古い整髪料は使っても大丈夫?髪と頭皮を守るための使用期限と見分け方
ご自宅の洗面台の引き出しの奥を整理していると、買ったことさえ忘れかけていた、古い整髪料がひょっこりと出てきた。そんなご経験はございませんでしょうか。「まだ中身はたくさん残っているし、見た目も問題なさそうだから、使えそうだ」「しかし、最後にこれを使ったのは、一体いつのことだっただろうか」。そんな風に、再び使うべきか、あるいは思い切って捨てるべきか、迷ってしまうお気持ちは、大変よく分かります。しかし、私たちが毎日口にする食べ物に賞味期限があるように、実は、皆様がお使いの整髪料にも、その品質が安全に保たれるための、一つの「使用期限」の目安が存在するのです。この記事では、古い整髪料を使い続けることに潜む、目には見えないリスクと、ご自身の髪と頭皮を健やかに守るための、安全な使用期限の目安や劣化の見分け方について、髪の専門家である理容師の視点から詳しく解説してまいります。
なぜ、古い整髪料を使ってはいけないのか
「もったいない」というお気持ちから、古い整髪料をお使いになることで、実はいくつかの深刻な問題を引き起こしてしまう可能性がございます。
見えない敵、「雑菌」の繁殖
これが、私たちが最も懸念する、最も深刻なリスクです。一度開封した整髪料の容器の中、特にご自身の指ですくって使うタイプのヘアワックスなどは、空気中に浮遊する雑菌や、皆様の手指についている細菌が、どうしても混入してしまいます。そして、整髪料に含まれる油分や水分は、それらの雑菌にとって、格好の栄養源となり、時間と共に容器の中で繁殖してしまう可能性がございます。その雑菌が繁殖した整髪料を、ご自身のデリケートな頭皮につけることが、かゆみやフケ、ニキビ、あるいは炎症といった、様々な頭皮の不調を引き起こす、直接的な引き金となり得るのです。
品質の変化、「酸化」という現象
整髪料に含まれている油分や様々な成分は、長期間にわたって空気に触れることで、「酸化」という化学的な変化を起こします。これは、ご家庭にある食用油が古くなると、嫌な匂いがしてくるのと全く同じ現象です。酸化してしまった油分は、肌への刺激となる物質に変化している可能性があり、これまで問題なく使えていた方であっても、かぶれなどの肌の不調を引き起こす原因となることがございます。
使用期限の、一般的な目安について
多くの整髪料の容器には、食品のような明確な使用期限が記載されていないことがほとんどです。しかし、一般的な目安として、未開封の製品であれば、適切な環境で保管されていれば、製造から約3年は品質が保たれるとされています。しかし、問題は一度開封した後の製品です。開封後の整髪料は、およそ半年から、長くとも1年以内を目安に使い切っていただくことを、私たちは強く推奨いたします。
使う前に必ず確認したい、劣化のサイン
ご自身がお持ちの整髪料が、まだ安全に使えるかどうかを判断するための、いくつかの具体的な確認すべき点がございます。まず、容器の蓋を開けて、「匂い」を確かめてみてください。購入した時とは明らかに違う、酸っぱい匂いや、古くなった油のような嫌な匂いがした場合は、製品が酸化している証拠です。また、「色」が購入時よりも黄ばんでいたり、水分と油分が分離してしまっていたりする場合も、品質が変化しているサインです。そして、実際に少量手に取ってみて、水分が飛んで異常に硬くなっていたり、逆に成分が分離してドロドロになっていたりといった、「手触り」の変化が感じられた場合も、ご使用はおやめください。
整髪料の品質を保つための正しい保管方法
整髪料の品質を、できるだけ長く良好な状態に保つためには、その保管方法が重要となります。直射日光が当たる場所や、浴室のような高温多湿な場所は、成分の劣化を早める最大の原因となりますので、ぜひ避けてください。洗面台の棚の中など、涼しくて光の当たらない場所が、最も理想的な保管場所です。そして、ご使用になった後は、必ず容器の蓋をきっちりと閉め、製品が空気に触れる時間を可能な限り短くすることを、日々の習慣としてください。
新しい整髪料で、常に最高の自分を
古い整髪料を「もったいない」というお気持ちで使い続けることは、髪型がうまく決まらないだけでなく、深刻な頭皮の不調を招きかねない、非常にリスクの高い行為です。整髪料が持つ最高の性能は、新鮮で、その製品が持つ能力を100パーセント発揮できる状態で使ってこそ、初めて実現されるものです。ご自身の魅力を最大限に引き出し、そして大切な髪と頭皮の健康を守るためにも、お手元の整髪料の定期的な見直しを、ぜひご検討ください。