2025.08.25

毛染めの仕上がりは「ブラシ」で変わる。一本の道具にこだわる、プロの理由

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ご自宅でヘアカラーをされる際、付属の手袋やボトル式の容器で薬剤を塗布するのが一般的ですが、より美しい仕上がりを追求される方や、セルフカラーに慣れてこられた方の中には、プロが使用するような専門の「ブラシ（ハケ）」の導入を検討される方もいらっしゃるのではないでしょうか。「たかが道具一つで、本当に仕上がりが変わるのだろうか」と、その効果に半信半疑の方もいるかもしれません。

しかし、断言できるのは、この一本のブラシをどう選び、どう使いこなすかが、染まりムラを防ぎ、髪への無用なダメージを軽減する上で、実は極めて重要な役割を担っているという事実です。今回は、ヘアカラーの施術に不可欠な「ブラシ」という道具の重要性と、私達プロフェッショナルがなぜこの道具に、そしてその使い方に徹底的にこだわるのか、その理由について深く掘り下げてまいります。

Contents

なぜプロフェッショナルは「ブラシ」を選ぶのか
ヘアカラーブラシの基本的な使い方
その一振りに込められた、プロの緻密な技術
最高の道具は、最高の技術があってこそ

なぜプロフェッショナルは「ブラシ」を選ぶのか

私達が、ヘアカラーの施術において、必ず専門のブラシを使用するのには、お客様に最高の仕上がりをご提供するための、明確な理由があります。

その最大のメリットは、薬剤を「正確に」そして「均一に」塗布できる点にあります。手やボトルでは不可能な、狙った場所に、狙った分量だけの薬剤を的確に置くことができるため、染める必要のない頭皮や毛先への不要な薬剤付着を避け、ダメージを最小限に抑えることが可能です。

また、ブラシの柄の部分（テイル）を使って髪を数ミリ単位の薄い毛束（スライス）に分け取りながら塗布することで、髪一本一本の根元から毛先まで、薬剤を均一な厚みで行き渡らせることができます。これこそが、セルフカラーで最も起こりがちな染まりムラを防ぎ、どこから見ても美しい、完璧に均一な髪色を実現するための、最も重要な基本技術なのです。

ヘアカラーブラシの基本的な使い方

それでは、このヘアカラーブラシは、どのように使うのが基本となるのでしょうか。一般的なブラシは、薬剤を塗布するための「ブラシ部分」と、髪を分け取ったり、塗布した薬剤を馴染ませたりする「コーム（あるいは、柄の先端であるテイル）」が一体化した形状をしています。

まず、コームやテイルの部分を使い、頭皮に対して垂直に筋を入れるようにして、塗布したい部分の髪を薄く正確に分け取ります。次に、ブラシ部分に薬剤を適量とり、分け取った髪のパネル（毛束）の根元部分に、ブラシを少し寝かせるような角度で、優しく薬剤を「置く」ように塗布します。そして、ブラシを毛先へと滑らせ、最後にコーム部分を使って、塗布した薬剤を髪全体に優しく馴染ませていく。この一連の動作を、頭全体に、スピーディーかつ正確に繰り返していくのが基本的な流れとなります。

その一振りに込められた、プロの緻密な技術

私達プロフェッショナルは、この一連の動作を、決して機械的に繰り返しているのではありません。ブラシを持つその手の一振り、ひと刷毛には、お客様の髪を最高の状態に仕上げるための、緻密な計算と、長年の経験に裏打ちされた繊細な判断が込められています。

例えば、お客様の髪質や使用する薬剤の浸透性を見極め、分け取るスライスの厚さを、数ミリ単位で常に調整しています。また、根元にしっかりと薬剤を浸透させたい時と、毛先に優しく色味を補給したい時とでは、ブラシを髪に当てる「角度」や「圧力」を、指先の感覚だけで絶妙にコントロールしています。さらに、髪のダメージレベルや染まりやすさに応じて、ブラシに取る薬剤の「量」さえも、一刷毛ごとに微調整しているのです。これらは、一朝一夕では決して身につかない、身体で覚えた感覚的な技術であり、決してマニュアル化することのできない、プロフェッショナルの領域と言えるでしょう。