毛染めと「洗髪」の全知識。誠実な理容師が教える、染める前と後の新常識
サロンで手に入れた理想のヘアカラー。その美しい髪色を一日でも長く保ちたいと願う一方で、毎日の「洗髪」によって、大切な色が少しずつ流れ出てしまうのではないかと、ご不安に思われている方も少なくないことでしょう。髪を染めるという特別な行為の前、そして後において、私たちが普段何気なく行っている洗髪という習慣を、どのように考え、実践すれば良いのでしょうか。そこには、ヘアカラーの美しい仕上がりと、その後の色持ちを大きく左右する、いくつかの重要なポイントが存在いたします。今回は、皆様が抱く「洗髪」に関する様々な疑問に、私たちプロの視点から一つひとつ丁寧にお答えさせていただきます。
【染める前の洗髪】良かれと思ってが逆効果に?
まず、ヘアカラーをされる「前」の洗髪についてお話しいたします。多くの方が、髪を清潔な状態にしてから染めた方が良いのではないか、とお考えになるかと存じます。しかし、結論から申しますと、施術当日の直前にご自身で洗髪することは、基本的にはお勧めしておりません。その最大の理由は、シャンプーによって、頭皮を外部の刺激から守ってくれている天然の「皮脂膜」まで洗い流してしまうためです。この保護膜がない状態でカラー剤が頭皮に付着すると、刺激を感じやすくなったり、頭皮トラブルの原因になったりする可能性がございます。施術当日は、スタイリング剤などが付いていなければ、何もせず乾いた状態でお越しいただくのが最も理想的です。
【染めた後の洗髪】最初の24時間が運命を分ける
次に、ヘアカラーをされた「後」の洗髪についてです。施術直後の髪は、髪の内部に浸透させた色素がまだ完全に定着しておらず、また、キューティクルが開きやすい、非常にデリケートな状態にあります。この最も不安定な時期に洗髪をしてしまいますと、定着しきっていない色素が、お湯と共に大量に流れ出てしまうことになります。そのため、施術後、最低でも二十四時間は洗髪をお控えいただくこと。これが、美しい髪色を一日でも長く定着させるための、絶対的なルールであるとお考えください。この最初の我慢が、その後のヘアカラーの運命を大きく左右するのです。
美しい色を長く保つための、日々の洗髪術
染めたての時期を過ぎた後も、日々の洗髪方法を少し見直すだけで、色持ちは格段に向上いたします。まず、お湯の温度は、熱すぎるとキューティクルを開かせ、色落ちを早める最大の原因となりますので、三十八度前後の少しぬるいと感じるくらいが最適です。お使いになるシャンプー剤は、洗浄力が穏やかなアミノ酸系の製品や、カラーヘアのために処方された専用の製品をお選びいただくのが良いでしょう。そして、洗う際には、泡で頭皮を優しくマッサージするように洗い、髪の毛同士をゴシゴシと擦り合わせないようにご注意ください。
洗髪の最終工程「乾かす」ことの重要性
私たちプロは、「髪を乾かす」という工程までを含めて、「洗髪」であると考えております。髪が濡れたままの状態で過ごす時間は、キューティクルが開きっぱなしになった、最も無防備で危険な状態です。色素が流出しやすいだけでなく、雑菌が繁殖し、頭皮の健康を損なう原因にもなりかねません。洗髪後は、吸水性の高いタオルで優しくポンポンと叩くように水分を拭き取り、時間を置かずに、速やかにドライヤーで乾かすことを徹底してください。髪を乾かす前に、熱から髪を守り、失われた油分を補給する洗い流さないトリートメントを塗布することも、プロの現場では常識となっている、美しい髪色を維持するための大切な習慣です。
「洗髪」を制する者が、ヘアカラーを制する
ヘアカラーの美しさは、サロンでの施術が半分、そしてお客様ご自身による日々の「洗髪」が、残りの半分を担っていると言っても過言ではございません。染める前から染めた後まで、正しい洗髪の知識を身につけ、それを実践していただくことが、あなたのヘアカラースタイルを成功へと導く、最も確実な鍵となるのです。私たち誠実な理容師は、お客様に最高のカラーリング技術をご提供するだけでなく、その美しさを最大限に長持ちさせるための、一人ひとりの髪質に合わせた最適な洗髪方法まで、責任を持ってアドバイスさせていただくことをお約束いたします。