センターパートのアクセント。ヘアピンを使いこなす、メンズスタイル術
いつものセンターパートスタイルに、何か一つ、アクセントを加えたい。あるいは、伸ばしかけの前髪がどうしても言うことを聞かず、スタイリングに悩んでいる。そんな、長めの髪を持つ男性が抱える、ファッションと実用、両方の悩みを解決してくれるアイテム。それが、一本の「ヘアピン」です。
かつては女性のもの、あるいは、単に髪を留めるための道具というイメージだったヘアピンは、今や、性別の垣根を越え、スタイルに個性を与えるための、洗練されたファッションアクセサリーへと進化しています。
この記事では、メンズのセンターパートスタイルにおける、ヘアピンの選び方から、目的別の留め方、そして、その小さなアクセサリーがもっと魅力的に映えるための、髪のベース創りについて解説します。
メンズヘアピン。その「目的」と「魅力」
メンズがヘアピンを使う目的は、大きく分けて二つあります。自分がどちらの目的で使いたいのかを意識することが、正しいピン選びと、お洒落に見せるための第一歩です。
・【目的1:機能性】伸ばしかけの前髪などをスマートに固定する
目や眉にかかる、中途半端な長さの前髪。あるいは、スタイリングしてもすぐに落ちてきてしまうサイドの髪。そういった「言うことを聞かない髪」を、意図した位置に、目立たないように固定するための、極めて実用的な使い方です。
・【目的2:装飾性】ヘアスタイルに、意図的なアクセントを加える
K-POPアーティストや、ファッション感度の高いインフルエンサーにも見られるように、ヘアピンを、ピアスや指輪と同じ「アクセサリー」として捉える使い方です。あえて「見せる」ことで、スタイルに遊び心や、エッジの効いたアクセントを加えます。
用途で選ぶ、ヘアピンの種類
その目的によって、選ぶべきピンの種類も変わってきます。
・アメリカピン
最も一般的で、主に「機能性」を目的として使われる、波型のピン。髪色に近い色を選べば、髪に溶け込んで、付けていることがほとんど分からなくなります。髪を「隠して」留めたい時の、基本のピンです。
・カラーピン / ゴールドピン / シルバーピン
アメリカピンに、色やメタリックなコーティングを施したもの。こちらは「装飾性」を目的とした「見せる」ピンの代表格です。シンプルなスタイルに、さりげないアクセントとして輝きます。
・スリーピン(パッチン留め)
三角形や長方形の、パチンと留めるタイプのピン。アメリカピンよりも存在感があり、よりカジュアルで、ストリート感のある印象を与えたい時に有効です。
シーン別・ヘアピンの留め方テクニック
それでは、具体的な留め方を、目的別に見ていきましょう。
テクニック1:邪魔な前髪を、自然に「隠して」留める方法
この場合のゴールは、「ピンが見えないこと」です。
・手順1:留めたい部分の毛束を、軽くねじる
落ちてきてしまう前髪などの毛束を少量取ります。その毛束を、後ろ方向に向かって、軽く一、二度ねじります。この「ねじり」が、ピンの固定力を高めます。
・手順2:毛流れに沿って、ピンを根元に差し込む
ねじった毛束の根元に向かって、アメリカピンを差し込みます。この時、ピンの進行方向が、毛流れと同じ方向(前から後ろ)になるように、そして、波打った面が頭皮側に来るように差し込むと、よりしっかりと固定できます。
・手順3:上から髪をかぶせて、ピンを隠す
ピンを差した部分の上に、周りの長い髪を自然にかぶせて、ピンを完全に隠したら完成です。
テクニッック2:アクセサリーとして、「見せて」留める方法
こちらは、ピン自体をデザインの一部として見せるためのテクニックです。
・平行留め
2本のカラーピンなどを、数ミリの間隔をあけて、平行に並べて留める方法。シンプルながら、整然とした美しさが生まれます。
・クロス留め(バッテン留め)
2本のアメリカピンやカラーピンを、X字になるように交差させて留める方法。最もポピュラーで、簡単にスタイルにリズムが生まれる、人気のテクニックです。
・アシンメトリー留め
あえて片方のサイドだけに、デザイン性のあるピンを一つだけ留める方法。左右非対称なバランスが、こなれた、モードな雰囲気を演出します。
なぜ、ピンが似合う髪は、カットで創られるのか
ヘアピンは、伸ばしかけの髪の悩みを解決する便利なツールです。しかし、そもそも「ピンに頼らなくても、まとまりやすい髪」にすることは、カット技術によって可能です。
プロの理容師は、お客様が髪を伸ばしている過程で、どの部分が、どのように扱いにくくなるかを予測します。そして、その部分の毛量を調整したり、自然に流れるように質感を入れたりすることで、「伸ばしかけのストレス」そのものを、最小限に抑えるようにカットします。
また、アクセサリーとしてピンを使う場合も同様です。ピンが美しく映えるかどうかは、その「キャンバス」となるヘアスタイルが、美しいかどうかで決まります。全体のシルエットが整い、毛先まで丁寧に質感が調整された髪に留めるからこそ、一本のピンは、ただの「髪留め」ではなく、洗練された「ジュエリー」として輝くのです。
まとめ
ヘアピンは、メンズのセンターパートスタイルにおいて、機能性とファッション性を両立させる、非常に有効なアクセサリーです。その日の目的や気分に合わせて、隠して留めるか、見せて留めるかを使い分けることで、あなたのスタイルの幅は、間違いなく広がります。
そして、その小さなアクセサリーが、あなたの魅力を最大限に引き出すための、最高の「土台」を創ること。それこそが、私たちプロの理容師の仕事です。あなたの髪の悩みを解決し、あなたの「なりたいスタイル」を叶えるための、最適なヘアカットをご提案させていただきます。