ヘアオイルを前髪に。べたつかせず、清潔感を保つための正しい使い方
髪全体の印象を大きく左右する、最も重要な部分。それが「前髪」です。この前髪の質感が少し違うだけで、その日の清潔感や、髪型全体の完成度は劇的に変わります。ヘアオイルを使って、前髪に自然な艶や束感を与えたい、と考える男性は少なくありません。しかし、同時に「オイルを付けたら、べたついてお風呂に入っていないように見えてしまった」「おでこが荒れてしまった」といった、苦い失敗を経験しやすい、非常にデリケートな部分でもあります。この記事では、前髪にヘアオイルを付ける際の、失敗しないための正しい使い方と、注意点について、理容師の視点から詳しく解説いたします。
なぜ前髪へのヘアオイル使用は、特に注意が必要なのか
まず、なぜ前髪へのオイルの使用は、他の部分に比べて格段に難易度が高いのでしょうか。その理由は、前髪が「おでこ」という、顔の中でも特に皮脂の分泌が盛んな部分に直接触れるからです。
髪に付けたオイルの油分と、おでこから分泌される皮脂が混ざり合うことで、前髪はすぐに重くなり、束になって割れやすくなります。これが、「べたつき」や「不潔な印象」の最大の原因です。また、オイルの種類によっては、毛穴を塞いでしまい、おでこの肌荒れや吹き出物を引き起こす可能性も考えられます。これらのリスクを回避するためには、特別な知識と技術が必要となるのです。
前髪にヘアオイルを使うことの利点
もちろん、正しく使うことができれば、前髪へのヘアオイル使用には多くの利点があります。まず、前髪の乾燥やパサつきを抑え、自然で健康的な艶を与えることができます。これにより、髪全体が手入れの行き届いた、品の良い印象になります。また、ワックスのように固めることなく、ごく自然な毛流れや、さりげない束感を作ることも可能です。特に、近年流行している、透け感のある軽やかな前髪を演出する際に、ヘアオイルは非常に有効な品となります。
べたつかないための、前髪への絶対的な塗り方
前髪をべたつかせず、美しく見せるためには、以下の手順を厳密に守ることが重要です。
まず、髪全体のお手入れや整髪を先に済ませてください。そして、その時点で手のひらに残っている、もはや「付いているか分からない程度」の、ごくごく微量のオイルを指先にだけ取ります。決して、新しくオイルを手に取ってはいけません。
次に、その指先で、前髪の「毛先」だけを、優しくつまむようにしてなじませます。決して、前髪の根元や、中間部分には触れないでください。あくまでも、質感を与えたい毛先の先端、数ミリの部分にだけ付ける、という意識が大切です。この手順であれば、前髪が重くなることを防ぎ、おでこへの付着も最小限に抑えることができます。
前髪に使うオイルの選び方
前髪に使うことを想定する場合、ヘアオイルの選び方も重要になります。言うまでもなく、べたつきにくく、さらっとした非常に「軽い質感」のオイルを選ぶことが絶対条件です。肌への影響も考慮し、できるだけ刺激の少ない、質の高い成分で作られた製品を選ぶことをお勧めします。サロンで扱う専門的な製品には、こうした繊細な使用場面まで考慮されて開発された、肌への優しさと高い質感表現を両立したものが多くあります。
まとめ
前髪は、その人の印象を決定づける、最も繊細で重要な部分です。ヘアオイルを上手に活用することで、その魅力を最大限に引き出すことができますが、一歩使い方を誤ると、逆効果にもなりかねません。基本は、「髪全体を整えた後に、手に残ったごく微量を、指先で毛先の先端にだけ付ける」。この鉄則を守ることが、失敗を避けるための最も確実な方法です。お客様の髪質や、目指す前髪のスタイルによって、最適なオイルの種類や、そのための究極のさじ加減は異なります。その答えを、ぜひ私たち髪の専門家にご相談ください。