理容院で「写真を見せる」のは大正解。理想の髪型を叶える、賢い伝え方
「こんな髪型にしてみたい」。心の中に理想のヘアスタイルのイメージはあっても、それを口頭で正確に伝えるのは、思いのほか難しいものです。「サイドをもう少し短く」「トップは軽めに」といった言葉の尺度は人それぞれ異なり、その僅かな認識のズレが、仕上がりへの違和感に繋がってしまうことも少なくありません。
スマートフォン一つで、いつでも理想の髪型を探せる現代。「この写真のようにしたい」と伝えられれば一番確実なはずなのに、「理容師さんに写真を見せるのは、なんだか恥ずかしい」「こだわりが強いと思われて、迷惑ではないだろうか」と、ためらってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、そのようためらいを、確信へと変えるお話をさせていただきます。結論から申し上げますと、理容院で写真を見せていただくことは、理想の髪型を叶えるための、最も賢明で確実な方法なのです。
なぜ、理容師に写真を見せることが「大正解」なのか
お客様が写真を見せてくださることは、私たち理容師にとって、決して迷惑などではございません。むしろ、お客様の「なりたい姿」を深く理解するための、この上なく貴重な情報源であり、心から歓迎すべきことなのです。
「百聞は一見に如かず」イメージのズレをなくす
言葉というものは、時に曖昧です。しかし、一枚の写真は、長さ、形、質感、そして何よりも「雰囲気」という、言葉だけでは伝えきれない多くの情報を、一瞬で、そして正確に伝えてくれます。写真という揺るぎない「共通言語」を用いることで、お客様と理容師との間にあったイメージのズレはなくなり、ヘアカットにおける失敗のリスクを劇的に減らすことができるのです。
理想を伝えるための、効果的な写真の選び方
オーダーの効果を最大限に高めるために、お見せいただく写真にも、いくつかのポイントがございます。
髪型全体が分かる、複数枚の写真を用意する
もし可能であれば、ご希望のヘアスタイルの、正面からの写真だけでなく、サイド(横)やバック(後ろ)からの写真もご用意いただくと、より理想のイメージに近づけることができます。ご自身では見えない部分のシルエットや、襟足の処理の仕方まで正確に共有することで、360度どこから見ても完璧なスタイルを創り上げることが可能になります。
写真を見せた上での、賢い伝え方のステップ
ただ写真を見せるだけでなく、そこから一歩踏み込んだコミュニケーションをとることで、仕上がりの満足度はさらに高まります。
写真の「どこが気に入っているのか」を伝える
その写真の、どの部分が特にご自身の心に響いたのかを、ぜひ理容師にお聞かせください。「全体のすっきりとした雰囲気」「前髪の自然な流れ方」「この襟足の形」といったように、お気に入りのポイントを具体的に指し示していただくことで、私たちは、お客様が最も大切にされている「こだわり」を深く理解することができます。
プロの意見を求め、「似合わせ」てもらう
そして、最も重要なステップが、プロの意見を求めることです。「この髪型は、私の髪質や骨格に合うでしょうか?」と、ぜひ一度ご相談ください。誠実な理容師は、お客様が見せてくださった写真のイメージを最大限に尊重しながらも、髪質、毛量、生え癖、そして頭の形といった、その方だけが持つ素材をプロの視点から見極め、理想のスタイルを「あなたに最も似合う最高の形」へと昇華させるお手伝いをいたします。
ご留意いただきたい点:完全な再現が難しい場合も
一つだけご理解いただきたいのは、写真のモデルの方とお客様ご自身とでは、髪質や骨格といった、ヘアスタイルを創る上での「素材」が全く異なるという点です。そのため、写真と寸分違わぬ完全なコピーを創り上げることは難しい場合がございます。大切なのは、写真を完璧に模倣することではなく、写真が持つ素敵な雰囲気を、お客様ご自身の魅力として再構築することなのです。
一枚の写真は、お客様と理容師とを繋ぎ、最高のヘアスタイルを「共に創り上げる」ための、素晴らしいコミュニケーションツールです。どうぞ、ご自身の「なりたい」が詰まった大切な一枚を、恥ずかしがらずに、私たちに見せてください。