軟毛を活かす整髪料の選び方、ぺたんこ髪をふんわり仕上げるプロの技術
ご自身の髪が、細く、そして柔らかい「軟毛」と呼ばれる髪質の方々。その髪は、ふんわりとした優しい質感を持ち、触れても心地よいという素晴らしい長所がある一方で、「朝に頑張って整髪しても、時間が経つとボリュームがなくなってしまう」「整髪料をつけると、かえってその重さで髪がぺたんこになってしまう」といった、その髪質特有の、非常に根深いお悩みを抱えていらっしゃることと存じます。多くの方が、ご自身の軟毛という髪質を「扱いにくいもの」と感じ、理想の髪型を諦めてしまっているのかもしれません。しかし、ご自身の髪質の特性を正しく理解し、それに合った整髪料を選び、そして専門的な使い方を身につけることで、そのお悩みは驚くほど改善され、むしろ軟毛ならではの柔らかな魅力を、最大限に引き出すことが可能になるのです。
なぜ、軟毛はボリュームを失いやすいのか
まず、なぜ軟毛はボリュームを維持するのが難しいのか、その理由についてご説明いたします。軟毛は、髪一本一本の内部構造的に、太く硬い髪に比べてハリやコシが弱いという特性を持っています。そのため、ご自身の髪の重さや、外部からのわずかな力にも負けてしまい、根元から寝てしまいやすいのです。そこへ、油分などを多く含む重たい質感の整髪料をつけてしまうと、髪はその重みに耐えきれず、根元から潰れてしまいます。これが、整髪料をつけると、かえって髪がぺたんこになってしまうという現象の、主な原因となっています。
軟毛のための整髪料選び、絶対のルール
軟毛の方が、理想の髪型を実現するための整髪料を選ぶ際に、守るべき絶対のルールがございます。それは、何をおいても「セットする力はありながら、限りなく軽い質感」の製品を選ぶこと、まさにこの一点に尽きます。
推奨される整髪料の種類
その条件に最も合致するのが、「クレイワックス」や「マットワックス」といった種類の整髪料です。これらのワックスは、油分が少なく、非常に乾いた質感が特徴で、高いセットする力を持ちながらも、髪に余計な重さを与えません。軟毛の根元を立ち上げたり、ふんわりとした空気感を表現したりするのに、最も適した選択肢の一つといえるでしょう。また、ドライヤーなどで作ったふんわりとした髪型を、重さをほとんど加えることなく、そのままの形で維持するためには、仕上げの「ヘアスプレー」も非常に有効な道具となります。
避けるべき整髪料の種類
一方で、ヘアオイルやヘアグリース、ヘアジェル、あるいは艶感を重視した重たいワックスなど、油分や水分を多く含む製品は、軟毛の最大の武器である「軽やかさ」を奪ってしまうため、ボリュームを出したいという目的においては、基本的には避けるのが賢明です。
軟毛スタイリングの成否を決める、ドライヤーの使い方
軟毛の方の整髪は、整髪料をつける前の、ドライヤーで髪を乾かす段階で、その成否の全てが決まると言っても過言ではございません。まず、髪を乾かす際には、ボリュームを出したいトップの部分の髪を、本来生えている方向とは逆の方向に優しく持ち上げ、その髪の「根元」に、下からドライヤーの温風を集中して当ててください。そして、ドライヤーを離し、髪の熱が冷めるまで数秒間その状態を保ちます。髪は、熱が冷める瞬間にその形が記憶される、という性質を持っています。この「温めて、形を作り、そして冷ます」という作業を丁寧に繰り返すことで、髪の根元に、上向きの力強い癖をつけることができるのです。
整髪料を使った、ふんわり感の仕上げ方
ドライヤーで立ち上がりの土台を作り終えたら、いよいよ整髪料を使って仕上げていきます。整髪料は、米粒ほどの本当にごく少量を指先に取ります。手のひら全体ではなく、指先と指の間で、薄く透明になるまで伸ばしてください。そして、ドライヤーで作った根元の立ち上がりを、決して潰してしまわないよう、整髪料は絶対に根元にはつけません。髪の中間から毛先を、ご自身の指先で優しくつまんだり、あるいは髪全体をくしゃっと握るようにして散らしたりして、髪に束感と、より豊かな表情を加えていきます。最後に、そのふんわりとした形を一日中維持するために、ハードタイプのヘアスプレーを、髪から20センチメートル以上離した位置から、髪全体に霧のヴェールをかけるようなイメージで、優しく吹き付けて完成です。
軟毛は、軽やかさを表現できる最高の個性
軟毛という髪質は、決してスタイリングが難しいだけの短所ではございません。むしろ、硬い髪質の方では表現することが難しい、軽やかで、空気感のある、柔らかな質感を表現できる、素晴らしい個性なのです。その個性を最大限に輝かせるためには、髪を重さから解放し、ドライヤーで根元を優しく立ち上げるという、正しい知識と技術が必要となります。もし、ご自身の軟毛の特性に合わせた、より具体的な整髪方法や、それを実現するための最適な整髪料について、専門家からの助言が必要でしたら、どうぞお気軽に、私たち髪の専門家である理容師にご相談ください。あなたの悩みを、最高の魅力に変えるためのお手伝いをさせていただきます。