「寝る前」の整髪料、髪と頭皮のために知っておくべき正しい習慣
一日の活動を終え、ベッドに入って心と体を休める、夜のリラックスした時間。その際に、ふと「明日の朝の整髪を少しでも楽にするために、寝る前に何か整髪料をつけておいた方が良いのだろうか」あるいは、「日中につけた整髪料は、寝る前に必ず洗い流すべきなのだろうか」といった、夜の髪のお手入れに関する疑問が、頭をよぎったことはございませんでしょうか。「寝る前」という時間は、私たちの髪と頭皮が、日中に受けた様々なダメージから回復し、新しく生まれ変わるための、非常に重要なゴールデンタイムです。この大切な時間をどのように過ごすかが、あなたの未来の髪の健康を、大きく左右するといっても過言ではございません。この記事では、「寝る前」の整髪料との正しい付き合い方について、やるべきことと、やってはいけないことを、髪の専門家である理容師の視点から詳しく解説してまいります。
【原則】寝る前に、整髪料は必ず洗い流す
まず、最も重要で、皆様に絶対に守っていただきたい、髪と頭皮のための基本的なルールについてお話しいたします。それは、日中にお使いになったヘアワックスやヘアジェルといった、「髪型を作るため」の整髪料は、寝る前に必ず、シャンプーで完全に洗い流すということです。日中につけた整髪料には、ご自身の汗や頭皮から分泌された皮脂、そして空気中の埃といった、様々な汚れが付着しています。これをつけたまま寝てしまうと、その汚れが頭皮の毛穴を塞いでしまい、かゆみやフケ、ニキビ、そして将来的には抜け毛といった、あらゆる頭皮の不調を引き起こす、直接的な原因となってしまうのです。寝る前の大原則は、「その日の整髪料は、その日のうちに、完全に洗い流し、頭皮と髪を清潔な状態に戻すこと」であると、どうか心に留めておいてください。
寝癖防止のために、寝る前に整髪料をつけるのは有効か
それでは、翌朝の寝癖を防止する、という目的で、寝る前に整髪料をつけるのはどうでしょうか。これもまた、結論から申し上げますと、「髪型を作るための整髪料を、寝癖防止のためにつけて寝ることは、絶対に避けるべき」です。前述した頭皮の不調を招くリスクに加えて、整髪料で固まった状態の髪が、睡眠中の寝返りなどで枕とこすれると、髪が折れたり、表面のキューティクルが傷ついたりして、かえって髪のダメージを深刻化させてしまう原因ともなります。翌朝の寝癖に対する最も効果的な対策は、寝る前に、ドライヤーを使って「髪を根元から完全に乾かすこと」なのです。
例外、寝る前につけることが推奨される「特別な整髪料」
しかし、全ての製品を寝る前に洗い流さなければならない、というわけではございません。例外として、寝る前につけることが、むしろ髪にとって良い効果をもたらす種類の製品もございます。それは、「髪を整える」という目的ではなく、「髪と頭皮を補修し、保護する」ことを目的とした、洗い流さないタイプの「トリートメント」です。ヘアオイルやヘアミルク、ヘアクリームといった形状のこれらの製品は、いわば「夜の髪の美容液」のようなものです。睡眠中に髪の内部に補修成分をじっくりと浸透させたり、枕との摩擦によるダメージから髪を守ったり、あるいは乾燥を防いだりといった、大切な役割を果たしてくれます。これらを寝る前のお手入れとして正しく使うことで、翌朝の髪のまとまりが格段に良くなり、結果として寝癖がつきにくくなる、という嬉しい効果も期待できます。
寝る前に行う、最高のヘアケアの手順
それでは、理想的な夜の髪のお手入れの手順をご紹介いたします。まず、一日の終わりに、丁寧なシャンプーで、その日の汚れと整髪料を完全に洗い流し、頭皮と髪をリセットします。次に、必要に応じて、シャンプー後に洗い流すタイプのトリートメントで、髪に栄養を補給します。そして、お風呂から上がったら、タオルで髪の水分を優しく拭き取った後、髪が半乾きの状態で、洗い流さないトリートメントを、特に傷みがちな毛先を中心になじませます。最後に、これが最も重要な工程ですが、ドライヤーを使い、髪と頭皮を根元から完全に乾かしてください。
夜の習慣が、明日の髪型を作る
「寝る前」の整髪料との付き合い方の答えは、非常に明快です。「髪型を作る目的の整髪料は、必ず落とす」「髪を補修する目的のトリートメントをつけ、そして完全に乾かすこと」。この夜の正しい習慣こそが、あなたの頭皮の健康を守り、明日の朝の整髪を楽にし、そして未来の美しい髪を育むための、最も確実な投資となるのです。もし、ご自身の髪質やライフスタイルに合った、最適な夜のお手入れ品について、より専門的な助言が必要でしたら、どうぞお気軽に、私たち髪の専門家である理容師にご相談ください。