髪を「伸ばす」なら、正しく「梳く」。理想のロングヘアへ導く、プロのメンテナンス術
新しい自分に出会うため、あるいは心に描いた憧れのヘアスタイルを実現するために、「髪を伸ばす」と固く心に決めた、その瞬間。そこから、長く、そして時には少々の忍耐を要する、特別な旅が始まります。特に、ヘアスタイルが中途半端な長さで、どうにもまとまりにくい“伸ばしかけ”の時期に、「この邪魔な重さや扱いにくさを、いっそのこと梳いてしまいたい。でも、梳いたら、ここまで頑張って伸ばした髪が短くなってしまうのでは…」という、もどかしいジレンマに、多くの男性が悩まれることでしょう。しかし、そのジレンマこそが、私たちプロの技術を頼っていただくべき、絶好のタイミングなのです。
なぜ、伸ばしている途中に「梳く」ことが有効なのか
お客様が大切に伸ばされている髪を、美しく、そして快適に理想の長さまで導くために、「髪を梳く」というメンテナンスは、実は非常に有効な手段となります。
① 不快な「伸ばしかけ」の時期を、快適に乗り切るため
髪が肩についてハネてしまったり、襟足が首にまとわりついてうっとうしかったり、あるいはサイドが必要以上に膨らんでしまったりと、髪を伸ばす過程では、必ずストレスを感じる時期が訪れます。このストレスの原因となっている部分の髪の「内側」だけを、全体の長さを一切変えることなく的確に梳くことで、その不快感を劇的に軽減し、お客様が途中で挫折することなく、楽しく目標達成までを歩めるよう、サポートいたします。
② ただ伸びただけの「野暮ったさ」を防ぐため
何もせずに、ただひたすら髪を伸ばすだけでは、どうしてもスタイル全体が重く、どこか野暮ったい、手入れの行き届いていない印象になってしまいがちです。私たちは、定期的に髪の内側の毛量を調整し、必要な部分に軽さや動きを加えることで、お客様が髪を伸ばしているその過程そのものを、一つの完成されたおしゃれなヘアスタイルとして、常に楽しんでいただけるようにデザインします。
③ 最終的なゴールスタイルを、より美しくするため
最終的に目指していらっしゃるロングスタイルが、完成した時に最高の形で輝くように、私たちはあらかじめ髪の内側の重さを計画的にコントロールし、そのための「土台作り」を行っています。これは、未来の美しいスタイルを見据えた、プロならではの長期的な視点に基づいた「仕込み」の技術なのです。
プロが守る、伸ばすための「梳き」の鉄則
お客様が「伸ばしたい」と願う、その大切な想いを守るために、私たちは施術の際に、いくつかの鉄則を自らに課しています。まず、ヘアスタイル全体の長さを決定づける、表面の髪の長さには一切触れず、お客様が伸ばしてきた貴重な長さを損なわないことを、固くお約束いたします。そして、最終的に豊かな長さと厚みが欲しい「毛先」の部分を、むやみに梳きすぎて、貧相な印象にしてしまうようなことは、決して行いません。
「伸ばしています」その一言が、最高のオーダーです
私たち理容師に、まず最初に伝えていただきたい、最も重要な言葉。それは、「今、髪を伸ばしている最中です」という、お客様の目標宣言です。その一言をいただければ、私たちの思考回路は、目の前のスタイルを完成させるための「短期的なモード」から、お客様の未来のスタイルを、お客様と一緒になって創り上げていくための「長期的なモード」へと、瞬時に切り替わります。「最終的には、この写真のようなスタイルを目指していて」「今、この部分の重さが一番辛いんです」といった、お客様のゴールイメージと、現在のリアルなお悩みを共有していただくこと。それが、最高のメンテナンスカットの、輝かしい始まりの合図です。
誠実な理容師は、あなたの「目標」までの伴走者です
髪を伸ばすというプロセスは、たった一人で乗り切るには、時に心が折れそうになることもある長い道のりかもしれません。私たち誠実な理容師は、単に髪を切るだけの技術者ではありません。お客様が「理想の自分」という輝かしいゴールにたどり着くまで、定期的にコンディションを整え、的確なアドバイスを送り、時には励ましながら、その道のりを共に走り続ける「伴走者」でありたいと、心から願っております。
髪を美しく伸ばすための秘訣は、ただひたすらに我慢することではございません。プロの力を上手に借りて、計画的に、そして何よりも快適にメンテナンスを続けることにあるのです。あなたの「伸ばしたい」という素敵な挑戦を、私たちは決して一人にはいたしません。退屈になりがちな通過点さえも、心躍るヘアスタイルに変える。そんな、未来を見据えたプロの技術を、ぜひ一度ご体験ください。