自分で「髪をすく」その方法とリスク。プロが教える、失敗しないための絶対条件
ご自身の髪が少し重たくなった時、あるいはヘアスタイルの一部だけが気になった時、「この部分だけ、自分で髪の量を調整できたら…」と、すきバサミを使ったセルフカットの「方法」に、興味を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。手軽にできるように見える「髪をすく」という行為ですが、その裏側には、知っておくべき多くの落とし穴と、美しいスタイルを創り出すための、いくつかの重要なルールが存在するのです。今回は、ご自身で髪をすく際の基本的な「方法」と、その方法に潜むリスク、そして私たちプロが、そのリスクをどのように乗り越えているのかについて、その違いを明確にお話しさせていただきます。
方法の前に知るべき、セルフカットの三大リスク
具体的な方法をご説明する前に、まずプロとして、セルフカットに伴う三大リスクについて、誠実にお伝えしなければなりません。一つ目は、一度すきすぎてスカスカになってしまった髪は、伸びるのを待つ以外に、元に戻す方法はないという「取り返しのつかない」リスク。二つ目は、ご自身では見えない後頭部などを均一にすくことの難しさから生まれる、不自然な「穴」や「段差」ができてしまうリスク。そして三つ目が、市販のハサミの切れ味や、間違った使い方によって、枝毛や切れ毛といった、髪への「ダメージ」を増やしてしまうリスクです。
基本的なセルフカットの方法と、プロとの「視点」の違い
これらのリスクをご理解いただいた上で、ご家庭で実践できる、最も基本的な方法のステップと、私たちプロとの「視点」の違いについて解説します。
ステップ①:髪を完全に乾かし、ブロッキングする
まず、髪をいくつかのパートに分け、調整したい部分を明確にします。髪が濡れていると量の判断を誤りやすいため、必ず完全に乾いた状態で行うのが鉄則です。
【プロとの違い】:私たちプロは、このブロッキングの時点で、お客様一人ひとりの「骨格」を正確に見極め、どこを削り、どこに重さを残すべきかという、完成後の「設計図」を頭の中に描いています。
ステップ②:内側の髪を、中間から毛先にかけて梳く
次に、表面の髪を傷つけないよう、内側の毛束を取り、中間あたりから毛先に向かって、ハサミを縦方向に数回開閉させます。
【プロとの違い】:私たちは、お客様の「髪質」(硬い、柔らかい、くせ毛など)に合わせて、ハサミを入れる「深さ」や「角度」をミリ単位で調整し、その髪が持つポテンシャルを最大限に引き出す、最適な質感を創り出します。
ステップ③:全体のバランスを見て、少しずつ繰り返す
一度にたくさん梳こうとせず、少し梳いては髪を下ろし、鏡で全体のバランスを何度も確認しながら、慎重に進めることが大切です。
【プロとの違い】:私たちは、1ヶ月後、2ヶ月後に髪が伸びてきた時のことまでを「予測」し、スタイルができるだけ長く美しく保たれるように、計算して量を調整しています。
究極の方法は、「プロとの共同作業」
ここまで、ご自身でできる方法についてお話ししてまいりましたが、究極的に失敗しない、最高の「髪をすく方法」。それは、お客様と、信頼できる私たち理容師との「共同作業」にほかなりません。お客様にしていただくのは、ご自身の「どこが、どのように気になっているか」を、私たちにありのまま伝えていただくこと。そして、私たちプロが、そのお悩みを解決するための最適な「方法(技術)」を選択し、責任を持って実行させていただくこと。この理想的な役割分担こそが、お客様の髪を、最も安全に、そして最も高いレベルの仕上がりへと導く、唯一無二の方法なのです。
誠実な理容師は、あなたの「挑戦」も受け止めます
私たちは、お客様がご自身のスタイルを、ご自身の手で追求したいという「挑戦」のお気持ちを、心から尊重いたします。そして、もしセルフカットで少しだけうまくいかなかったとしても、決してご自身を責めないでください。私たちは、その状態からでも美しく自然なスタイルに修正させていただく「リカバリーのプロ」でもあります。どんな時でも、あなたの最後の砦として、私たちを頼っていただければ幸いです。
「髪をすく」ための方法は、手順を追うだけなら、誰にでも真似ができるかもしれません。しかし、その一つひとつの工程に、「なぜそうするのか」という深い理由と、お客様一人ひとりへの完全な個別対応が加わって初めて、それは「プロの技術」と呼べるものになるのです。あなたの髪のポテンシャルを最大限に引き出す、リスクのない、そして再現性の高い本物の技術を、ぜひ一度ご体験ください。