理容室のドライヤー術を伝授。髪型は「乾かし方」で決まる
洗髪の後、何気なくドライヤーで髪を乾かすという日常的な行為。しかし、その「乾かし方」一つで、ヘアスタイルの仕上がりや一日中のまとまりが劇的に変わることを、皆様はご存知でございましょうか。理容室で整えてもらったばかりの完璧なスタイルが、翌朝ご自身で再現しようとすると上手くいかない。その原因の多くは、実はこのドライヤーの使い方にあるのです。この記事では、私たち理容師が日々実践している、単に髪を乾かすだけではない「ヘアスタイルを創るためのドライヤー術」の基本について、詳しくご紹介いたします。
なぜ、理容室のドライヤー仕上げは違うのか
まずご理解いただきたいのは、私たちプロの理容師が、ドライヤーを単に「髪を乾かすための道具」としてではなく、「髪の形を記憶させるための道具」として捉えているという点です。髪の毛は、濡れている状態から乾くその瞬間に形が決まるという性質を持っております。これは、髪内部の水素結合という働きによるもので、この原理を巧みに利用することで、根元をふんわりと立ち上げたり、毛先に自然な流れを作ったりすることが可能になるのです。理容室での仕上げが美しいのは、この原理に基づき、ドライヤーの熱と風を精密にコントロールしているからに他なりません。
ご自宅で実践できる、プロのドライヤー術の基本
プロの技術と聞くと難しく感じられるかもしれませんが、いくつかの基本的なポイントを押さえるだけで、ご自宅での仕上がりを格段に向上させることができます。まず、ドライヤーを手に取る前の「タオルドライ」が全ての基本です。ゴシゴシと強く擦るのではなく、頭皮の水分を優しくマッサージするように揉み込み、髪の毛はタオルで挟んでポンポンと叩くように水気を切ります。
次に、ドライヤーの風は必ず「根元」から当ててください。スタイルの土台となる根元を最初にしっかりと乾かすことが、一日中崩れないヘアスタイルを創るための鉄則です。指の腹で頭皮を軽く擦るようにしながら、様々な方向から風を送ることで、気になる生え癖をリセットし、スタイリングしやすい素直な状態に整えます。そして、全体の8割ほどが乾いたら、ボリュームを出したい部分は下から、抑えたい部分は上から風を当てて形を整え、最後に冷風で仕上げると、スタイルが固定され髪に美しいツヤが生まれます。
なりたいスタイル別、ドライヤーテクニック応用編
基本の乾かし方をマスターしたら、次はなりたいスタイルに合わせた応用テクニックです。例えば、トップに自然な高さを出したい場合は、ボリュームを出したい部分の髪を指で軽く持ち上げ、その根元に温風を3秒ほど当て、その後3秒ほど冷ましてから手を離してみてください。これだけで、ワックスをつけた際の立ち上がりが格段に良くなります。また、前髪を自然に流したい場合は、まず流したい方向とは逆側に向かって乾かし、ある程度乾いてから本来流したい方向へ風を当てて整えると、根元がふんわりと立ち上がり、柔らかな毛流れを創り出すことができます。
最高の仕上がりは、プロのアドバイスから
この記事でご紹介したテクニックは、多くのヘアスタイルに応用できる基本的なものでございます。しかし、お客様一人ひとりの髪質や生え癖、そして目指すヘアスタイルによって、最適なドライヤーのかけ方は微妙に異なります。私たち誠実な理容師は、カットやシェービングの技術をご提供するだけでなく、お客様がご自宅に戻られてからも、サロンでの仕上がりをできる限り長く楽しんでいただけるよう、スタイリングの具体的な方法を丁寧にお伝えすることを使命と考えております。「ドライヤーの使い方がよく分からない」「自分の髪だと、どうすれば上手くまとまるのか」といった些細なお悩みも、どうぞお気兼ねなくご相談ください。お客様だけの最適な方法を、共に見つけさせていただきます。