「ニュアンスパーマがノーセットで決まらない」知恵袋の悩みに、専門家が答えます
「かけたか、かけていないか分からないくらいの、ごく自然な毛流れが欲しい」「朝、特別な整髪をしなくても、なぜかお洒落に見える髪型になりたい」。そんな理想の姿を求めて、「ニュアンスパーマ」に挑戦された、あるいは、これから挑戦しようと考えていらっしゃる男性は、少なくないことと存じます。しかし、その一方で、「実際に試してみたけれど、現実はなんだか違う」と感じ、インターネットの質問サイトなどで、同じような悩みを持つ方々の声を探されたご経験はございませんか。「結局、整髪しないとただのくせ毛に見える」「朝起きると、意図しない方向に髪がハネてしまっている」。そこには、多くの方が抱える、共通の、そして切実な声が溢れています。今回は、そんな「理想と現実のギャップ」がなぜ生まれてしまうのか、その原因を解き明かし、本当の意味で「ノーセットで決まるニュアンスパーマ」を手に入れるための考え方を、私たち髪の専門家として、お話しさせていただきます。
ご質問①「ノーセットだと、ただのくせ毛にしか見えません」
これは、ニュアンスパーマに関するお悩みの中で、最も本質的なご質問かもしれません。そのように感じられてしまう最大の原因は、かけられたパーマが、髪型全体の「シルエット」と美しく調和していない可能性が考えられます。ニュアンスパーマは、あくまで髪の「質感」や「毛流れ」に、さりげない変化を与えるためのものです。その土台となるカットが、お客様の頭の骨格に合っていなければ、せっかくの繊細なパーマも、残念ながらただの無秩序な動きに見えてしまいます。計算され尽くした美しいシルエットの中に、意図された、ごく自然な動きがあって初めて、それは周りの人々から「お洒落なパーマスタイル」として認識されるのです。
ご質問②「朝起きると、変な方向にハネてしまいます」
せっかくかけたパーマが、朝になると意図しない方向にハネてしまい、結局、整髪に時間がかかってしまう。これでは本末転倒です。これには、主に二つの原因が考えられます。一つは、日々の「髪の乾かし方」です。髪が半乾きのまま寝てしまうと、枕との摩擦などによって、簡単に意図しない癖がついてしまいます。お風呂上がりには、まず髪の根元をしっかりと乾かすことが、基本中の基本となります。しかし、より根本的な原因は、お客様の「髪の生え癖を無視してかけられたパーマ」にあるかもしれません。髪が本来向かいたい方向と、パーマによって曲げたい方向が喧嘩していると、時間が経つにつれて髪は元の位置に戻ろうとしてしまい、それが「ハネ」となって現れるのです。
ご質問③「理容室での仕上がりと、家での仕上がりが全然違います」
これも、非常によくお聞きするお悩みです。私たち専門家は、日々多くのお客様の髪に触れる中で、お客様一人ひとりの髪質や生え癖を深く理解し、その髪が最も美しく見える乾かし方を熟知しております。その「プロの乾かし方のこつ」が、お客様に十分に伝わっていない、という意思疎通の問題があるかもしれません。しかし、より本質的には、そもそも施されたカットやパーマの設計自体が、お客様ご自身での再現が難しい、高度な整髪を前提としたものである可能性も考えられます。「ノーセット」で過ごしたいというご希望がおありの場合は、その大切な想いを、担当者に明確にお伝えいただくことが、何よりも重要です。
本当の「ノーセットパーマ」とは何か
ここまでお話ししてきたことを踏まえると、本当の意味で「ノーセットで決まるニュアンスパーマ」とは、単にパーマを弱くかけることではない、ということがお分かりいただけるかと存じます。それは、お客様一人ひとりが持つ「骨格」「髪質」「生え癖」という三つの、かけがえのない個性を、担当する理容師が深く、そして敬意をもって理解し、その上で、その髪が本来あるべき、最も美しい状態へと、パーマの力を借りて、優しく導いてあげること。それこそが、その本質なのです。それは、お客様と理容師との、深い信頼関係の上に成り立つ、一つの共同作業とも言えるでしょう。
理想を叶えるための、理容室での伝え方
理想の髪型を、失敗なく手に入れるためには、ぜひご自身の想いを、正直な言葉でお聞かせください。理想とする髪型の写真などをお見せいただくことは、もちろん大変有効です。その上で、「普段、整髪はほとんどしません。この写真のような雰囲気を、髪を乾かすだけで再現できるようにしたいのですが、私の髪質で可能でしょうか」といったように、ご自身の普段の習慣と、その実現可能性について、セットでご相談いただくのが、最も良い方法です。
その「なんとなく違う」を、最高の「これだ」へ
ニュアンスパーマに関する多くの「理想と現実のギャップ」は、決して、お客様ご自身のせいではございません。それは、お客様が持つ素晴らしい個性と、そこに施された技術との間に、ほんの僅かな、しかし決定的なズレがあることから生まれるのです。インターネットで答えを探し続ける前に、ぜひ一度、あなたの髪の個性を、誰よりも深く理解しようと努める、誠実な理容師に、そのお悩みを打ち明けてみてはいかがでしょうか。私たちは、お客様が抱えるその「なんとなく違う」という繊細な感覚に、真摯に耳を傾け、それを最高の「これだ」という心からの喜びに変えるため、持てる限りの技術と知識で、誠心誠意お応えしたいと願っております。