ジェルの正しい使い方。髪を濡らす一手間が仕上がりを分ける理由
ヘアジェルを使ったスタイリングで、「なぜか上手く決まらない」「プロが仕上げたようにならない」と感じたことはございませんか。その原因は、ジェルの量や付け方の技術以前に、多くの方がつい省略してしまいがちな、非常にシンプルで基本的な工程にあるのかもしれません。それが、スタイリングを始める前に「髪を濡らす」という一手間です。今回は、ジェルの使い方における最も重要なこのステップに焦点を当て、その理由と正しい手順を徹底的に解説いたします。
なぜジェルの使い方に「髪を濡らす」工程が不可欠なのか
ジェルを付ける前に髪を濡らすことには、単に髪を湿らせる以上の、スタイリングの仕上がりを根本から左右する重要な理由がございます。
寝ぐせをリセットし、スタイリングの土台を作るため
朝起きた直後の髪には、ご自身が思っている以上に、睡眠中の寝返りなどによる歪みや癖がついています。表面だけをとかしただけでは、髪の根元の癖は直りません。スタイリングの最初に、髪を地肌からしっかりと濡らすことで、これらの寝ぐせが完全にリセットされ、髪が最も素直で扱いやすい状態になります。これが、思い通りのヘアスタイルを作るための完璧な土台作りとなるのです。
ジェルを均一に塗布するため
乾いた髪の毛は、水分やスタイリング剤を弾きやすく、ジェルの伸びも悪くなります。そのため、乾いた髪に直接ジェルを付けてしまうと、一部分にだけ固まって付着し、スタイリングにムラができてしまいます。髪に適度な水分が含まれていることで、その水分が潤滑剤の役割を果たし、ジェルが髪全体へスムーズに行き渡るのを助け、均一で美しいコーティングを施すことが可能になります。
ジェルの性能を最大限に引き出すため
多くのヘアジェルは、その主成分である水分が蒸発する過程で、セット成分が固い皮膜を形成してスタイルを固定します。あらかじめ髪に適切な水分を与えておくことで、ジェル成分が髪にしっかりと定着し、本来の強力なセット力や美しいツヤ感が最大限に発揮されるのです。
「濡らす」を省略した間違った使い方と、その結果
もし、この「髪を濡らす」という工程を省略してしまうと、いくつかのスタイリングの失敗に直結しやすくなります。ジェルが髪全体に均一になじまないため、仕上がりにムラができ、不自然な印象になってしまいます。また、均一に伸びなかったジェルが髪の表面でダマになり、乾燥した後に白い粉(フレーキング)となって剥がれ落ち、フケのように見えてしまう原因にもなります。さらに、髪にしっかりと定着しないため、本来のキープ力が弱まり、時間が経つとスタイルが崩れやすくなるという結果にも繋がります。
正しい「濡らし方」を含めたジェルの使い方
それでは、正しい手順を見ていきましょう。まず、朝のスタイリング時には、霧吹きなどで表面を湿らせるだけではなく、シャワーなどを使い、髪の根元、つまり地肌までしっかりと濡らして、髪の内部まで水分を行き渡らせます。次に、ゴシゴシと強く擦るのではなく、タオルで頭皮の水分を吸い取り、髪を優しくポンポンと叩くようにして拭いていきます。水滴がポタポタと落ちてこない程度の「ハーフウェット」な状態が、スタイリングを始めるのに最適な水分量です。そして、この状態の髪に、適量のジェルを手のひらでよく伸ばしてから、根元から毛先に向かって全体になじませ、素早く形を整えてください。
使い方をマスターした、その先へ
この正しい使い方をマスターしていただくだけで、皆様のジェルスタイリングは劇的に向上することでしょう。しかし、さらに上の仕上がりを目指すのであれば、「ベースとなるヘアカット」と「使用するジェルの品質」も非常に重要な要素となります。私たちプロのスタイリストは、お客様がご自宅でこの使い方を実践することを前提として、最もスタイリングがしやすくなるように髪の量や長さを計算してカットを施しています。また、サロンで取り扱う高品質なジェルは、髪へのなじみや伸びが良く、この「濡らして付ける」という使い方をした際に、最も美しい質感とキープ力を発揮するよう緻密に設計されています。
まとめ
今回は、ジェルの正しい使い方、特に「髪を濡らす」ことの重要性について解説いたしました。スタイリング前に「髪を根元からしっかりと濡らし、最適な水分量に整える」という、一見地味に思えるこの工程こそが、ムラや白い粉の発生を防ぎ、ジェルの性能を最大限に引き出すための最も確実な方法です。この基本を守ることで、毎日のスタイリングの質を向上させることができます。ご自身の髪質に合った、より具体的なジェルの使い方や、スタイリングしやすいヘアスタイルについてお知りになりたい場合は、いつでも専門家である私たちにお気軽にご相談ください。