ヘアカラーの色持ちは「シャンプー」で決まる。誠実な理容師が教える、正しい髪の洗い方
理容室で手に入れた、理想通りの美しい髪色。その輝きや色合いを、一日でも長く保ちたいと願うのは、ヘアカラーを楽しまれる全ての男性に共通するお気持ちかと存じます。その色持ちの寿命を左右する最も重要な鍵が、実は、皆様が毎日何気なく行っている「シャンプー」にあるとしたら、驚かれるでしょうか。今回は、ヘアカラーをされたデリケートな髪にとっての、正しいシャンプーの選び方、タイミング、そして洗い方の全てについて、私たちプロの視点から基本に立ち返り、詳しく解説させていただきます。
まずはここから、染めた後の「最初のシャンプー」
お客様が最もお悩みになるのが、染めた後、いつからシャンプーをして良いのか、というタイミングの問題かと存じます。ヘアカラー直後の髪は、髪の内部に浸透させた色素がまだ完全に定着しておらず、また、薬剤の作用で髪の表面を覆うキューティクルが開きやすい、非常にデリケートな状態にあります。この不安定な状態でシャンプーをしてしまいますと、色素が流れ出てしまう大きな原因となります。そのため、施術当日のシャンプーは極力お控えいただき、最低でも二十四時間は時間を空けていただくのが、美しい色を定着させるための、最初の、そして最も重要なステップです。
色持ちを左右する「シャンプー剤」の選び方
次に重要なのが、日々お使いになるシャンプー剤そのものの選び方です。市販されているシャンプーの中には、高い洗浄力を特徴とする製品もございますが、そうしたシャンプーは、残念ながら汚れだけでなく、髪の内部に留めておきたい大切な色素まで洗い流してしまう可能性がございます。ヘアカラーをされた髪には、髪や頭皮と同じ弱酸性で、洗浄成分が穏やかな「アミノ酸系」のシャンプーをお選びいただくのが最適です。さらに、色素の流出を防ぐ成分や、褪色の原因となる紫外線から髪を守る成分などが配合された「カラーヘア専用」のシャンプーは、色持ちを良くするための、まさに最良の選択肢と言えるでしょう。
特殊な色味を守る「カラーシャンプー」という選択肢
特に、アッシュ系やシルバー系といった寒色系のハイトーンカラーや、赤やピンクといった鮮やかな暖色系のカラーを楽しまれている方には、「カラーシャンプー」のご使用を強くお勧めいたします。これは、シャンプーそのものに色素が配合されており、日々の洗髪で失われていく色味を補いながら、髪を洗い上げることができるという優れた製品です。例えば、ハイトーンカラーの後に現れやすい黄ばみを抑えるための「紫シャンプー」などがその代表例です。これらの特別なシャンプーを週に数回のペースでお使いいただくことで、繊細な色合いをより長く、美しく保つことが可能になります。
毎日の実践で差がつく、正しい「髪の洗い方」
どのようなシャンプー剤をお選びいただくかと同じくらい大切なのが、日々の「洗い方」そのものです。まず、シャワーのお湯の温度ですが、熱いお湯はキューティクルを開かせ、色落ちを促進させる最大の原因となりますので、少しぬるいと感じる程度の温度が理想的です。シャンプー剤は、決して原液のまま髪に直接つけるのではなく、手のひらで空気を含ませるようにしっかりと泡立ててから、その豊かな泡で頭皮を優しくマッサージするように洗ってください。髪の毛同士をゴシゴシと擦り合わせる行為は、ダメージと色落ちの原因となりますので厳禁です。
意外な落とし穴、「染める前」のシャンプー
最後に、意外と知られていない、染める前のシャンプーに関する注意点です。カラーリングの直前にシャンプーをしてしまいますと、頭皮を外部の刺激から守ってくれている天然の皮脂膜まで洗い流してしまいます。その結果、カラー剤の刺激を地肌に直接感じやすくなってしまう可能性がございます。もし、整髪料などが付いておらず、髪が清潔な状態であれば、当日はシャンプーをせずにご来店いただく方が、お客様の頭皮へのご負担を軽減できる場合もございます。
シャンプーを見直すことが、美髪への第一歩
シャンプーという、毎日の何気ない習慣。しかし、その一つひとつの選択と行動が、サロンで手に入れたヘアカラーの価値を大きく左右するということを、ご理解いただけましたでしょうか。最高の仕上がりをご提供するだけでなく、その美しさを一日でも長く保つための、お客様一人ひとりの髪質やヘアスタイルに合わせた最適なシャンプー選びとケア方法をアドバイスさせていただくこと。それこそが、私たち誠実な理容師の大切な使命であると考えております。あなたの髪質に本当に合うシャンプー、知りたくありませんか?どうぞ、私たちにそのお手伝いをさせてください。