印象は前髪で決まる、理想の前髪を作るための整髪料の選び方とセット術
ご自身の顔の印象を、最も大きく、そして劇的に左右する髪のパーツはどこかと問われれば、私たち髪の専門家は、ためらうことなく「前髪」であるとお答えいたします。前髪を潔く上げるか、あるいは自然に下ろすか、それとも知的に横へ流すか。そのわずか数センチメートルの毛束が作り出す表情の違いだけで、その人の印象は、爽やかにも、優しくも、あるいは誠実にも変化する、まさに「顔の額縁」ともいえる、非常に重要な部分なのです。しかし、その重要さゆえに、「他の部分はうまくいくのに、なぜか前髪だけが思い通りにならない」「整髪料をつけすぎると、不自然な束になって割れてしまう」といった、繊細で根深いお悩みを抱える男性が、後を絶ちません。この記事では、ご自身の魅力を最大限に引き出す、理想の前髪を実現するための、整髪料の選び方と、私たち専門家が日々実践している精密な整髪の技術について、詳しく解説してまいります。
すべてはドライヤーから、前髪セットの土台作り
まず、皆様に知っていただきたい最も重要な事実がございます。それは、前髪の整髪の成否の、実に九割は、整髪料をつける前の、ドライヤーで髪を乾かす段階で決まってしまう、ということです。まずは朝、前髪の根元をシャワーやお湯でしっかりと濡らし、睡眠中についてしまった頑固な生え癖を、一度まっさらな状態にリセットすること。これが、全ての始まりとなります。
前髪を「上げたい」あるいは「流したい」場合
タオルで水分を拭き取った後、まず、ご自身が毛流れを作りたい方向とは「逆」の方向に向かって、前髪を指でかき上げながら、その根元にドライヤーの風を当てて乾かします。こうすることで、髪の根元がふんわりと立ち上がり、その後の毛流れが非常に作りやすくなります。根元が乾いたら、次に本来流したい方向に向かって、手ぐしで髪を整えながら風を当てて仕上げます。
前髪を「下ろしたい」場合
前髪が浮いてしまうのを抑えたい場合は、ドライヤーの風を、必ず「上から下へ」と当てることを意識してください。手ぐしで髪を優しく下に引っ張りながら乾かすことで、髪の根元の浮き癖を抑え、まとまりのある落ち着いた状態を作ることができます。
【なりたい印象別】前髪に適した整髪料の選び方
ドライヤーで完璧な土台を作り終えたら、いよいよ整髪料を使って、その形を維持し、質感を加えていきます。
清潔感のある「上げ前髪、流し前髪」を作りたいなら
ドライヤーで作った根元の立ち上がりを、軽い質感のまま、しかし力強く一日中維持することが求められます。そのため、セットする力はありながらも、艶が出すぎない「マットタイプ」や「クレイタイプ」のハードワックスが、最も基本的な選択肢となります。
自然な「下ろし前髪」で束感を作りたいなら
髪を固めすぎることなく、毛先にだけ、さりげない自然な束感と動きを与えたい。そんなご要望には、「ソフトワックス」や、繊維状の成分を含んだ「ファイバーワックス」などが適しています。
そして、どのような前髪の髪型であっても、その繊細な形を、湿気や風といった外部の刺激から守るためには、仕上げに「ヘアスプレー」を髪から離して軽く吹きかけることが、非常に有効な手段となります。
前髪セットを失敗しないための、整髪料のつけ方
前髪という非常に繊細な部分に整髪料をつける際には、特別な配慮が必要です。まず、前髪に必要な整髪料の量は、皆様が想像するよりも、ずっと少量です。米粒半分ほどの、本当にごくわずかな量を指先に取ってください。そして、手のひら全体ではなく、整髪料をつけたい指の指先と、逆の手の指先とを使い、そこに薄く均一に伸ばします。前髪が不自然に割れてしまったり、ぺたんと潰れてしまったりする最大の原因は、髪の根元に整髪料がついてしまうことにあります。必ず、髪の中間から毛先を、指先で優しくつまんだり、あるいは表面をなぞったりするようにして、決して根元には触れない、という意識を徹底してください。
前髪を制する者は、第一印象を制する
前髪の整髪は、ドライヤーによる丁寧な土台作りと、ごく少量の整髪料を、指先を使って繊細に扱うという、プロの技術と考え方をご理解いただくことで、どなたでも格段に上達させることが可能です。毎朝、ご自身の前髪を思い通りに操れるようになることは、その日一日を、自信を持って過ごすための、大きな力となってくれるはずです。もし、ご自身の髪質や生え癖に合わせた、最適な前髪の作り方や、それを叶えるための具体的な整髪料について、より専門的な助言が必要でしたら、どうぞお気軽に、私たち髪の専門家である理容師にご相談ください。