髪を梳くと枝毛が増える?プロが語る、ダメージを防ぐ正しいカット技術
ヘアスタイル全体のボリュームを調整し、軽やかな動きを生み出すために行われる「髪を梳く」という技術。しかし、施術を受けてしばらく経った後、ふと毛先が裂けてしまっている「枝毛」を見つけ、「もしかして、髪を梳いたことが原因なのだろうか」と、心を痛めてしまったご経験はございませんか。そのご懸念と、大切な髪を想うお気持ち、私たちプロとして非常によく理解できます。髪を梳くという行為は、決して避けられないダメージなのでしょうか。今回はその疑問の真実に迫り、お客様の髪を健やかに保ちながら理想のスタイルを叶えるための、正しい知識と技術について誠実にお話しさせていただきます。
なぜ、「梳く」という行為が枝毛を引き起こすのか
まず結論から申し上げますと、「間違った方法で髪を梳く」という行為は、残念ながら枝毛を発生させる直接的な原因となり得ます。健康な髪を鋭利な刃物で切断した時、その断面は滑らかで綺麗です。しかし、使い方を誤ったり、手入れを怠ったりした「すきバサミ」で髪を梳くと、髪の毛は切られるのではなく、刃と刃の間で潰されたり、引きちぎられたりするような状態になってしまうことがあります。髪の表面を覆う鎧の役割を持つキューティクルが、その際に大きく損傷し、内部がむき出しになってしまうのです。この傷ついた部分から、髪はやがて裂けていき、皆様がよくご存知の「枝毛」となって現れるのです。
枝毛を防ぐ、プロフェッショナルの3つのこだわり
では、私たちプロは、お客様の髪に枝毛を作らないために、どのような点にこだわり、施術を行っているのでしょうか。そこには、決して譲ることのできない、三つのこだわりがございます。
① 道具への絶対的なこだわり
私たち理容師が商売道具であるハサミを、定期的に専門の職人へ研ぎに出し、常に最高の切れ味を維持しているのは、お客様の大切な髪に余計な負担をかけないための、最低限のプロとしての責任です。よく切れるハサミは、髪の組織を壊すことなく、スパッと美しい断面で切断するため、枝毛の発生を限りなく抑えることができます。
② 髪を傷つけない、ハサミの入れ方
私たちは、すきバサミを髪に入れる際の角度や、刃を閉じた後に引き抜くタイミングまでを、お客様の髪質に合わせて緻密に計算しています。髪が無理な力で引っ張られたり、刃の上で不必要に擦れたりすることのない、どこまでも滑らかで優しいハサミの動きを、日々追求しています。
③ 「梳く」以外の選択肢を持つこと
お客様の髪質やダメージのレベルによっては、あえて「すきバサミ」を使わない、という判断をすることもございます。例えば、通常のハサミを滑らせるようにして毛量を調整する「スライドカット」といった技法を駆使することで、髪の断面を綺麗に保ちながら、柔らかな質感や軽さを表現することも可能なのです。
枝毛を増やさないための、オーダーのヒント
もし、ご自身の髪のダメージが気になるようでしたら、どうぞご遠慮なく、最初のカウンセリングの際に私たちにお伝えください。「髪が傷みやすいのが悩みです」「以前、梳かれすぎてパサパサになった経験があります」といったお客様からの一言は、私たちにとって、より慎重で、より丁寧な施術を心掛けるための、何よりも重要な情報となります。
デザインとケアの両立こそ、誠実な仕事
お客様のヘアスタイルを格好良くデザインすることは、もちろん私たちの大きな喜びです。しかし、それ以上に、お客様の髪の健康を、5年後、10年後の未来まで見据えて守り育てることこそが、私たち誠実な理容師が担うべき、本当の使命であると考えております。その場限りのデザインのために、お客様の大切な髪を犠牲にするような仕事は、私たちは決していたしません。
「髪を梳くと枝毛ができる」という問題は、施術を行う技術者のスキルと、お客様の髪への深い愛情があれば、十分に回避することが可能です。あなたの大切な髪一本一本を、まるで宝物のように丁寧に扱う。そんな、ダメージを恐れることなく、心からスタイルチェンジを楽しめる場所が、ここにあります。