メンズヘアセットはブローが9割。「アップ」スタイルを制するドライヤー完全攻略法
「毎朝、ワックスをつけても、なぜか髪型がうまく決まらない…」
「セットしたては良いのに、時間が経つと前髪が落ちてきてしまう…」
その原因、実はスタイリング剤ではなく、その前の「ブロー(ドライヤーで乾かす工程)」にあるのかもしれません。
私たちプロの理容師の間では、「ヘアセットの成否は、ブローが9割」と言われるほど、この乾かす作業は、スタイルの土台を創る上で最も重要な工程なのです。
今回は、清潔感と自信を演出する前髪「アップ」スタイルをテーマに、あなたのヘアセットを根本から変える、プロのブロー技術の全てを公開します。
なぜプロは「ブローが9割」と言い切るのか?
なぜ、ただ髪を乾かすだけの作業が、これほどまでに重要なのでしょうか。
そこには、髪の性質に基づいた、明確な理由があります。
- 髪の方向性を決める「根元の矯正」
髪の毛の毛流れや、立ち上がり、ボリュームといった、スタイルの方向性を決めているのは、毛先ではなく、地肌から生えている「根元」の部分です。
そして、髪は、濡れている状態から乾く瞬間に、その形が記憶されるという性質を持っています。
つまり、ブローとは、一度濡らしてリセットした髪の根元を、ドライヤーの熱と風を使って、あなたの望む方向へと「矯正」し、記憶させる唯一無二の工程なのです。 - スタイルの土台となる「シルエット作り」
ボリュームを出したいトップは、根元から立ち上がるように。
タイトに抑えたいサイドは、ボリュームを潰すように。
ブローの段階で、ヘアスタイル全体の「骨格」となるシルエットを創り上げておけば、その後のスタイリング剤は、その美しい土台に、質感や束感を加えるだけの、簡単な仕上げ作業で済むようになります。 - スタイリング剤の性能を最大化する
適切にブローされた髪は、表面のキューティクルが整い、スタイリング剤が均一に、そして少量でも馴染みやすい、最高のコンディションになります。
ブローを制する者は、スタイリング剤の性能をも最大限に引き出すことができるのです。
前髪アップを制する「神ブロー」5ステップ
それでは、あなたの前髪を一日中、完璧にアップさせるための、具体的なブローテクニックをステップバイステップで見ていきましょう。
STEP1:完璧な「ウェット状態」から始める
中途半端に濡れている状態や、寝癖がついたままの状態から始めてはいけません。
全てのクセをリセットするため、朝シャンをするか、スプレイヤー(霧吹き)などで、髪の表面だけでなく、地肌(根元)まで、これでもかというくらいしっかりと濡らしてください。
これが、成功への第一歩です。
STEP2:根元を擦りながら「ラフドライ」
まずは、全体の8割程度を、大まかに乾かしていきます。
この時のポイントは、上げたい前髪の方向とは、あえて逆方向に向かって乾かすことです。
例えば、右に流したいなら、まず左に向かって。
あるいは、一度、下を向いて、後頭部から顔に向かって風を当てるなど、あらゆる方向から風を当て、指の腹で地肌を優しく擦りながら乾かすことで、全ての髪の根元が一度、自然に立ち上がります。
STEP3:上げたい部分に「熱」を集中させる
ここからが本番です。
上げたい前髪、そして高さを出したいトップの毛束を、指で優しく掴み、持ち上げます。
その立ち上げた根元部分に、ドライヤーのノズル(先端のパーツ)を近づけて、温風を3秒間、集中的に当ててください。
STEP4:形をキープして「冷ます」(最重要ポイント)
熱を当てた後、すぐに手を離してはいけません。
髪は、熱が冷める瞬間に形が固定されます。
ドライヤーを離した後も、髪を持ち上げた形のまま、3秒以上キープして、髪の熱を完全に冷ましてください。
この「温めて、冷ます」というプロセスを繰り返すことで、髪に強力な立ち上がりのクセが記憶されます。
STEP5:全体のシルエットを微調整
トップに高さが出たら、次は抑えたい部分を整えます。
膨らみやすいサイドやハチ周りは、今度は上からドライヤーの温風を当てて、手のひらで優しく押さえつけながら、同じように熱を冷まします。
これで、スタイリング剤をつける前の「完璧な土台」が完成です。
「ブローが楽な髪」はカットで作られる
「この手順通りにやっても、自分の髪はなかなか言うことを聞いてくれない…」
もし、あなたがそう感じるのであれば、その原因は、あなたの技術だけでなく、全ての土台である「カット」そのものにあるのかもしれません。
- 軽さと方向性を与える「毛量調整」
プロの理容師は、お客様が自宅でブローをしやすいように、トップの根元付近の毛量を、見えないように、そして絶妙なバランスで軽くしています。
これにより、髪に自然な「浮力」が生まれ、ドライヤーの風だけで、驚くほど簡単に根元が立ち上がるようになるのです。 - 自然な毛流れを作る「質感カット」
レザー(カミソリ)や、特殊なセニングシザー(すきバサミ)を使い、毛先に自然な方向性を与えることで、ブロー時に髪が意図した方向へと、素直に流れるようにデザインされています。 - ブローの限界を超える「パーマ」という選択肢
どうしても立ち上がらない強情な直毛や、すぐに潰れてしまう軟毛。
そんな、カットだけでは解決が難しい髪質の悩みに対して、プロは、根元を立ち上げるためのごく部分的な「ピンパーマ」などを提案することができます。
これは、ブローの手間を究極まで省き、あなたの毎日を劇的に楽にするための、プロの技術です。
まとめ
毎日のヘアセットの成否は、ワックスを手に取る前の、わずか数分間の「ブロー」で、その9割が決まっています。
正しいブロー技術を身につければ、あなたのヘアセットは、間違いなく見違えるほど向上するでしょう。
しかし、そのブローの効果を最大限に引き出し、あなたの朝の時間を、もっと簡単に、もっと楽しくしてくれるのは、その全てを計算して創られた、プロの「カット」に他なりません。
もう、言うことを聞かない髪と、毎朝格闘する必要はありません。
ブローが楽しくなる、最高のベースカットを体験しに来ませんか。
あなたの朝を、私たちプロフェッショナルが変えてみせます。