美しい「毛流れ」の作り方、髪型を格上げする整髪料の選び方と使い方
ご自身の髪型が本当に格好良く見えるかどうかは、実は、髪の長さや全体の形だけでなく、髪一本一本が描く、美しく整然とした「毛流れ」に、その成否がかかっているといっても過言ではございません。一見すると、手ぐしで無造作に整えたように見える、おしゃれな方の髪型にも、実は、必ず計算され尽くした美しい毛流れが存在するのです。「自分の髪は言うことを聞かず、きれいな毛流れなんてとても作れない」「どうすれば、理容室で仕上げてもらった時のような、あのまとまりのある流れを、自宅で再現できるのだろうか」。この記事では、そんな皆様のお悩みにお答えするため、ご自身の髪を思い通りに操り、美しい毛流れを作るための、整髪料の選び方と、そして何よりも重要な整髪の技術について、専門家の視点から詳しく解説してまいります。
そもそも「毛流れ」とは何か
まず、私たちが普段何気なく使う「毛流れ」という言葉の、基本的な意味についてご説明いたします。毛流れとは、皆様一人ひとりが生まれつき持っている、髪の毛が生えている方向、すなわち「毛流(もうりゅう)」と、その毛束が、整髪によって描く「線の流れ」のことを指します。美しい髪型とは、この生まれつきの毛流の特性を深く理解し、ある時はその流れに自然に従い、またある時はその流れに巧みに逆らいながら、ご自身が意図した、洗練された毛流れを作り出すことで、初めて完成されるものなのです。
美しい毛流れを作るための、三つの重要な要素
美しい毛流れは、ただ一つの要素だけで作られるものではございません。それは、主に三つの要素が、見事に連携することによって生まれます。一つ目は、土台となる「カット」です。そもそも、髪が流れやすいように、あるいは特定の毛流れが出やすいように、毛量や質感を精密に調整しながらカットされていることが、美しい毛流れを作るための、揺るぎない大前提となります。二つ目は、その流れを髪に記憶させる「ドライヤー」の技術です。そして三つ目が、ドライヤーで作った毛流れを、一日中維持し、さらに艶や束感といった「質感」を加えて、髪型を完璧に完成させる「整髪料」の役割なのです。
毛流れ作りに適した整髪料の種類
ご自身が作りたい毛流れのイメージによって、最適な整髪料の種類は異なってまいります。
きっちりとした、面で見せる毛流れなら
七三分けやオールバック、あるいはサイドをタイトに流す髪型のように、髪を一つの「面」として捉え、ビシッとした毛流れを作りたい場合に最適なのが、「ヘアグリース」や「ヘアジェル」です。特にヘアグリースは、その滑りの良さから、コーム(櫛)を使って、精密で美しい毛流れを、何度でも作り直すことができるという大きな利点を持っています。
軽やかで、線で見せる毛流れなら
髪を固めすぎることなく、一本一本の毛束が、まるで生きているかのように動く、自然で軽やかな毛流れを作りたい場合に最適なのが、「ヘアワックス」です。ご自身の指先を使い、毛束を優しくつまんだり、ねじったりしながら、意図した「線」の流れを、自在にデザインすることができます。
しなやかで、潤いのある毛流れなら
長めの髪などで、強いセットする力は求めず、髪の広がりを抑え、あくまで自然で、潤いに満ちた毛流れが欲しい、という場合に有効なのが、「ヘアクリーム」や「ヘアオイル」です。素髪そのものが持つ、本来の美しさを最大限に引き出してくれます。
プロが実践する、毛流れを作るための手順
それでは、ご自宅で美しい毛流れを作るための、具体的な手順についてご説明いたします。まず、髪を濡らした後の、ドライヤーで乾かす段階で、ご自身が作りたい毛流れとは逆の方向から、髪の根元に風を当てて乾かし、ふんわりとした自然な立ち上がりをつけてください。その後、本来流したい方向に向かって、手ぐしやブラシで髪をとかしながら風を当て、毛流れの基本的な土台を作ります。次に、手のひらに伸ばした整髪料を、髪の内側からつけ始め、全体の毛流れに逆らうことのないよう、根元から毛先に向かって優しくなじませていきます。そして最後に、きっちりとした髪型であればコーム(櫛)を、動きのある髪型であればご自身の指先を使い、髪の表面を優しく撫でるようにして、一本一本の毛流れを、丁寧に整えていきます。
毛流れを制する者は、髪型を制する
美しい「毛流れ」は、単に整髪料を髪につけるだけでは、決して生まれるものではございません。優れたカット、計算されたドライヤーの技術、そして、その髪型を完成させるための最適な整髪料という、三位一体の要素が揃って初めて完成する、非常に洗練されたものなのです。ご自身の髪の生え癖を深く理解し、それを巧みにコントロールする技術を身につけることが、毎日の髪型作りを成功へと導く、最大の秘訣といえるでしょう。