毛染めはシャンプーしてから?誠実な理容師が教える、染める前の正しい準備
ヘアカラーをされる当日の朝、「髪をきれいさっぱりと洗い流してから染めた方が、薬剤も浸透しやすいだろう」と、念入りにシャンプーをされるべきか否か、お悩みになったご経験はございませんか。お客様が良かれと思って行ってくださったそのシャンプーが、実はヘアカラーの美しい仕上がりや、お客様ご自身の大切な頭皮の健康に、予期せぬ影響を与えてしまう可能性があるとしたら、驚かれるかもしれません。今回は、多くの方が疑問に思われる「染める前のシャンプー」の是非と、その科学的な理由について、私たちプロの視点から分かりやすく、そして詳しく解説させていただきます。
原則として「染める直前のシャンプー」は不要です
まず、皆様が最もお知りになりたいであろう結論から、単刀直入にお話しいたします。ワックスなどが大量に付着しているといった特別な場合を除き、ヘアカラーの直前にご自身でシャンプーをしていただく必要は、基本的にはございません。むしろ、多くの場合において、「シャンプーをしないままの状態」の方が、ヘアカラーの施術にとっては好ましいのです。これから、なぜシャンプーをしない方が良いのか、その具体的な理由についてご説明いたします。
なぜ染める前のシャンプーを推奨しないのか
私たちが、染める直前のシャンプーを推奨しないのには、お客様の頭皮と髪を守るための、明確な理由がございます。その最大の理由は、頭皮が本来持つ「天然の保護膜」を維持するためです。私たちの頭皮は、日々ごく自然に皮脂を分泌しております。この皮脂が、目には見えない薄い膜となって頭皮の表面を覆い、乾燥や外部からの刺激から地肌を守る、いわば「天然のバリア」として、非常に重要な役割を果たしてくれています。染める直前にシャンプーをしてしまいますと、この大切な皮脂膜まで根こそぎ洗い流してしまい、カラー剤の化学的な刺激を、無防備な頭皮で直接受け止めることになってしまうのです。これが、施術中のかゆみや、ヒリヒリとした刺激感に繋がる可能性があるのです。
では、スタイリング剤が付いている場合はどうするべきか
もちろん、ワックスやヘアオイル、あるいはヘアスプレーといったスタイリング剤が髪に多量に付着している場合には、薬剤の均一な浸透を妨げてしまう可能性がございます。しかし、そのような場合であっても、ご自身でゴシゴシとシャンプーをして頭皮に不要な刺激を与えてしまうよりは、そのままの状態でお気兼ねなくサロンにお越しいただく方が、結果としてお客様のためになると私たちは考えております。私たちプロは、お客様の髪と頭皮の状態を拝見した上で、もし施術の妨げになるほどのスタイリング剤が付着していると判断した場合には、頭皮への負担が最も少ない特別な方法で、施術直前に軽く汚れだけを落とすといった、最適な対応をとることが可能です。どうぞ、ご自身の判断で対処なさらず、まずはそのまま私たちにご相談ください。
サロンへお越しいただく際の、最も理想的な髪の状態
それでは、サロンへお越しいただく際に、最も理想的な髪の状態とはどのようなものでしょうか。それは、「前日の夜にシャンプーを済ませていただき、当日は何もつけずに、髪が完全に乾いた状態」でお越しいただくことです。これにより、頭皮には適度な皮脂膜が形成されて外部の刺激から守られ、かつ髪は清潔で薬剤が浸透しやすいという、ヘアカラーにとって最高のコンディションが整います。もちろん、お仕事の都合などで、この通りにしていただくのが難しい場合もあろうかと存じますので、どうぞ過度に気になさらないでください。どのような状態でお越しいただいたとしても、私たちがプロとして、その状況下で考えうる最善の対応をさせていただきます。
最高の仕上がりは、万全の準備から
美しいヘアカラーは、髪に薬剤を塗布する技術そのものだけでなく、その前の、お客様の髪と頭皮を最高のコンディションに整えるという、「万全の準備」があってこそ、初めて実現されるものです。シャンプーをするかしないか、という一見すると小さな判断の一つにも、お客様の安全と仕上がりの美しさを左右する、専門的な理由が隠されております。そのような細やかな判断の全てを、どうぞ私たちプロにお任せいただけないでしょうか。お客様がサロンの扉を開けてくださったその瞬間から、私たちの仕事は始まっております。最高の準備をもって、あなた様をお迎えいたします。