮から少し髪が浮き上がるように留めるのが、ふんわりさせる最大のコツです。
- STEP3:ドライヤーで「温めて、完全に冷ます」
クリップで留めた根元部分に、ドライヤーの温風を3秒から5秒ほど当てます。その後、ドライヤーを離し、クリップを留めたまま、熱が「完全に冷める」まで、最低でも5分以上は放置してください。髪は、熱が冷める瞬間に形が記憶されるため、この「冷ます」時間が最も重要です。
- STEP4:クリップを優しく外し、スタイリング剤で仕上げる
根元がふんわりと立ち上がっているのを確認したら、髪の流れに逆らわないように、優しくクリップを外します。その後、ソフトワックスやバームなどを髪全体に馴染ませて、毛流れと束感を整えたら完成です。
なぜ「クリップが活きる髪」はプロ、特に「理容師」にしか作れないのか
ここまで、クリップを使ったスタイリングテクニックを解説してきましたが、「自分の髪では、クリップがうまく留まらない」「立ち上がりが綺麗に作れない」と感じる方もいるかもしれません。
それもそのはず。このクリップのテクニックが最大限に効果を発揮するかどうかは、その土台となる「カット」で、実はそのほとんどが決まっているのです。
プロの理容師は、あなたがクリップで根元を立ち上げた時に、最も美しいシルエットになるように、トップの長さや毛量を計算してカットします。クリップが留まりやすく、そして理想の形になるように、あらかじめ「仕込み」をしてくれているのです。
さらに、「毎朝クリップを使う時間すらない」という方には、究極の解決策として「パーマ」という選択肢も提案できます。クリップで立ち上げたような自然なボリュームと毛流れを、乾かすだけで再現できる「根元パーマ」や「ニュアンスパーマ」は、プロならではの究極の時短技術です。
そして何よりも、理容室では、カットの最後に、あなたの髪質に合わせた、最も簡単で効果的なクリップの使い方を、あなたの目の前で実践しながら、丁寧に教えてくれます。これこそが、ヘアサロンで得られる最高の価値の一つなのです。
まとめ:小さなツールが、大きな差を生む
ヘアクリップは、あなたのセンターパートの完成度を、プロのレベルへと引き上げてくれる、安価で、誰でも手に入れられる魔法のツールです。
そして、そのツールの性能を100%引き出すのは、プロによって完璧に作られた「カット」という名の土台です。毎日のスタイリングを、もっと楽しく、もっと簡単にするために。ぜひ一度、メンズヘアの専門家である理容師に、その全てを相談してみてはいかがでしょうか。