マッシュヘアは「髪の梳き方」で差がつく。重さと軽さを操る、プロのデザイン術
メンズヘアスタイルのトレンドとして、今や不動の人気を誇る「マッシュ」。その柔らかな丸みを帯びたシルエットは、多くの男性の魅力を、優しく、そしてスタイリッシュに引き立ててくれます。しかし、その一方で、「ただ重たいだけの、キノコのような髪型になってしまった」「自分でスタイリングしても、のっぺりとして全く動きが出ない」といった、マッシュスタイルならではの、尽きることのないお悩みを抱えていらっしゃる方も、少なくないのではないでしょうか。実は、そのお悩みの解決と、あなたの理想のマッシュスタイルを完成させるための、絶対的な鍵を握っているのが、髪を「梳く」という、非常に繊細で、計算され尽くしたプロの技術なのです。
なぜ、マッシュスタイルに「梳き」が必要不可欠なのか
一見すると、重さが魅力であるマッシュスタイルに、「梳く」という行為は矛盾しているように感じられるかもしれません。しかし、その逆です。計算された「梳き」がなければ、真におしゃれなマッシュスタイルは、決して完成しないのです。
① “キノコ”からの脱却。美しいシルエットを創るため
マッシュスタイルのベースは、確かに重さを残したカットラインにあります。しかし、お客様一人ひとりの髪質や毛量を無視して、ただ重く切り揃えただけでは、頭が大きく見える不格好なシルエット、いわゆる“キノコ頭”になってしまいます。私たちプロは、お客様の頭の形に沿って、髪の「内側」にある不要なボリュームだけを的確に梳くことで、マッシュ特有の美しい丸みはそのままに、驚くほどスマートで、洗練されたシルエットを創り出します。
② 軽やかな「束感」と「動き」を生み出すため
現代のマッシュスタイルに求められるのは、ただ重いだけでなく、その重さの中に感じられる、軽やかでエアリーな「束感」です。毛先を中心に、あるいは毛束の中間に、計算して丁寧に髪を梳き、目には見えない「空気の通り道」を創ってあげることで、ご自宅でワックスなどのスタイリング剤をつけた際に、プロがセットしたかのような、立体的で自然な動きが生まれるのです。
③ 毎日のスタイリングを、驚くほど簡単にするため
緻密な計算に基づいて、適切に「梳き」が入ったマッシュスタイルは、髪の内側の収まりが良く、毛先に自然な動きが出やすい状態になっています。これにより、これまで格闘していたかもしれない、毎朝のドライやワックスでのスタイリングが、驚くほど簡単になり、その時間も大幅に短縮されるという、非常に実用的なメリットもございます。
「重め」も「軽め」も自由自在。プロが操る梳きのバリエーション
お客様が求めるマッシュのイメージによって、私たちの「梳き方」も、そのアプローチを大きく変えていきます。例えば、クラシカルでモードな雰囲気の「重めマッシュ」をご希望の場合は、スタイルに不可欠な「重さ」と「ツヤ」を最大限に活かすため、髪の表面は一切梳かず、シルエットの邪魔になる内側の角の部分だけを、ごく最小限に梳いて、まとまりを出します。逆に、トレンドの「軽めマッシュ(シースルーマッシュ)」をご希望の場合は、前髪や顔周りを中心に、美しい束感と、品のある透け感が生まれるように、内側から、より緻密に、そして繊細に毛量を調整していきます。
失敗しないマッシュのオーダー。「梳き方」で想いを伝える
私たちに、お客様の理想のマッシュのイメージを伝えていただく際は、ぜひご自身が求める「重さの度合い」を、言葉にしてみてください。「あまり軽くしすぎず、重さを残したマッシュにしたいです」「前髪に透け感があるような、軽いマッシュがいいです」。お客様のその一言が、私たちの技術の方向性を決定づける、何よりも重要な道しるべとなります。
誠実な理容師は、「フォルム」と「質感」を両立させる
マッシュスタイルを創ることは、私たちプロの理容師にとって、一つの立体的な作品を、丹精込めて創り上げる彫刻作業のようなものです。カットによって創り上げた、美しい丸みという「フォルム」を、決して壊すことなく、その内側に、「梳く」という技術を用いて、最高の「質感(テクスチャー)」を、丁寧に、そして緻密に彫り込んでいく。この、フォルムと質感の完璧な両立こそが、私たちの目指す、究極のゴールなのです。
もう、重たいだけのマッシュスタイルに、一人で悩む必要はございません。あなたの骨格と髪質を最大限に活かし、重さと軽さの完璧なバランスを奏でる。そんな、完全オーダーメイドのマッシュスタイルを、ぜひ私たちのサロンでご体験ください。