ノーセットの印象は襟足で決まる。清潔感を生む後ろ姿の秘訣
ご自身の髪型を考える際、多くの方は前髪の長さや横から見たときのシルエットに意識を向けがちです。しかし、実はその人の全体的な印象、特に清潔感を大きく左右しているのが、ご自身では直接見ることのできない「襟足」の部分なのです。とりわけ、整髪料を使わない「ノーセット」の髪型の場合、この襟足の状態が、髪型全体の完成度を決定づけると言っても過言ではありません。今回は、整髪なしでも後ろ姿に自信を持つための、襟足の考え方と整え方の秘訣についてお話しいたします。
なぜ襟足がそれほど重要なのか
襟足は、髪型における土台のような役割を担っています。この部分がすっきりと美しく整えられているだけで、髪全体はもちろんのこと、その人自身にまで手入れが行き届いているという、きちんとした印象を与えます。また、襟足の形は、後頭部の丸みを視覚的に強調したり、首筋を長く見せたりする効果もあり、髪型全体のシルエットを美しく見せる上で欠かせない要素です。整髪料によるごまかしが効かない「ノーセット」の髪型だからこそ、素の状態である襟足の美しさが、より一層その人の印象を左右するのです。
清潔感のある襟足の形とは
一口に襟足と言っても、その整え方にはいくつかの考え方があります。例えば、刈り上げずに、首筋に沿うように毛先を自然になじませる形は、柔らかくナチュラルな印象を与えます。一方で、潔く刈り上げる形は、非常に爽やかで活動的な雰囲気を演出し、特に短い髪型との相性が良いでしょう。その方の好みや全体の髪型との調和を考えながら、最適な形を選ぶことが大切です。いずれの形であっても、清潔感を保つことが共通の目的となります。
避けるべき襟足の状態
どのような形を目指すにしても、避けるべき襟足の状態というものがあります。最も清潔感を損なうのは、手入れがされず、不揃いに伸びてしまった髪が洋服の襟にかかっている状態です。また、髪の厚みが残りすぎている襟足も、全体として野暮ったい印象を与え、せっかくの髪型のバランスを崩してしまいます。自分では見えない部分だからこそ、定期的な手入れを心がけることが、好印象を保つための鍵となります。
鍵を握るのは生え癖を見極める技術
理想的な襟足を創り出す上で、最も重要となるのが、お客様一人ひとりが持つ「髪の生え癖」を正確に見極めることです。襟足は、髪が上に向かって生えていたり、渦を巻いていたりと、特に癖が出やすい部分です。その癖に逆らって無理に形を作ろうとすると、時間が経った時に髪が浮いてしまったり、まとまりが悪くなったりする原因となります。生え癖の流れを読み、それに沿って自然に収まるようにカットを施すこと。この専門的な技術こそが、整髪をしなくても長時間美しい形を保つ襟足を創り出すのです。
理容室で理想の襟足を伝えるには
理容室で襟足についてご要望を伝える際には、まず「襟足をすっきりと見せたい」「清潔感が出るようにしてほしい」といった、ご自身のなりたいイメージをお聞かせください。その上で、「刈り上げても良いか、自然な長さを残したいか」といった具体的な好みや、お仕事上の制約などがあれば、ぜひお伝えいただきたく存じます。最終的には、私たち専門家がお客様の生え癖を拝見し、最も適した形をご提案させていただく、という形が理想的です。
後ろ姿へのこだわりが、真の自信を生む
整髪をしない髪型の良し悪しは、ご自身では見えない襟足に懸かっていると言っても過言ではありません。美しく整えられた襟足は、清潔感という好印象を与えるだけでなく、その方の美意識の高さを感じさせ、ご自身の後ろ姿に対する自信をもたらしてくれます。お客様一人ひとりの生え癖と真摯に向き合い、見えない部分までこだわり抜いて仕上げることこそ、私たちの最も大切な仕事だと考えております。