髪をすけば、ボリュームは減る?増える?プロが操る、自在の立体感
ヘアスタイルの印象を決定づける、最も重要な要素の一つ、それが「ボリューム」です。ある人は、その多すぎるボリュームをどうにかして抑えたいと願い、またある人は、その足りないボリュームに、毎朝ため息をついています。そして、多くの方が、「髪をすく」という技術を、単に「ボリュームを“減らす”」ためだけのものだと、そうお考えかもしれません。しかし、もし、その全く同じ「梳く」という技術を応用することで、驚くことに、髪に「ボリュームを“出す”」ことも可能だとしたら、あなたはどう思われるでしょうか。今回は、髪のボリュームを自由自在に操る、私たちプロの理容師だけが知る、技術の真実についてお話しさせていただきます。
まずは王道。「ボリュームを“減らす”」ための梳き方
まず初めに、皆様がよくご存知の、ボリュームを「減らす」ための梳き方についてご説明いたします。これは、ヘアスタイル全体のシルエットを、よりシャープに、そしてよりコンパクトに見せるための、最も基本的な技術です。私たちプロは、お客様一人ひとりの骨格を見極め、スタイル全体の膨らみの直接的な原因となっている、髪の「内側」の部分だけを、的確に、そしてお客様の目には見えないように、丁寧に梳いていきます。これにより、髪表面の美しい長さやツヤは一切損なうことなく、物理的な髪の密度を、計画的に下げることで、理想のボリュームダウンを実現します。特に、サイドが膨らんで、頭が大きく見えがちなお悩みをお持ちの方には、絶大な効果を発揮する技術です。
そして、プロの真骨頂。「ボリュームを“出す”」ための梳き方
一方で、私たちプロは、「髪を梳く」ことで、意図的に、そして計算ずくで、髪にボリュームを「生み出す」こともできます。これは、髪が持つ構造と性質を、深く、そして完全に理解していなければ決して不可能な、まさにプロの真骨頂とも言える高度な技術です。
① 根元を支える「土台」を創る
例えば、髪が細く、トップがペタッとしやすい、とお悩みのお客様の場合。私たちは、そのボリュームが欲しい部分の、髪の根元近くの、さらにその「内側」に、ごく少量の、目には見えない「短い毛」の土台を、緻密な計算の上で創り込みます。この、内側に仕込まれた短い毛が、まるで建築物の基礎のように、上からかぶさる長い髪を、ふわりと、そして力強く支えてくれるのです。これにより、ご自宅でドライヤーで乾かすだけで、まるでパーマをかけたかのような、自然で、そして持続性のある立ち上がりが生まれます。
② 毛先に「動き」を与えて、豊かに見せる
また、毛先を中心に丁寧に梳き、軽やかさと動きを与えてあげることで、スタイル全体に自然な空気感が生まれ、物理的な髪の量は変わらなくても、見た目の印象としてのボリューム感を、より豊かに見せる、という視覚効果を生み出すことも可能です。
究極のゴールは「ボリュームの、完璧なコントロール」
最高のメンズヘアスタイルとは、単にボリュームが多いか少ないか、という単純な問題ではございません。それは、抑えるべき部分はシャープに抑えられ、そして出すべき部分はふんわりと出ている、そのメリハリの効いた、完璧なバランスの上に成り立っています。私たち誠実な理容師の仕事とは、お客様の骨格と髪質を正確に診断し、お客様の頭の、どの部分で「ボリュームダウンの梳き」を、そしてどの部分で「ボリュームアップの梳き」を施すべきかを、ミリ単位で設計し、実行することなのです。
あなたのボリュームの悩みを、最高のオーダーに変える
この複雑な技術を、お客様がオーダーの際に、詳細にご指定いただく必要は全くございません。お客様には、どうか、あなたのありのままのお悩みを、私たちにお聞かせください。「サイドは膨らむけれど、トップはペタッとしてしまうのが悩みなんです」。お客様からのその一言だけで、私たちプロには十分です。その言葉の中に、私たちは、「サイドは“減らす”梳きが必要で、トップには“出す”梳きが必要だ」という、明確な設計図を見出すことができるのです。
「髪をすく」という一つの技術は、ボリュームを減らすためだけのものではありません。それは、ボリュームを減らし、増やし、そして移動させることさえ可能な、あなたのヘアスタイルに、理想の立体感を与えるための、極めて高度で、そして万能なデザインツールなのです。あなたがこれまでコンプレックスに感じていた、髪のボリュームに関するあらゆる悩み。それは、プロの正しい技術にかかれば、必ず解決することができます。ボリュームを、長年の悩みの種から、あなたの個性を、誰よりも輝かせる最高の武器へ。そんな劇的な変化を、ぜひ私たちのサロンでご体験ください。