ヘアジェルとドライヤーの正しい関係。セットの順番が仕上がりを左右する
メンズのヘアスタイリングにおいて、ヘアジェルとドライヤーは、共に理想の髪型を創り上げる上で欠かすことのできない、二つの強力な道具です。しかし、この二つの道具をどのような「順番」で、そして、どのような目的で使うのが正しいのか、正確に理解されている方は意外と少ないかもしれません。
「ジェルを付けてから、ドライヤーで乾かすのが良いのか」「それとも、ドライヤーで乾かした後に、ジェルを付けるべきなのか」。この工程の順番は、単なる好みの問題ではなく、ヘアスタイルの完成度を根本から左右する、非常に重要な原則に基づいています。
この記事では、プロのスタイリストが実践する、ヘアジェルとドライヤーの正しい関係と、その論理的な順番について、理由と共に詳しく解説いたします。
原則は「ドライヤーが先、ジェルが後」
まず、最も基本的で、そして最も重要な原則として、美しいヘアスタイルを創る上での正しい順番は、「ドライヤーが先、ジェルが後」であるということを覚えてください。なぜなら、この二つの道具が担う役割は、全く異なるからです。
ドライヤーの役割:スタイルの「土台」を創る
ドライヤーの役割は、単に髪を乾かすことだけではありません。スタイリングにおけるドライヤーの最も重要な役割は、熱と風の力を利用して、ヘアスタイルの骨格となる「土台」を創り上げることです。髪の根元を立ち上げてボリュームを出したり、全体の毛流れを整えたり、あるいはサイドの膨らみを抑えたりと、髪の基本的なシルエットや方向性は、全てこのドライの段階で決定されます。プロのスタイリングでは、この時点で完成形の約8割が創られていると言っても過言ではありません。
ジェルの役割:土台を「固定」し「仕上げる」
一方で、ジェルの役割は、ドライヤーによって創り上げられたその「土台」を、強力なセット力で「固定」し、さらにツヤや束感といった質感を加えて「仕上げる」ことにあります。つまり、ドライヤーが彫刻における「彫る」作業であるならば、ジェルは彫刻を「コーティングして保護する」作業に相当します。順番を間違え、形ができていない段階でジェルを付けてしまうと、ただ髪が重くなり、意図しない形で固まってしまうだけなのです。
ドライヤーで「土台」を創る具体的な手順
まず、タオルドライを終えた、少し湿り気のある髪の状態から始めます。そして、ご自身の創りたいスタイルをイメージしながら、ドライヤーの風を当てていきます。例えば、トップにボリュームが欲しい場合は、髪の根元を下から持ち上げるようにして、根元に温風を当てます。サイドをタイトにしたい場合は、上から下に風を当て、手で軽く押さえながら乾かします。この工程を丁寧に行い、髪を完全に乾かしながら、理想のシルエットを構築してください。
応用編:ジェルを付けた後にドライヤーを使う場合
基本原則は「ドライヤーが先」ですが、一つだけ例外的な使い方があります。それは、ジェルの固定力を極限まで高めたい場合です。ジェルを髪に馴染ませて形を創った後、ドライヤーの「冷風」を髪全体に当てることで、ジェルの水分が急速に蒸発し、より速く、そしてより強力にスタイルを固定させることができます。ただし、これは髪をガチガチに固めたい特殊な場合の方法です。自然なスタイルを目指す場合は、ジェルを付けた後にドライヤーの温風を当てるのは、基本的には避けたほうが良いでしょう。
この「ドライヤーで形を創り、ジェルで固める」という正しい関係性を理解し、日々のスタイリングに取り入れるだけで、あなたのヘアセットの質は劇的に向上するはずです。このプロの技術を最大限に活かすためには、スタイリング剤自体の品質も重要となります。ご自身の髪質やスタイルに最適なジェルをお探しの際は、ぜひお気軽にサロンのスタイリストにご相談ください。