パーマの成否は「髪の梳き方」で決まる。計算されたカールを生む、プロの連携術
ご自身のヘアスタイルに、柔らかな動きや、華やかで立体的な表情を与えてくれる、魔法のような技術「パーマ」。そして、髪の重さを取り除き、軽やかさと日々の扱いやすさを生み出す、繊細な技術「髪をすく」。この、メンズヘアをデザインする上で欠かすことのできない二つの技術が、最高の形で組み合わさった時、あなたのヘアスタイルは、これまで経験したことのない、無限の可能性を秘めることになります。しかし、その一方で、「髪をすきすぎて、パーマが綺麗にかからなかった」「パーマをかけたら、梳かれた部分がチリチリに広がってしまった」といった、悲しい失敗談が後を絶たないのも、また事実なのです。
まずは結論。パーマの前に、「正しく」髪をすく
お客様から最も多く寄せられる、「髪を梳くのと、パーマをかけるのは、どちらが先なのですか?」というご質問。私たちプロの世界には、その問いに対する、一つの絶対的な原則がございます。それは、**「パーマをかける前に、パーマをかけた後のスタイルを完璧に予測し、そのための土台として、髪をカットし、そして正しく梳いておく」**ということです。なぜなら、パーマは髪にカールという大きな変化を与えることで、見た目の長さが少し縮み、そして全体のボリュームが、劇的に変化するからです。もし、パーマをかけた後に、そのバランスを考えずに髪を梳いてしまうと、せっかく美しく形成されたカールや、計算されたボリューム感が台無しになってしまうのです。
パーマのための「梳き」は、普通の梳きと何が違うのか
私たちプロは、パーマをかけられるお客様に対しては、通常のカットの際とは全く異なる、パーマの特性を最大限に活かすための、特別な「梳き方」を用いています。
① カールの「繋がり」を創る梳き方
パーマをかけた時、隣り合うカール同士が、喧嘩することなく、美しく、そして自然に重なり合うように、毛束と毛束の間の量を、あらかじめ緻密に調整します。この丁寧な下準備があることで、リッジ(カールの立体的な凹凸)がはっきりと効いた、まとまりのある美しいウェーブスタイルが生まれるのです。
② ダメージを避けるための梳き方
パーマが、髪にある程度の負担をかけてしまう施術であることも事実です。そのため、特にダメージを受けやすく、またカールの弾力にとって重要となる毛先などは、**梳きすぎずに、あえて戦略的に重さを残します。**この残された重さが、パーマによるパサつきを抑え、カールに、まるで生きているかのような「プリッ」とした弾力を与えてくれるのです。
③ ボリュームを「予測」する梳き方
お客様の髪質や、おかけするパーマの種類によって、どの部分が、どのくらいボリュームアップするか。私たちは、それを長年の経験から、施術前に正確に予測します。そして、その膨らむであろうと予測される部分の髪の内側だけを、あらかじめピンポイントで梳いておく。この未来を見据えた仕事によって、パーマ後のスタイルが爆発してしまうのを防ぎ、お客様の骨格に合わせた、理想のシルエットを創り出すのです。
パーマで失敗しないための、オーダーのヒント
お客様の理想のパーマスタイルを、最高の形で実現するために、ぜひ私たちに、あなたの想いをお聞かせください。「パーマをかけたい」というご希望は、カットを始める前の、最初のカウンセリングの段階で、必ずお伝えください。そして、どのようなカールの強さ、どのような質感を求めていらっしゃるのか、理想のヘアスタイルの写真などを共有していただくのが、最も確実な方法です。
誠実な理容師は、カットでパーマをデザインする
優れたパーマスタイルは、決してパーマ液やロッドの種類だけで決まるものではございません。その本当の完成度は、パーマをかける前の、カットと、そして「髪を梳く」という設計図の段階で、その9割が決まっているのです。私たち誠実な理容師の仕事とは、パーマという化学的な技術と、カットという物理的な技術、その両方を完璧に理解し、お客様の髪の上で、それらを最高の形で融合させることなのです。
カットで描いた緻密な設計図を、パーマという技術で、寸分の狂いもなく完成させる。そんな、計算され尽くした、本物のデザインを、ぜひ私たちのサロンでご体験ください。あなたの毎朝のスタイリングの常識が、きっと、そして劇的に変わるはずです。