2025.08.24

「髪を根元からすく」のは危険？プロが語る、そのリスクと、本当の技術

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ご自身の髪の量が多くてお悩みの方が、とにかく根本的に、そして最大限に量を減らしたいと願うあまり、「いっそのこと、髪の根元からごっそりと梳いてほしい」と、そう思われてしまう。その切実なお気持ちは、分からなくはございません。しかし、ヘアサロンで「髪を根元から梳かれてしまい、かえってスタイルがまとまらなくなった」という、非常に悲しい失敗談が後を絶たないのも、また事実なのです。なぜ、「髪を根元からすく」ことは、一般的に危険な行為だと言われるのでしょうか。今回は、その明確な理由と、私たちプロがそのリスクとどのように向き合っているのかについて、包み隠さずお話しさせていただきます。

Contents

なぜ、髪を「根元からすく」のは避けるべきなのか
理由①：短い毛が立ち上がり、まとまりを失う
理由②：スタイルの「持続性」が著しく損なわれる
理由③：髪のツヤが失われ、ダメージに見える
それでもプロが「根元近くを」調整する、例外的なケース
誠実な理容師は、あなたの髪の「未来」を考える

なぜ、髪を「根元からすく」のは避けるべきなのか

お客様が、ご自身の髪を美しく、そして健やかに保つために、私たちは原則として、髪を「根元からすく」という行為を避けるべきだと考えております。そこには、いくつかの重大なリスクが存在するからです。

理由①：短い毛が立ち上がり、まとまりを失う

これが、根元から髪を梳くことの最大のリスクです。髪の根元近くで短く切られてしまった毛は、その短さゆえに、周りにある長い髪を内側から無秩序に押し上げてしまいます。その結果、ヘアスタイル全体の表面に、短い毛がツンツンと不自然に飛び出してしまい（いわゆるアホ毛）、全体のまとまりが失われ、かえってスタイルが膨らんで見えてしまうことさえあるのです。

理由②：スタイルの「持続性」が著しく損なわれる

髪が伸びてきた時のことを想像してみてください。根元で短く切られた毛と、そこから新しく伸びてきた髪、そして元々長かった髪との間に、非常にアンバランスな段差が生まれてしまいます。これにより、カットしてからほんの数週間で、ヘアスタイルの美しいシルエットは完全に崩れてしまうのです。

理由③：髪のツヤが失われ、ダメージに見える

表面に現れた無数の短い毛は、光を様々な方向に乱反射させてしまいます。その結果、ヘアスタイル全体のツヤが失われ、どこかパサついて、ダメージを受けたような印象を与えてしまう原因ともなります。

それでもプロが「根元近くを」調整する、例外的なケース

ここまで、様々なリスクについてお話ししてまいりましたが、実は私たちプロは、ある特定の目的を達成するために、極めて限定的に、そして緻密な計算の上で、「根元近く」の毛量を調整することがございます。例えば、どうしても浮いてしまう襟足や、割れてしまうつむじ周りの生え癖。そのクセの原因となっている根元の毛束だけを、見えないように、そしてピンポイントで狙い撃ちし、ほんのわずかだけ量を減らす。これにより、上からかぶさる髪の重みで、頑固な生え癖を優しく抑え込む、といった高度な技術です。しかし、これらは全体の量を減らすためではなく、特定の悩みを解決するための、いわば「処方箋」のようなものであり、豊富な知識と経験がなければ、決して行うべきではない技術なのです。

誠実な理容師は、あなたの髪の「未来」を考える

私たち誠実な理容師は、お客様から「とにかく量を減らしたいので、根元からたくさん梳いてほしい」というご要望をいただいたとしても、それをそのまま鵜呑みにすることはございません。なぜなら、その施術が、数週間後、数ヶ月後のお客様のスタイルを崩してしまい、結果的にお客様を悲しませてしまう可能性を、誰よりも知っているからです。私たちの仕事は、その日一日だけの満足をご提供することではございません。お客様の髪の「未来」にまで、責任を持つことです。時には、「根元は梳かずに、中間から毛先にかけて調整する方が、絶対に綺麗で、長持ちしますよ」と、プロとして正直なご提案をさせていただく。それこそが、私たちの揺るぎない誠実さなのです。

「髪を根元からすく」という行為は、高いリスクを伴う、いわば“劇薬”のような技術です。その劇薬を、お客様が抱えるお悩みを解決するための“特効薬”として、安全に、そして的確に処方できるかどうか。それこそが、心から信頼できるプロフェッショナルを見極める、一つの確かな指標かもしれません。目先の軽さではない、あなたの髪の未来までをも考えた、本質的な美しさを、ぜひ私たちのサロンでお約束させてください。

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