理容室の定休日はなぜ月曜日?知られざる歴史と、その理由
「よし、今日こそ髪を切りに行こう」と思い立った日が、ちょうど月曜日で、お目当ての理容室がお休みだった。そんなご経験をお持ちの方は、きっと少なくないことでしょう。なぜ、多くの理容室が月曜日(あるいは地域によっては火曜日)を定休日にしているのか、不思議に思われたことはございませんか。実は、このお馴染みの光景には、日本の社会が歩んできた、深い歴史的な背景が隠されているのです。この記事では、理容室の定休日にまつわる、知られざる物語を紐解いてまいります。
最も有力な説、それは「休電日」の名残
理容室の定休日が月曜日や火曜日に集中している最も有力な理由。それは、戦後の電力不足の時代にまで遡ります。当時は、全国的に電力が著しく不足しており、安定した供給を保つために、地域ごとに計画的に送電を停止する「休電日」という制度が設けられていました。電動式のバリカンやパーマ機器など、多くの電力を必要とする理容業は、この休電日に合わせてお店を休むのが合理的でした。そして、その休電日が、関西地方では月曜日に、関東地方では火曜日に多く設定されていたことから、その慣習が今なお定休日として受け継がれている、というのが最も広く知られている説です。
業界全体の発展を支えた「組合の休日」
もう一つ、定休日を統一する上で大きな役割を果たしたのが、理容師たちが所属する同業者組合の存在です。地域の組合が主導して定休日を統一することには、加盟店同士の過当な競争を避けるという目的がありました。しかしそれ以上に重要だったのが、業界全体の技術力や衛生観念の向上を目的とした、講習会や研修会を開催するためでした。皆が一斉に休む日を設けることで、理容師たちが一堂に会し、新しい技術を学んだり、情報交換を行ったりする貴重な機会が生まれます。世間が動き出す月曜日は、こうした会合を開くのに都合が良く、休日を利用して理容師たちが自己研鑽に励むための、大切な一日となっていたのです。
お客様のニーズと共に、定休日も多様化の時代へ
しかし、人々のライフスタイルが大きく変化した現代においては、こうした伝統的な定休日の在り方も、少しずつ変わりつつあります。土日がお休みとは限らない職業の方や、「週の始まりである月曜日にこそ、身だしなみを整えたい」とお考えになるお客様の声も、年々増えてまいりました。そうした多様なニーズにお応えするため、近年では月曜日も営業し、代わりに他の曜日を定休日にしたり、スタッフが交代で休みを取る不定休の形をとったりする理容室が増えています。
定休日に込められた、理容師の想い
理容室の定休日には、単なるお店の休日以上の、様々な歴史や想いが込められています。お客様が最も利用しやすい土日や祝日に営業させていただくために、私達は平日に休日をいただく。そして、その休日を利用して、次にお客様をお迎えする際には、よりご満足いただけるサービスがご提供できるよう、技術の研鑽や準備に時間を充てる。それもまた、お客様一人ひとりに真摯に向き合う、誠実な理容室の在り方の一つです。お客様のライフスタイルに合わせて、いつでも最高の技術でお迎えできるよう、私達は日々努めております。