毛染めは「月一」でも大丈夫?誠実な理容師が語る、髪と頭皮を守るメンテナンス術
伸びてきた根元の白髪や、ハイトーンカラーと地毛との境目。「月に一度」は髪を染め直さないと、どうしてもご自身のスタイルが気になってしまう。そのようにお感じになり、月一でのヘアカラーを習慣にされている、あるいはこれからご検討されている男性も、少なくないかと存じます。常に身だしなみを完璧に整えていたいという、その素晴らしい美意識の一方で、「これほど頻繁に染め続けて、大切な髪や頭皮は本当に大丈夫なのだろうか」というご不安が、心のどこかにあるのではないでしょうか。今回は、「月一」という頻度のヘアカラーと、いかにして安全に、そして賢く付き合っていけるのか、その秘訣について私たちプロの視点から詳しく解説させていただきます。
「月一」カラーが必要となる、主な理由
まず、どのような場合に「月一」という比較的短いスパンでのヘアカラーが必要となるのでしょうか。その最も大きな理由として挙げられるのが、「白髪のメンテナンス」です。私たちの髪は、個人差はございますが、一ヶ月におよそ一センチから一センチ半ほど伸びてまいります。そのため、白髪染めをされている方にとりましては、一ヶ月も経つ頃には、根元から生えてきた新しい白髪がはっきりと目立ち始めてしまいます。若々しく、清潔感のある印象を常に維持するためには、この月一という頻度が、一つの重要な目安となってまいります。また、ブリーチを伴うような明るいハイトーンカラーをされている場合も、根元から伸びてくる黒い地毛との色の差が非常に目立ちやすいため、スタイルの完成度を保つためには、同様に月一でのメンテナンスが理想的となるケースが多くございます。
月一で染める際に、絶対に守るべき鉄則
それでは、月一という頻度でヘアカラーを行う際に、お客様の髪と頭皮の健康を守るために、絶対に守らなければならない鉄則とは何でしょうか。それは、「毎回、髪の毛の全体を染めない」という、極めてシンプルな、しかし最も重要なルールです。月一という短いスパンで、毎回毛先までカラー剤を塗布し続けてしまうことは、髪が回復する間もなく、ダメージを際限なく蓄積させてしまう行為に他なりません。
月一のメンテナンスは、あくまで新しく生えてきた「根元の部分だけ」に限定するべきなのです。この「リタッチ」と呼ばれる技術に徹することで、既に染まっている中間から毛先部分への不要なご負担を完全に避けることができます。そして、毛先の色落ちが気になってきたタイミング、例えば三ヶ月から四ヶ月に一度といった、より長いスパンで初めて、髪全体の色味を補充する。この計画的なアプローチこそが、お客様の髪の健康と、美しいヘアカラーを両立させるための鍵となるのです。
なぜセルフでの「月一リタッチ」は危険なのか
このリタッチという技術ですが、ご自身で、新しく生えてきた根元の部分「だけ」に、以前染めた部分との境目を自然に繋げながら、薬剤を正確に塗布するという作業は、実はプロでも非常に神経を使う、難易度の高い技術です。多くの場合、薬剤が必要以上に毛先にはみ出してしまい、意図せずして毛先にダメージを重ねてしまったり、あるいは、境目がくっきりと線のようなムラになってしまったりと、失敗のリスクが非常に高いのです。頻度が高いからこそ、一回一回の施術の精度が、一年後の髪の状態を大きく左右いたします。
髪と頭皮をいたわる、プロならではの月一カラー
私たちプロが、お客様に月一でのカラーリングをご提供する際には、技術だけでなく、髪と頭皮をいたわるための、様々な配慮を凝らしております。頻繁な施術でご負担がかかりがちな頭皮を、施術前に必ず専用の保護オイルなどで、薬剤の刺激からしっかりと守ります。そして、お客様の髪の状態を毎月診断させていただき、その時々のコンディションに合わせて、必要最低限のパワーを持つ、最も優しい薬剤を的確に選定いたします。施術後には、髪の内部に残留しがちなアルカリ成分を専用の処理剤で完全に取り除き、失われた栄養分を補給するサロントリートメントを併せて行うことで、月一で染めていても、ダメージを感じさせない、健康的な髪へと導きます。
「月一」を、美しさを育むための習慣へ
「月一」のヘアカラーは、正しい知識と、適切な方法で行えば、決して髪をただ傷めるだけのものではございません。むしろ、常に最高の状態をご自身で維持するための、美しく、そして賢い「習慣」となり得るのです。そのためには、お客様の髪の状態を毎月診断し、最適な施術とケアを計画的にご提案できる、信頼できる「髪の主治医」のような理容師の存在が不可欠です。あなたの「常に美しくありたい」という素晴らしい想いを、最も安全で、最も持続可能な形でサポートさせてください。私たちと一緒なら、「月一」のヘアカラーは、あなたの髪を健やかに育むための、楽しみな時間に変わるはずです。