理髪店で使われる「ブラシ」の世界。プロの仕事を支える、名脇役たち
理髪店での施術中、私たち理容師が、場面に応じて様々な形の「ブラシ」を使い分けていることにお気づきでしょうか。主役であるハサミやバリカンの陰で、あまり注目されることのないブラシですが、実は、最高のヘアスタイルと心地よい時間を創り上げるためには決して欠かすことのできない、非常に重要な役割を担っています。この記事では、プロの仕事を支える「ブラシ」たちの、知られざる世界にご案内いたします。
スタイルを創り上げる「スタイリングブラシ」
ドライヤーと共に、ヘアスタイルの土台を創り上げるのが「スタイリングブラシ」です。お客様の髪質や、なりたいヘアスタイルに応じて、私たちは数種類のブラシを巧みに使い分けます。例えば、髪に自然な毛流れやまとまりを与えるための「デンマンブラシ」。髪の根元にふんわりとしたボリュームを生み出したり、くせを伸ばして美しいツヤを出したりするための「ロールブラシ」。一つひとつのブラシが持つ特性を深く理解し、的確に使い分けることで、ご自宅での再現性が高く、持続性のある、計算されたヘアスタイルが生まれるのです。
清潔感を生み出す「クリーニングブラシ」
お客様に常に清潔で、心地よい時間をお過ごしいただくためにも、ブラシは活躍します。カットが終わり、首元や襟足に残った細かな髪の毛を、柔らかい毛先で優しく払い落とすための「ネックブラシ」。その心地よい感触は、施術の終わりを告げる、癒やしの瞬間のひとつです。また、バリカンの刃の間に詰まった髪の毛を、一回一回丁寧に取り除くための小さなブラシも、道具の精度と衛生状態を完璧に保つためには欠かせない、大切な仕事道具です。
最高の髭剃りを準備する「シェービングブラシ」
理髪店ならではの、本格的なお顔剃り(シェービング)の儀式に、なくてはならないのが「シェービングブラシ」です。きめ細かく、弾力のある温かい泡を、このブラシを使ってお顔全体に塗布していきます。ブラシの毛先が、肌の上の汚れを落とし、髭の一本一本を根元から優しく立ち上がらせることで、カミソリの刃の通りを滑らかにし、肌への負担を最小限に抑えるのです。最高の髭剃りは、この一本のブラシから始まります。
誠実な理容師は、一本のブラシにも魂を込める
私たち誠実な理容師は、お客様の髪や肌に直接触れる道具の一つひとつを、自らの手の延長である、大切な「相棒」だと考えております。お客様一人ひとりの髪質や、その日に創り上げるヘアスタイルに合わせて、最適な一本のブラシを選び出すこと。そして、使用後は必ず洗浄・消毒を行い、常に清潔で、最高の状態に保っておくこと。それは、お客様への安全と、最高の仕上がりをお約束するための、私たちの最低限の責務です。
何気なく使われているように見える一本のブラシにも、お客様への誠実な想いが込められています。ぜひ、次に理髪店を訪れた際には、その小さな名脇役たちの働きにも、少しだけご注目ください。