その「気遣い」、もしかして「自己中」だと思われていませんか?
「良かれと思って、やったのに…」
相手のためを思ってしたはずの親切が、なぜか喜ばれなかったり、むしろ少し煙たがられたり。そんな、少しほろ苦い経験はありませんか。
「相手のため」を思ったはずの温かい**「気遣い」は、ほんの少しのボタンの掛け違いで、独りよがりで、相手を追い詰める「自己中」**な振る舞いへと姿を変えてしまうことがあります。その危うく、そして決定的な境界線は、一体どこにあるのでしょうか。
この記事では、その境界線を探りながら、本当に相手の心に響く「気遣い」の本質について、一緒に考えていきたいと思います。
神一重。「気遣い」と「自己中」を分ける、たった一つのこと
では、相手に喜ばれる「気遣い」と、独りよがりな「自己中(おせっかい)」を分ける、決定的な違いとは何でしょうか。
それは、その行動の主語が「自分」なのか、それとも「相手」なのか、という一点に尽きます。
・自己中な気遣い(おせっかい)
主語は、常に「私」です。「私が、こうしてあげたい」「私の経験上、こうした方が良いはずだ」「こうすれば、相手は喜ぶだろう」。そこにあるのは、相手の気持ちを想像したつもりになっている、自分自身の価値観や欲求の投影です。
・本物の気遣い
主語は、常に「相手」です。「相手は、今どう感じているだろうか」「相手は、何を求めているだろうか」「相手にとって、最善の選択肢は何だろうか」。行動の前に、まず相手を徹底的に観察し、相手の価値観を尊重する。そして、相手に「NO」と言う自由、つまり「受け取らない自由」をも与える。それが、本物の気遣いです。
あなたはどっち?「自己中な気遣い」の具体例
私たちは、善意から、無意識のうちに「自己中な気遣い」をしてしまっていることがあります。あなたにも、身に覚えはありませんか。
・良かれと思って、頼まれてもいないアドバイスを長々としてしまう。
→相手は、ただ話を聞いてほしかっただけかもしれません。
・相手の好みを聞かずに、「これが絶対良いから」と自分のセンスでプレゼントを選ぶ。
→相手には、相手の好みや事情があります。
・落ち込んでいる友人を励まそうと、無理やり明るい場所に連れ出そうとする。
→相手は、今はただ一人で静かに過ごしたいのかもしれません。
相手を思う気持ちが強い人ほど、この罠に陥りやすいのです。
プロの仕事における「気遣い」と「自己中」
そして、この「気遣い」と「自己中」の差は、私たちのようなプロフェッショナルのサービス現場において、お客様の満足度を天国と地獄ほどに分け隔てます。
例えば、自己中心的な理容師は…
お客様の要望もそこそこに、「いや、お客様の髪質だと、こっちのスタイルの方が絶対に似合いますから」と、自分の得意な技術や、流行のスタイルを強く押し付けてしまうかもしれません。あるいは、自分が話したいからと、お客様が明らかに疲れている様子なのに、一方的にマシンガントークを続けてしまうかもしれません。主語は、常に「私(理容師)」です。
一方、本物の気遣いができる理容師は…
まず、お客様の要望や悩みを、遮ることなく全て受け止めます。その上で、「そのスタイルも非常に素敵ですね。もしよろしければ、もう一つのご提案として、お客様の骨格をより魅力的に見せる、こちらのスタイルはいかがでしょうか。もちろん、最初の案が一番お好みでしたら、そちらを最高の形で実現します」。
**提案はすれども、決定権は常にお客様にある。**主役が誰であるかを、決して忘れません。お客様が静かに過ごしたいご様子なら、沈黙を尊重し、心地よい距離感を保ちます。
なぜ、私たちの「気遣い」は「自己中」に陥らないのか
私たちが、この「自己中」という罠に陥らないように、全てのサービスの土台に置いているもの。それは、**徹底した「カウンセリング(傾聴)」**と、**お客様一人ひとりへの深い「リスペクト」**です。
私たちは、お客様を「私たちが格好良くしてあげる」対象だとは、決して考えていません。お客様自身の中にすでにある「なりたい自分」を、私たちの技術や知識という道具を使って、最大限に引き出すお手伝いをさせていただく。私たちは、あくまでお客様の**「パートナー」**であり、サポーターなのです。
あなたが「主役」になれる場所へ
最高のサービスとは、提供者のこだわりや自己満足を押し付けるものではありません。それは、どこまでもお客様を物語の「主役」として考え抜き、その人が最も輝くための、黒子に徹した本物の「気遣い」に満ちたものです。
このサロンでは、理容師が主役ではありません。主役は、あなたです。
あなたの想いを、理想を、そして言葉にならない悩みさえも、私たちは全力で受け止め、形にすることをお約束します。私たちの独りよがりではない、あなたのためだけに存在する、オーダーメイドの気遣いを、ぜひ一度、体験しに来てください。