「髪をすく」ことの本当の意味。プロが教える、様々なカット技術との決定的「違い」
ヘアカットは、皆様が想像する以上に、実に奥深い世界です。私たちプロの理容師は、お客様の理想のヘアスタイルを形にするために、一本のハサミを駆使し、実に多彩な技術を、その一瞬一瞬で使い分けています。その中でも、特に多くの方が疑問に思われるのが、「髪をすく」という技術と、他の様々なカット技術との、はっきりとした「違い」についてではないでしょうか。「髪を切る」のと、一体何が違うのか。「レイヤーを入れる」のとは、どう違うのか。そして、その仕上がりは、担当する技術者によって、どのように「違って」くるのか。今回は、そんな皆様の尽きない疑問に、一つひとつ丁寧にお答えしてまいります。
最大の違い:「切る」のは“形”、「梳く」のは“質感”
まず、最も基本的で、そして最も重要な「違い」についてご説明いたします。私たちが行う「切る(カット)」という行為は、お客様がご希望されるヘアスタイルの、全体の「長さ」と、大まかな「形(シルエット)」を決定づける、“骨格”を創るための技術です。それは、まさにヘアスタイル全体の、揺るぎない土台となる設計図にあたります。一方で、「梳く」という行為は、その創り上げられた骨格の内側に働きかけ、髪の毛の量や、一本一本の重なり方を繊細に調整し、スタイル全体の“質感”や“空気感”をコントロールするための技術です。この「梳く」というひと手間によって、創られたスタイルに、初めて軽さや動きといった、豊かな表情が宿るのです。
似て非なる技術:「梳く」と「レイヤー」の違い
お客様の中には、「髪をすく」ことと「レイヤーを入れる」ことを、同じように髪を軽くするための技術だとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。この二つは、似ているようでいて、その目的が異なります。「レイヤー」とは、髪の表面と内側で、長さに明確な“段差”をつける技術であり、その主目的は、スタイルに大きなくびれや丸みといった、「形の変化」を生み出すことにあります。対して「梳く」とは、髪の長さをほとんど変えることなく、毛束の“中の量”を減らす技術であり、その主目的は、ボリュームを抑えたり、毛先に軽さを与えたりといった、「量の変化」にあります。誠実な理容師は、お客様のなりたいイメージに合わせて、この二つの技術を巧みに組み合わせ、理想のスタイルを創り上げていきます。
決定的な違い:「上手い梳き方」と「下手な梳き方」
そして、お客様が最も懸念されるのが、技術者による仕上がりの「違い」でしょう。残念ながら、そこには明確な差が存在します。いわゆる下手な梳き方とは、お客様の骨格や髪質を考慮することなく、ただやみくもに髪の量を減らすだけの「無計画な間引き」です。その結果、髪は本来のツヤを失い、パサつき、まとまりのない、悲しいスタイルになってしまいます。一方で、上手い梳き方とは、まさしく「計算されたデザイン」にほかなりません。私たちプロは、お客様の頭の形が最も美しく見えるよう、残すべき重さと、取り除くべき重さをミリ単位で計算しています。髪の表面のツヤは決して奪うことなく、髪の内側から骨格を補正するように、的確に量を調整する。この、お客様の目には直接見えない部分への、どこまでも深いこだわりこそが、仕上がりの決定的な「違い」を生むのです。
違いを理解し、最高のオーダーをするために
ここまで、様々な「違い」について解説してまいりましたが、お客様がこれらの専門的な知識を、すべて完璧にご理解いただく必要は全くございません。お客様にしていただきたい、最も大切なこと。それは、技術の名前(「梳いてください」「レイヤーを入れてください」など)を伝えることよりも、「あなたが、どのようになりたいか」という、ゴールイメージを私たちと共有していただくことです。「重さを取って、もっと動きのあるスタイルにしたい」「サイドの膨らみを抑えて、全体のシルエットを綺麗に見せたい」。お客様のその言葉こそが、私たちプロにとって、最高の道しるべとなるのです。
「髪をすく」という一つの技術にも、他の技術との明確な「違い」があり、そして何よりも、それを扱う私たち技術者によって、その結果に天と地ほどの「違い」が生まれます。その「違い」が分かる、本物の技術を、ぜひ私たちのサロンでご体験ください。お客様一人ひとりの髪質と骨格、そして理想のイメージに合わせて、最適な技術を組み合わせ、最高のスタイルを創り上げることを、誠実にお約束いたします。