毛染めで後頭部がムラに?誠実な理容師が語る、見えない部分こそプロの技
ご自身でヘアカラーに挑戦された際に、鏡に映る正面や側面の仕上がりには満足していたのに、後日、ご家族やご友人から「後ろ、少しムラになってるよ」と不意に指摘され、がっかりされたご経験はございませんか。ご自身の目で直接確認することができない「後頭部」。この見えない部分をいかに美しく、そして均一に染め上げるかということこそ、ヘアカラー全体の成功を左右する、最も難易度の高い最後の関門と言えるでしょう。今回は、なぜ後頭部が染まりにくいのか、その理由と、プロが実践する鉄壁の技術について、詳しく解説させていただきます。
なぜ後頭部は染めムラになりやすいのか
多くの方がセルフカラーで直面する後頭部の染めムラですが、それにはいくつかの明確な理由がございます。まず、最もシンプルかつ最大の理由は、ご自身の目で直接見ることができず、手が届きにくいという物理的な問題です。合わせ鏡を駆使しても、頭の丸みに沿って、髪の根元から毛先まで薬剤を均一な厚みで塗布していく作業は、まさに至難の業と言わざるを得ません。その結果、無意識のうちに薬剤の塗布量が部分的に少なくなってしまったり、逆に特定の箇所に薬剤が溜まってしまったりと、薬剤の量が不均一になりがちです。特に、髪が密集している襟足付近は薬剤が内部まで浸透しにくく、塗り残しが発生しやすい代表的な箇所です。
ご自身で挑戦する際に、少しでもムラを減らすための工夫
それでもご自身で挑戦される際に、少しでもムラになるリスクを減らすための工夫はございます。まず大切なのは、染め始める前の「ブロッキング」です。コームの柄などを使って、後頭部の髪をあらかじめ上下左右に四分割、あるいはそれ以上に細かく分け、ヘアクリップなどで正確に留めておきます。そして、分けたブロックを一つずつ、丁寧に塗り進めていくのです。一度に広範囲を染めようとせず、小さな範囲を確実に仕上げていくことが、塗り残しを防ぐための基本的な工夫となります。また、薬剤は決して惜しまず、ご自身が思っている以上にたっぷりと使用することも、ムラを防ぐためには重要です。
それでもプロの仕上がりには敵わない、決定的な理由
いくつかの工夫をご紹介いたしましたが、それでもなお、プロの仕上がりとの間には、越えがたい壁が存在します。その決定的な理由は、私たちプロは、お客様の後頭部をあらゆる角度から、自身の目で直接見ることができる、という極めてシンプルな事実にあります。私たちは、お客様一人ひとりの頭の丸みや骨格を瞬時に把握し、それに合わせて髪を数ミリ単位の薄さで正確にスライス(分け取り)しながら、薬剤を塗布していきます。この、一切の妥協ない丁寧な作業が、髪の根元一ミリの隙間もなく、薬剤を均一に浸透させることを可能にするのです。そして、どの部分にどれくらいの量の薬剤が必要で、どのくらいの力加減で塗布すれば最適かを、長年の経験で培った「指先の感覚」で判断しています。これは、決してマニュアル化することのできない、まさに職人としての技術そのものです。
あなたの後ろ姿に、プロの責任と自信を
ヘアカラーの本当の美しさや、その人の清潔感は、ご自身では見ることのできない「後ろ姿」にこそ、最も顕著に表れると私たちは考えます。染めムラのない、どこから見ても完璧な後頭部は、お客様への深い敬意の表れであり、自らの仕事に対する誇りの証です。私たち誠実な理容師は、お客様が、どのような角度から見られても常に自信を持てる、三百六十度どこから見ても美しいスタイルを創り上げることに、全力を注いでおります。ご自身ではどうにもならないその後頭部のお悩み、ぜひ一度、私たちプロフェッショナルにお任せいただけませんか。あなたの後ろ姿に、私たちの責任と自信をお約束いたします。