髪をすく量は「どのくらい」が正解?プロが見極める、最高のバランス点
バーバーサロン(理容室)で髪を梳いてもらう時、担当の理容師から「どのくらい梳きますか?」と尋ねられ、咄嗟に言葉に詰まってしまい、「いい感じに、おまかせします」としか答えられなかった…。そんなご経験はございませんか。もっと軽やかになりたいという願いと、梳かれすぎて失敗したくないという不安。その二つの気持ちの間で、「どのくらい」という量の加減こそが、お客様にとって最も答えるのが難しい、そして最も重要な質問かもしれません。実は、その問いに対する本当の答えは、単純な割合(パーセント)の中には存在しないのです。
なぜ「半分くらい」といったオーダーが危険なのか
お客様の中には、ご自身の感覚を伝えようと、「今の半分くらいの量にしてください」といった、具体的な割合でオーダーをされる方もいらっしゃいます。そのお気持ちは、私たちも大変よく理解できます。しかし、もし本当に髪の「本数」を半分にしてしまったら、多くの場合、ヘアスタイルはまとまりを失い、スカスカで貧相な印象になってしまうという、非常に大きなリスクを伴います。お客様が本当に求めていらっしゃるのは、髪の本数を減らすことではなく、「ボリューム(体積)が半分くらいに感じられる、すっきりとした美しいシルエット」のはずです。この、お客様の感覚と、実際の施術との間に生まれる、ほんの少しの認識のズレこそが、時にヘアカットの失敗の、大きな原因となってしまうのです。
プロが使う「ものさし」は、見た目と手触り
では、私たちプロは、「どのくらい」梳くべきかという量を、一体何を基準に判断しているのでしょうか。私たちの頭の中には、常に二つの、非常に繊細な「ものさし」が存在します。
① 見た目の「ものさし」:シルエットが黄金比になるまで
一つ目は、お客様の骨格を誰よりも美しく見せるための、視覚的なものさしです。私たちは、お客様の頭の形を正確に観察し、その方が最もバランス良く見える「黄金比(ひし形シルエットなど)」を、頭の中に明確に描きます。そして、その理想のシルエットからはみ出してしまっている、不要なボリュームだけを、まるで彫刻家がノミで石を削るように、ミリ単位で、そして慎重に取り除いていきます。私たちが梳くのをやめるのは、シルエットが完璧に整った、まさにその瞬間なのです。
② 感覚の「ものさし」:お客様の「ちょうど良い」という手触り
そして、もう一つ。こちらの方が、より重要かもしれません。それは、お客様ご自身の「感覚」という、世界でただ一つのものさしです。私たち誠実な理容師は、施術の途中で、必ずお客様に「一度、髪に指を通して、軽さを確かめていただけますか?」とお声がけさせていただきます。お客様がご自身の髪に触れた時の、その指通りの感触。髪全体を下ろした時に、首筋で感じる重さ。お客様が、心の底から「うん、これくらいが、一番しっくりくる」と感じてくださった、その一点こそが、私たちにとっての、本当のゴールなのです。
あなたの「どのくらい」を伝える、オーダーのヒント
私たちに、お客様の理想の「どのくらい」を伝えていただく際に、完璧な言葉は必要ございません。「半分」や「3分の1」といった数字ではなく、「指がスムーズに通るくらい、量を減らしたいです」「今の、頭に乗っているような重たい感じがなくなるくらい、軽くしてください」といった、お客様が理想とする「状態」を、ぜひそのままの言葉でお聞かせください。あるいは、「以前、このくらい梳いてもらったら、ちょうど良かった(あるいは、軽すぎた)」といった、過去のご経験も、私たちにとって最高のヒントとなります。
誠実な理容師は、「どのくらい」の答えを、あなたと共に見つけ出す
「どのくらい髪を梳くか」という問いに対する、たった一つの正解。それは、私たちの独断や、教科書の中にあるわけではございません。その答えは、お客様との丁寧な対話と、実際に髪に触れていただくという、心と感覚のキャッチボール、その共同作業の中にだけ、確かに存在するのです。誠実な理容師の仕事とは、お客様を置き去りにして、一方的に作業を進めることでは、決してありません。お客様の感覚に、私たちの持てる全ての技術を寄り添わせ、共に最高の「バランス点」を探求していく。そのプロセスこそが、私たちの仕事の醍醐味であり、お客様への誠実さの証なのです。
曖昧な感覚で、全く構いません。あなたの「このくらい」という、繊細な想いを、ぜひ私たちプロにお聞かせください。その感覚を、ミリ単位の技術で、完璧な形にしてみせます。あなただけの最高のバランスを、ぜひ私たちのサロンで、一緒になって見つけ出しましょう。